水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

足らないユーモア短編集 (88)物言い

2022年09月20日 00時00分00秒 | #小説

 物言い・・とは大相撲の用語である。『ただ今の協議についてご説明いたします。行事軍配は西方力士に上がりましたが、体が落ちるのが早いのではないかと物言いがつき、協議の結果、東方力士も死に体となっており、両者、同時と見て、取り直しと決定いたしましたっ!』などとマイク音が響く訳である。お客さんとしては、もう一番、見られるな…くらいの気分だ。^^ この物言いは、なにも大相撲に限ったことではなく、私達が暮らす世間でもよく言われ、珍しくない。
 とある中堅会社の事務室である。
「君ねっ! それは間違ってるぜっ!」
「どうしてですかっ! 先輩っ!?」
 先輩社員にクレームをつけられた後輩社員は逆に物言いで返した。
「どうしてって、どうしてもだよ、君っ!」
 先輩社員も負けてはいない。後輩社員の言い返しに、また物言いをした。
「どうしてもって、怪(おか)しかないですかっ!!?」
 後輩社員だって負けていない。また先輩社員の物言いに、物言いで返した。
 かくして、先輩社員と後輩社員の物言い合戦は午前中、ずぅ~~っと続き、仕事は中断したのである。会社としては大損失である。
「まだやっとるのかっ! いい加減にしたまえっ!!」
 腹を据(す)えかねた上司が、お灸(きゅう)に現れたのは昼過ぎだった。
 このように、物言いは、ほどほどにしないと、とんでもないことになる訳である。皆さん、くれぐれも、ご注意をっ!!^^

                   完


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