本日3月23日は、ベトナムで胡キリが少帝から皇位を簒奪して陳朝が滅亡した日で、天正遣欧少年使節がローマ教皇グレゴリウス13世に公式謁見した日で、江戸幕府が奉書船以外で海外渡航した日本人の帰国を禁止した日で、パトリック・ヘンリーが「自由を与えよ。然らずんば死を与えよ」の演説を行った日で、ロシア皇帝パーヴェル1世が暗殺された日で、ソビエト連邦が満州国に東清鉄道を有償譲渡する協定の調印がおこなわれた日で、ひめゆり学徒隊に動員令がくだった日で、解散寸前のプロ野球団広島カープが広島県・中国新聞などの再建策提出で存続を決定した日で、中国からの引揚げ第一船・興安丸が舞鶴に入港した日で、児玉誉士夫邸セスナ機特攻事件があった日で、パラグアイの副大統領ルイス・マリア・アルガーニャが暗殺された日で、能登半島沖不審船事件があった日です。
今この時、星辰は正しい位置に付き、ルルイエは浮上する。
本日の倉敷は雨が降ったり晴れたりしていました。
最高気温は九度。最低気温は四度でありました。
明日は予報では倉敷は晴れとなっております。
或る夜の事。
狐は何心なく場内を眺めている内に不思議なことに注意を惹かれた。
其の夜は、大正、昭和、平成と経て白寿になつた或る藝術家の御方の為に開かれた祝賀の会なのであつた。
狐は其の宴席の末席で火酒を舐めていた。
此の燈火の煌いた華やかな宴席には、もう何年も前に名を聞き知っているばかりでなく多くの業績を目の当たりにして狐なりに其々に受け入れているような大家達も席を連ねている。
狐は大家達の威圧感にぷるぷる震えながら只管に火酒を舐めていた。
司会者の何か特別な意図が含まれていたのであらうか?
祝宴の主人公である其の御方の坐つている中央の卓子は、純然の家族席としてまとめられている。
夫人。成人して若い妻となつている令嬢。其の良人。其の他幼い洋服姿の男の子。或は先夫人かと思わるるやうな婦人。
正座の画家を巡つて花で飾られた卓子の周囲をきつしりと取り囲んでいるのである。
一応は和気藹々たる其の光景は主人公が他ならぬ白寿の御方であるといふことから、むしろ異様に孤独に鬼気さえも孕んで忘れがたい感銘を与えられた。
藝術の道を往く時、藝術家にとつて道連れは今こうやって卓子に何か雑然と無意味な賑やかさで着いている大小さまざまの家族達であらうか?
其れとも友達や同時代人、或は先輩後輩達であらうか?
仮に狐が当夜の主人公であり、藝術家として何十年かの果にかういう席の割当ての白寿の祝を催されたとしたら狐は戦慄を禁じ得なかつたであらうと思う。
藝術家は孤独を恐れない勇気を常に持たなければならない。
けれども恐るべき性質の孤独があるとをいふことをも知らなければならない。