子供の頃、お盆が過ぎての楽しみがあった。
お供え物の砂糖菓子が食べられること。
今は砂糖で作った積み団子や蓮の花など誰も欲しがらない。
しかし60年前には子供たちにとってこれは貴重なお菓子だった。
これらを割って子供たちは笑顔満面に頬張った。
それが終わると今度はホウズキの実で遊ぶのだ。
内なる真ん丸な実を優しく揉みほぐし、中の種を真ん中の小さな孔から取り去る。
その実の殻に水を注いで中を綺麗に洗う。
その孔から今度は口で空気を吹き込むと丸くなる。
水を注いで水鉄砲にする。
すぐに壊れてしまうおもちゃだけれども、その行程がとても好きだった。
そして、おじいちゃんが片付けた精霊を大井川の川原まで一緒に運ぶ。
火をつけて燃えかすを川に流す。
子供の頃の年中行事だった。
それに比べ、今のお盆の味気無いこと。
精霊は市内のお寺が引き受けて纏めて燃やしてくれる。
砂糖菓子もホウズキも全て精霊の一部となり人知れず燃やされてしまうのだ。
我が家はそれでも迎え火と送り火を欠かさずにやるが、今ではそれをやる家も少ない。
お盆という年中行事も時代の流れとともに何時かは消えてしまうかも知れない。
先祖や死と向かい合うお盆という行事は子供たちにとって貴重な社会体験なのに。