川塵録

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五十沢二郎による漢籍のキリスト教的解釈

2024年12月30日 | 古典・漢籍
『論語と経営・コンプライアンス(仮題)』って本を書いている。

そのためにも、加地伸行さんから改めて論語を教わっている。

そこで加地伸行さんから教わった、五十沢(いざわ)二郎さん。

戦前の人。どれくらいキリスト教のバックボーンがあるか不明ですが、漢籍を、とてもキリスト教的に訳している。

意訳。超訳。こういう人は見たことがなかった。

五十沢二郎さんの本『中国聖賢のことば』の中から、私が感動した名訳を、いくつかまとめて紹介します。


  • 論語

真に生きる道を知りさえすれば、肉体の死のごときは、もはやなにものでもありはしない。 
(原文)朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり。

宇宙の意志といったものの何であるかがわかったのは、五十になってからだった。 
(原文)五十にして天命を知る。

君子に恐れはない。それは畏れを知っているからである。
小人は畏れを知らない。だから常に脅かされる。
 (原文)君子は泰にして驕ならず、小人は驕にして泰ならず。

言うべき時に言わなければ、信義に反する。
言うべからざる時に言えば、節義に反する。 
  (原文)与に言う可くして、之と言わざれば、人を失う。
    与に言う可からずして、之を言えば、言を失う。

人々に必要なのは、信念である。知識ではない。  
  (原文)民は之に由らしむ可し、之を知らしむ可からず。

誘惑のない境遇にいるばかりに罪を犯さないだけの人間を、真に清浄な者だとは言われまい。
 (原文)仲弓曰く、「簡にして簡を行わば、乃ち大簡なる無からんか」。

  • 孟子

良心を深めるということは、生命を知るということである。生命を知るということは、宇宙の意志を知るということである。ゆえに、良心に忠実であり、生命を尊重するということは、畢竟するに、宇宙の意志を成就するということである。 
(原文)其の心を尽す者は其の性を知る。其の性を知れば則ち天を知る。
其の心を存し、其の性を養うは天に事うる所以也。

他人を知るよりは、自己を識ることだ。それがほんとうの知恵である。
他人に勝つよりは、自己に克つことだ。それがほんとうの勇気である。
 (原文) 人を知る者は智なり。自ら知る者は明なり。
       人に勝つ者は力なり。自ら勝つ者は強なり。

  • 老子

論理に捕捉できる真理を、真理とはいえない。 
(原文)道の道とすべきは、常の道に非ず。

自分たちの守るべきところのものが三つある。
第一は、愛である。
第二は、運命に従順なることである。
第三は、謙遜なることである。 
(原文)我に三宝有り、持して之を保つ。
一に曰く慈、二に曰く倹、三に曰く敢えて天下の先と為らず。

  • 荘子

社会への奉仕よりほか考えない者は、虚偽に陥りやすい。
真理への奉仕よりほか考えない者は、けっして虚偽に陥らない。
(原文)人に使(せし)めらるるは、以て偽り易し。
    天に使めらるるは、以て偽り難し。

すべて奴隷でないものはない。
その身を捧げるところのものが道義であると、人々はこれを君子と言う。
その捧げるところのものが名利であると、人々はこれを小人と言う。
(原文)天下尽く殉なり。
   彼其の殉ずる所仁義なれば、則ち俗に是を君子と謂ふ。
   其の殉ずる所貨財なれば、則ち俗に之を小人と謂う。


  • 書経

久遠の生命の赴くところに従って、真理の実現に努力する。
それがほんとうの王者である。 
(原文)恒に有る性に若(したが)い、克(よ)くその猷(みち)をやすんぜしむる、惟れ后。

神を信ずることのできる者は、なにもかも楽しく、いつも満足していられる。
神を信ずることのできない者は、あれかこれかと迷いながら、いつになっても満足することはできない。 
(原文)徳を作(な)せば心逸して日に休し、偽を作せば心労して日に拙なり。

 
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