他の短編集でもタイトルとしたが、天水(てんすい)とは、人の力ではどうすることも出来ない自然現象を指し、アレコレと画策するのは無駄なことを意味する。今の世相の一例を挙げれば温暖化が該当する。何年受験しても不合格となるのも天水だ。もう、やめなさい! と天が忠告しているのである。^^
山室(やまむろ)は今年で五回目の大学受験に臨もうとしていた。^^
「山室君、来年はやめた方がいいよ…」
「先生、今年は受かりそうな気がするんですが…」
「君は毎年そう言ってるじゃないか」
「はあ、それはまあ、そうなんですが…」
卒業した高校の進路指導を担当する教諭と、山室は今年も同じ教室の一角で話し合っていた。五年目である。^^
「天水には逆らえんよ、山室君」
「天水? 先生、なんですか、それは?」
「だから天水だよ。降る雨は止められんだろ」
「ええ…」
「今の世相は、何をするにも天水が増えてる」
「たとえば?」
「ポイ捨てゴミだよ。君が受験を諦めんようなもんだ、ハハハ…」
山室は、何がハハハだ…とは思ったが、生徒と教師の関係ではどうしようもく、思うにとどめた。
天水となる事柄は、奮闘せずに早くやめた方がいいようです。しかし、それにしても住みにくくなった世相ですね。^^
完