荻野洋一 映画等覚書ブログ

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京五山の旅路(2)

2012-12-27 18:47:05 | アート
 日本古来の文化、伝統の品を見ていつも思うのは、ここには普遍へ向かう意志など露ほどもなく、はじめからアバンギャルドなもの、オルタナティヴなものが当然のように志向されていることだ。「何をいまさら」と人は言うかもしれないし、自分でもそう思うが、何かにぶち当たるとまたそう思わざるを得ない。縄文の土偶を見たら、誰もが似たようなことを考えるのではないか。
 相国寺は日本でも最高位にあるような格の禅寺で、ここの展示室で夢窓疎石や絶海中津(ぜっかい・ちゅうしん 1334-1405)の墨蹟と対峙することと、20世紀に重森三玲が住んだ旧邸の佇まいにみずからの身体を置いてみることのあいだには本当に違いというものがなく、ようするにどっちも変なのである。しかし、だいたいはそこまで考えて、こんなふうに思うことじたいが野暮なことのようにも思え、そのままとするのが常である。
 京大正門前からほど近い重森三玲旧邸の拝観は予約制で、指定された時間までに集合しなければならない。その代わりに、孫の重森三明氏のくわしい説明とともに時を過ごすことができる。終了後、三明氏と二、三しゃべることができた。「中川幸夫らが参画した勉強会がおこなわれたのはやはり…」「この部屋ですよ」。うーむ、そうなのかと感慨ひとしおである。軒先に雑誌「なごみ」の今年9月号の見本があったのでぺらぺらとめくってみた。三玲を特集した誌面では、いま目の前にいる三明氏がずいぶんと活躍している。1冊購入し、礼を述べて邸を後にした。
(写真は結界の止め石)