水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

足らないユーモア短編集 (69)訳(わけ)

2022年09月01日 00時00分00秒 | #小説

 足らないのは足らないだけの訳(わけ)が存在する。その訳がなければ足る訳である。^^ では、どういった訳が存在して足らなくなるのか? あるいは足らなくなったのか? を推論するのは実に面白い。^^
 とあるスーパーである。一人の男が雨傘を手に買物をしている。
『おやっ? この前あったメーカーのラーメン袋が棚にない…』
 男は訝(いぶか)しく思いながら、陳列棚を探したが、やはり希望のラーメン袋は見つからなかった。要は男が思っている如意にはならず、不如意だった訳である。『不如意は困るぞ…』と思えた男だったが、ないものはないのだから仕方がない。男は似通った別のラーメン袋をカートに入れて我慢することにした。買物を終えレジを済ませると、男は店を出た。そして考えなくてもいいのに考え始めた。^^
『商品棚に買いたかったラーメン袋がなかった訳として考えられるのは、[1] 棚出しされたすべてのラーメン袋が売れてしまった、[2]店がそのメーカーの商品を入荷しなくなった・・の二つが考えられる。どちらだろう? ははは…買われちまって食われたかっ! この前、買ったときはあのメーカーのラーメン袋、かなりあったがな?』
 男は、どうでもいいことを考えながら車に乗り込んだ。外は雨が降っていた。
 人は物が足らないと、その訳が知りたくなるようである。^^

                   完


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