【執筆原稿から抜粋】
仕組みとルールの違い
■ 負担を増やすか減らすか
仕組みは良い意味で使われ、ルールは悪い意味で使われます。
ただ、ルールと仕組みの違いは何でしょうか。
仕組みが称揚されて関連本も多いですが、だれもルールとの違いを論じていません。
端的に言うと、それは「(最終的に)負担を減らすか増やすか」です。仕組みは負担を減らし、ルールは負担を増やします。
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具体例で考えましょう。仕組みの典型例は、工場でプレスに手を挟む事故を失くす仕組みとして、両手でボタンを押す(両手で押さなければプレスが締まらない)があります。
これは「両手を使わなければいけない」という点では負担を増やしていますが、これにより構造的に事故を減らしています。
他の例として、「車のエンジンをかける際、ブレーキを踏まねばならない」があります。
ブレーキを踏まねばならない点では負担は増えていますが、これにより構造的に事故を失くしています。
上記2例は、ルールでもありますが、構造的・最終的・究極的に負担を減らすため、良い「仕組み」として理解されています。ルールは仕組みを内包します。
■ ルールとの違いは相対的
ただ、負担が増えるか減るかは、運用してみないと分からないため、事案によりけりです。
例えば、「稟議を通すのに5人の上司の決済を経る(判子を並べる)」ルールは、「構造的にミスを失くす仕組み」と高評価できますでしょうか。3人なら? 2人ならどうでしょう。意見が分かれるところでしょう。
このように、ルールと呼ぶか仕組みと呼ぶかは、個々人の価値判断に基づきます。
上司が「これが良い仕組みだ!」と言っていても、部下には単なる「ウザいルール」かもしれません。
仕組みの濫用・押し付けに気をつけましょう。