オリジナルという言葉も私達の暮らしの中で、もはや日本語化して根づいている和製英語の一つだ。コピーに対する対義語で、独創的で他に似通(にかよ)った存在がない場合に使用される言葉である。
とある研究所で実験に明け暮れる入豚(にゅうとん)という風変わりな教授がいた。彼はオリジナルな発想で、ここ数十年の間(あいだ)、講義時間以外は人工重力生成の研究を続けてきたのである。
「先生! もう、やめましょうよっ!!」
長年、入豚の助手を務め、ここ最近、講師に昇格したばかりの引力(いんりき)が、極限に達した金切り声(ごえ)を上げた。
「ここまで続けてきたんだぞっ! いまさら、君っ!!」
「来年から大学の研究費も出なくなる・・ってことですよっ!」
引力は、それでも続けるんですかっ! とも言えず、遠回しに言った。
「もう少しじゃないかっ、引力君っ!! このオリジナル理論が完成を見れば、私達は一躍(いちやく)、世界のホープだぞっ! もちろん、ノーペリストだっ!!」
「しかし、先生…。また、ですよ~っ!!」
引力は、理論が振り出しに戻(もど)ってるじゃないですかっ! とも言えず、ふたたび、遠回しに言った。
「今度は大丈夫だっ!」
「なら、いいんですが…」
引力はオリジナルよりコピーの方がいいなっ! と本音で思った。ところが、入豚の理論は事実、完成に近づいていたのだから面白い。
オリジナルは失敗の積み重ねから偶然(ぐうぜん)、生まれるようだ。^^
完