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水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

暮らしのユーモア短編集-69- 少しずつ

2018年07月23日 00時00分00秒 | #小説

 少しずつ・・という文言(もんごん)は良い場合、悪い場合を問わず、曖昧(あいまい)な状況で暈(ぼか)しながら僅(わず)かに進捗(しんちょく)する、あるいは、させることを意味する。価格は同じだが、ウインナ・パックの本数が7本→6本に減ったり、トイレットペーバーの巻き幅が14cm→13cmに細くなったり、あるいは、長かった歯磨きチューブが短くなったり・・と少しずつは密かに国力の衰微(すいび)を深刻化させていくのである。預け入れの利息が0.6%だったものが0.02%とかに低く下げられたのもその一つだ。これで消費[有効需要]が伸びる訳ない。消費が伸びなければ企業は物を作っても売れないのだから潤(うるお)わず、先細(さきぽそ)りとなる。先細りになった企業をなお支援しようとゼロ金利政策とかのアホな政策を実行すれば、ますます消費が冷え込み、企業にとってなんのメリットもないばかりか、国力は少しずつ勢いを増して衰微する・・と、こうなる訳だ。
 二人のご老人の会話である。
「年金、また減りましたなっ!」
「そうそう! 確かに…。2ヶ月分の振込額が¥94減りました…」
「ほんの僅かですが…」
「最初の決定額からすると、少しずつですが相当、減ってますなっ! 国は上手(うま)く国民を騙(だま)しますなっ! ははは…」
「少しずつですから、気づかないっ!」
「そうそう! 実に上手いっ! 巧妙(こうみょう)な手口(てぐち)ですっ!! これは、火付け盗賊改め方でも捕(とら)らえるのは無理ですなっ!」
「ええ。聞いたところでは、3年後から年金額改定時の物価変動率の考え方が変わるんでしょ?」
「そう! 賃金上昇率で決するようになるようですなっ!」
「考え方が少しずつ変わってるんでしょうなっ!」
「まあ、貰(もら)えるだけ有難いと感謝しますか」
「ですなぁ…。生きてるだけで儲(もう)けものってやつですっ、はっはっはっ…」
「はっはっはっ…。別の話になりますが、防衛庁が防衛省、それに集団的自衛権とかも少しずつ…」
「少しずつ、自然も減ってますしなっ! 世の中、少しずつ世知辛(せちがらく)くなって参りました…」
「まあ、せいぜいあと50年の命ですから、我慢(がまん)しましょう、ははは…」
「ははは…」
 そういえば、100年以上前から少しずつ平均寿命も延びている。^^

                                 


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