本日6月23日は、弘安の役で元軍が九州に再襲来した日で、ウィリアム・ペンがペンシルベニアのレナペ族と友好協定を結んだ日で、ナポレオン率いるフランス軍がロシアに侵攻して1812年ロシア戦役が始まった日で、国際オリンピック委員会が設立された日で、ドイツのソ連侵攻に乗じてリトアニアがソビエト連邦からの独立を宣言した日で、昭和新山が誕生した日で、沖縄守備軍司令官牛島満が摩文仁司令部で自決した日で、国民義勇兵役法が公布された日で、戦後の混乱期に密造酒の販売を行っていた在日韓国・朝鮮人集落を取り締まった税務署の職員が税務署からの帰宅途中に在日朝鮮人数名に囲まれて暴行を受けて殉職した日で、自衛隊機乗り逃げ事件が発生した日で、中国共産党の第13期4中全会で総書記の趙紫陽が全職務を解任されて自宅軟禁下に置かれた日です。
本日は倉敷は曇りでありましたよ。
最高気温は二十五度。最低気温は二十度でありました。
明日は予報では倉敷は晴れとなっております。
或る夜の事。
狐は先輩と一緒に或るパブリック・ハウスのカウンター席に腰をかけて、絶えずミルクを舐めてゐた。
狐は以前に友人に「愛しの人に媚びを売りたいのだけれども如何したらよいものか?」と質問されて返答に困ったことを思い出し、如何答えればよいのか経験豊富な先輩に尋ねてみた。
「愛しの人に媚びを売りたい?」
先輩は頬杖をした儘、極めて無造作に私に呟いた。
「ならば取敢えずは愛しのお方の前で猫耳をつけるがよい」
猫耳???
「媚びを売るならばいつそのことあざと過ぎるくらい媚びを売つたほうがよい。猫耳をつけて媚びを売つて売つてて売りまくるのだ。バニーちゃんでもよい」
バニーちゃん……。
「要は相手を萌えさせて燃えさせればよいのだ。恥じらいつつ恥を捨てよ」
恥じらいつつ恥を捨てる……。
「愛しのお方に媚びを売るのならば捨て身でなければならぬ。突貫せよ」
捨て身……。突貫……。
因みに猫耳とかバニーちゃんの衣装とか何処で手に入るのですか? と狐は先輩に尋ねました。
すると先輩は目を綺羅綺羅と輝かせて「ん? 実物を見てみたいかね? 着てみたいかね? 私は持つているぞ」と答えました。
持つているんですか! 何でそんな物を持つているのですか?
「勿論、まいすい~とはに~に媚びを売る為だ!」
……。左様でございますか。
「私の部屋に來れば猫耳とかバニーちゃんの衣装とか他にも色々あるぞ。今から私の部屋においで」
……。否です。
「君の猫耳姿とかバニーちゃん姿が見たい! おいでよ」
……。否です。先輩は男女を問わず襲いかかる人です。怖いです。
「大丈夫。怖くない怖くない。一寸だけ一寸だけだから。ね? ね?」
……。否です。私は先輩に美味しくいただかれたくはありません。
「襲わないから。何もしないから。猫耳姿を見せてくれるだけでよいから」
……。否です。私は先輩に媚びを売りたいわけではないのですから。
「大丈夫。萌えても燃えても襲わないから。一寸だけ一寸だけだから。ね? ね?」
……。否です。先輩は襲う気満々です。先輩の部屋に行けば私は先輩に美味しくいただかれてしまいます。絶対に否です。それに先輩に媚びを売るなど絶対に厭です。あり得ません。唾棄すべき行為です。
「では私が着るから。私がバニーちゃんの衣装を着るから」
だから私は先輩に萌えたいとか燃えたいとか思つていないのですから。否です。もし、先輩に萌えて燃えてしまったならば我が一生の不覚。その恥を雪ぐには喉を突いて自害して果てねばなりません。
「むぅ」
先輩はお喋りを止めて考え込んだ。
狐の言葉は先輩の心を知らない世界へ神々に近い世界へと解放したのかもしれない。
狐は氷とカルーアを注文し、割賦の中でミルクと混ぜ合わせてカルーア・ミルクを作り、舐めた。
先輩は言つた。「いけず。私のことが好きなくせに」
狐は何か痛みを感じた。が、同時に又歓びも感じた。
人の欲望とは、様々なものであるな。面白ひものだ。
そのパブリック・ハウスは極小さかつた。
しかしパンの神の額の下には赫い鉢に植ゑたゴムの樹が一本、肉の厚い葉をだらりと垂らしてゐた。