今まであった状態を、より以上いい状態にしよう! と心してやるのが努力(どりょく)と言われる行為だ。別に現状維持のままでいい場合もあるが、大よその場合は悪い状況にあり、逆転してそれ以上によくしようと改善(かいぜん)を試(こころ)みる行為が多い。悪い通知簿を受け取った子供が冬休みで3学期こそっ! と、いい成績を目標に猛勉強をしたり、営業成績の悪かった社員が新規の顧客(こきゃく)開拓(かいたく)だっ! といい営業成績を目指(めざ)して動き回る・・といった行為が努力と言われる。努力が足りないと当然、結果も出ない訳だから、現状維持~現状悪化の道を進むことになる。
「弱りましたな…」
ご隠居が一人、盆栽を見ながら腕組みをし、悩んでで呟(つぶや)いた。そこへ偶然、お隣(となり)の主人が散歩から帰宅し、二人は、バッタリと垣根越しに出くわした。
「何がです?」
お隣りの主人は訝(いぶか)しげにご隠居に訊(たず)ねた。
「いや、なにね…。少し努力が足りなかったみたいでしてな」
「努力? と申されますと?」
事情を隣の主人が訊(き)くと、しばらく海外旅行をしている間に、盆栽の枝が伸び放題に伸び、樹形がまったく整わなくなった・・のだと言う。
「ははは…なんだ、そんなことでしたか。いいじゃないですか、枯れた訳じゃなし。これから努力で整えられればっ!」
「あっ! その手がありましたなっ! これからも努力をねっ! ははは…」
努力とは、逆転してあっけなく解決する話題なのである。
完