水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

足らないユーモア短編集 (71)油(あぶら)

2022年09月03日 00時00分00秒 | #小説

 油(あぶら)が足らないと機械は機能を弱め、無くなれば停止する。機械に油は欠かせないのだ。電力エネルギーも早い話、油と同じようなもので機能を弱め、無くなれば停止したりする。人はどうだろうか? と問えば、やはり同じで、食物や水[油]が無くなれば衰え、無くなれば、やがて死に至る訳だ。^^
 この男、逗子も油を求めていた。と、言っても、この男の場合は油そのもので、酒だった。皆から酒豪、酒豪ともて囃(はや)されるうちに、いつしか油なくてはならない男になってしまったのである。
「ウイッ!! この辺(あた)りに、あ、油は有りませんかねぇ~!」
「ガソリンかいっ!? スタンドなら、アソコの角(かど)を右に折れたとこにあるよっ!」
「そ、そのスタンドじゃないんですよっ!」
「じゃあ、どのスタンドだいっ!?」
「さ、酒屋。酒屋ですよっ! わ、私ねっ! さ、酒が足らないんですっ!」
「なんだ、その油かい。その油なら、ほんそこにあるだろっ! 鎌倉って書いた酒屋が…」
「あ、あります。ありましたねっ! ウイッ!! ど、どうも…」
 男はよろけるような酩酊状態で酒屋へと歩を進めた。完全なアル中である。
 こうした油は、足らない方がいいようである。^^

                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする