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水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

暮らしのユーモア短編集-59- 使いきる

2018年07月13日 00時00分00秒 | #小説

 物を有効に使うことは必要なことだ。最近の社会は、この考えとは真逆(まぎゃく)の方向、早い話、物を使い捨て感覚で捉(とら)えている節(ふし)が、なくもない。個人のボイ捨て感覚もそうだが、電化製品の部品保有期間がその顕著(けんちょ)な具体例で、部品さえあれば修理可能だった物が、粗大芥(そだいごみ)と化すのは悲しい話である。部品永年保管部の設置を企業にお願いしたいくらいのものだ。
 凡倉(ぼんくら)は勤め休みの朝、ふと、漬物(つけもの)壷(つぼ)の蓋(ふた)を開けた。
「まだ、いけるとは思うが…」
 そう独(ひと)りごち、凡倉は水洗いしたあと、適当な大きさにスライスし、ひと口、頬張(ほおば)った。食べられなくはないが、味はかなり酸(す)っぱかった。乳酸発酵が進んだものと解された。
「ちょっと無理か…。とはいえ、捨てるのもなぁ~」
 凡倉は母が作っていた塩し茄子(なすび)を想い出した。茄子が獲れ過ぎ、食べられない分を塩を効(き)かせて漬け込むのだ。そして、食べるときは水で塩抜きしながら炊(た)く訳である。
「茄子がいけるなら、大根もいけるだろう…」
 凡倉は単純なアホのように作業を開始した。休日だったから時間はたっぷりとあった。
「使いきる・・っていうのは大事なことだっ!」
 凡倉は偉そうに断言し、調理を続けた。とはいえ、それはただ水で煮るというだけの作業で、これといって工夫をした・・という訳ではなかったのだが…。
 そうこうして、何度か味を見ながら炊き直したが、いっこう酸っぱ味(み)は抜けなかった。凡倉は次第に焦(あせ)り出した。果たして美味(うま)い一品(いっぴん)に仕上がるのだろうか? 凡倉は少しずつ疑心暗鬼(ぎしんあんき)になり始めた。
 さて! その結果はどうなったのか・・だが、それは来週のお楽しみ・・続くっ! とはいかないから、結果報告すれば、まあなんとか食べられなくもない・・といったところだった・・と言っておきたい。捨てずに食べられたのなら、それでいいじゃないかっ! と言われる方もおられるだろうが、問題は美味(おい)しく食べられたのか?・・である。私は聞いていないが、食べた凡倉本人にしか分からない。
 使いきるのも、技術が必要なようだ。^^

                                 


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