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女性が圧倒的に不利な時代において、強姦された事実を隠すことなく主張し続けた妻の姿が印象に残る『最後の決闘裁判』

2021年10月16日 19時04分37秒 | 映画


【個人的な評価】
2021年日本公開映画で面白かった順位:35/217
   ストーリー:★★★★★
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★★☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★★☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】
ヒューマンドラマ
歴史
中世フランス
貴族社会
強姦事件
決闘
裁判

【あらすじ】
中世フランス。
騎士の妻マルグリット(ジョディ・カマー)が、
夫であるカルージュ(マット・デイモン)の旧友ル・グリ(アダム・ドライバー)に乱暴されたと訴えるが、
彼は無実を主張し、
目撃者もいない。
​真実の行方は、
夫と被告による生死を賭けた
“決闘裁判”に委ねられる。

それは、当事者2人よる一騎打ち。
勝者は正義と栄光を手に入れ、
敗者は命拾いをしても罪人として死罪になる。
そして、もしも夫が負ければ、
マルグリットまでもが偽証の罪で火あぶりの刑を受けるのだ。

果たして、裁かれるべきは誰なのか?

【感想】
これは女性の方が思うところがありそうな映画かなと思った。
強姦被害にあった妻を取り巻く環境が、
いろいろ衝撃的なので。

この映画の面白いところは、
3章立てにして、
同じ事象を3人の視点で描いているところ。
第1章はカルージュの視点。
第2章はル・グリの視点。
第3章はマルグリットの視点。
同じ出来事でも、
誰の視点かによって全然見え方が違ってて。

例えば、カルージュが領主であるピエール2世(ベン・アフレック)に物申すシーンでは、
本人は「怒ることなく冷静に言った」と言うけど、
ル・グリの視点で観るとメチャクチャブチ切れてたり。
強姦シーンでは、
ル・グリの視点だと、
マルグリットは少し抵抗するぐらいなのに、
マルグリットの視点だと泣き叫ぶぐらいになってたり。
「人間の主観ってこうも違うだな」
っていうのがよくわかる。

当時のフランスって
現代とは比べ物にならないほどの男社会。
特に、騎士だの貴族だのっていうコミュニティだと、
女性の発言権なんてほぼなさそうな雰囲気。

その中で、実際に起こったことを
勇気を振り絞って語るマルグリット。
ただ、当時は科学的捜査なんてできなければ、
もちろん防犯カメラもない。
あくまでも、「本人たちの証言」しか
事件を裏付けるものがない状況。

しかも、昔は女性は子供を産んで当たり前、
それが妻の義務ぐらいの考え。
かつ、オーガズムに達しないと妊娠しない
っていうのが常識の世界だったみたいで。
だから、マルグリットに対する審問のシーンがえげつないのよ。

カルージュと結婚して5年、
子供ができる気配がなかった彼女。
それが、強姦されて半年後に、
妊娠6ヶ月ということが判明。
「あなたはル・グリと交わることで頂点に達したのではないですか?」
などという信じられない質問が、
多くの人が見守る中、
おっさん共から浴びせられるんだよ。
これは観ている方もいたたまれない気持ちになる。

それでも、マルグリットは強姦されたと主張し続け、
ル・グリは否定。
肯定なんて絶対しないと思うけど。

そこで出てきたのが、
カルージュから提案された"決闘裁判"。
これはカルージュとル・グリが一騎打ちをして、
勝った方の言い分が認められるというもの。
負けた方の言い分は偽証となり、
当然命を落とすことになる。
さらに、その妻は服を脱がされ、
丸裸にされた挙句、
柱にくくりつけられ、
焼き殺されてしまうんだよ。

勝負の行方は映画を観ていただくとして、
このクソシステム何なんだよなって。
見方によっては、
正しい主張が認められない側の
最後の切り札にはなりえる。
逆に言えば、
腕っぷしの強い人なら、
事実と反することでも
正解にできるってことにもなりかねないのでは。。。

何にせよ、圧倒的に不利な女性という立場でありながら、
臆することなく事実を主張し続けた
マルグリットの姿が印象的だった。
きっと、マルグリットと同じように、
強姦されながらも泣き寝入りした人は、
当時もたくさんいたんだろうな。

もうひとつ、この映画を観て思ったのが、
「長いものには巻かれろ」ってこと。
ル・グリはピエール2世と仲がよかったがゆえに、
出世もするし、
裁判でも有利になるしで、
カルージュとの差が大きく開いていったから。
人間社会って700年以上経っても
大して変わってないんだなって思った。

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