荻野洋一 映画等覚書ブログ

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古代の四川

2012-12-22 21:47:56 | アート
 日中国交正常化40周年を記念して開催されている東博・平成館(東京・上野公園)の特別展《中国 王朝の至宝》に出かけてみたが、尖閣諸島領有問題の影響か、場内はかなり空いている。おかげで落ち着いて見られたが、一級文物(日本では国宝にあたる)がずいぶんと持ちこまれている機会だというのに一抹の淋しさはある。
 歴代王朝の文物を時系列にそって展示しているが、古代の殷周時代にかけては玉器、青銅器に目のない私のような輩には不意をつかれる面白さがあった。ご存じのように殷も周も中原(黄河中流域 現在の河南省あたり)で栄えた王朝だけれども、その後の春秋戦国時代を挟んで秦の始皇帝が統一を果たすまでは全土的な支配が確立されていない。にもかかわらず私たちは「殷周時代の美術は」などとかんたんに考えてしまう。教科書教育の限界でもある。
 殷周の同時代、広東省あたりは、四川省あたりはどうなっていたのだろう? 今回の展示では、古代の四川地域を支配した「蜀」という王朝の文物を見せて人目を引く。『三国志』に出てくる劉備の蜀とは別物。これよりもっと遙か1000年以上さかのぼる「蜀」である。黄河文明の文物とは似ている点もあるし、まったく別物でもある。「これも中国なのだな」そう感じさせる。
写真= 東博の前庭(筆者写す)


東博・平成館(東京・上野公園)で12/24(月・休)まで
http://china-ocho.jp