頭を冷(ひ)やす・・と聞けば、熱が出たのか? と、すぐ思い浮かぶが、その意味意外でも使われることがある。
とある役場の財政課である。朝から課長になったばかりの吹玉(ふきだま)が偉そうに採用されたばかりの職員、椙鑿(すぎのみ)を叱責(しっせき)していた。ちょいと出世風を吹かせたい気分がなくもなかった。
「あのなっ! あ、頭を冷(ひ)やせっ!! 椙鑿っ!」
「はい…何か問題でも?」
椙鑿は、吹玉が怒っている意味が分らず、怪訝(けげん)な面持(おもも)ちで吹玉の顔を窺(うかが)った。
「馬鹿野郎っ!! 歳入歳出は同額だっ! こんな入りと出が違う予算書がどこにあるっ!!」
「ええぇっ~~! そんな馬鹿なっ!! 同額で加味(かみ)さんに渡したはずですっ!」
椙鑿は自分の仕事には自信があったから、頭を冷やすのはお前だろっ! と内心で思いながらも、そうとは言えず、単に否定したした。
「よ~~く見ろっ! これが同額かっ!!」
吹玉は机上(きじょう)に置かれた出来立ての予算書を片手で椙鑿の前へ突き出した。椙鑿は、マジマジと予算書を見たあと、軽く言った。
「あ~~~っ、これ、加味さんの打ち間違えですわっ、課長!」
「なにぃ~~っ!!」
吹玉は突き返された予算書をマジマジと見た。確かに計算は合致(がっち)しており、総額欄(らん)の数値だけが異(こと)なっていた。
「… ああ! いやいや、ごくろうさんっ! ははは…」
吹玉は180°変身した笑顔で椙鑿を小さく見た。椙鑿は、何が、ははは…だっ! と怒れたが、思うにとどめ、自席へと戻(もど)った。
頭を冷やす間違いは、やはり、熱を帯(お)びると起こるようだ。^^
完