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ちひろBLUESこと熊谷千尋のブログです。

シネ・ウインドで名作SFホラー『遊星からの物体X』デジタル・リマスター版を観て来ました!

2019-01-04 18:57:00 | Weblog


1/3(木)、シネ・ウインドで『遊星からの物体X』を観て来ました!
1982年の映画ですが、最近デジタル・リマスター版の上映が行われているようです。





ちなみに予告編はこんな感じです。



さてこの映画、そもそも1938年のジョン・W・キャンベルの『影が行く』(Who Goes There?)という原作小説があり、それを1951年にクリスティアン・ナイビイ監督が『遊星よりの物体X』(The Thing from Another World)として映画化し、それをさらにジョン・カーペンター監督が1982年にリメイクしたのが本作『遊星からの物体X』(The Thing)ということなんですね。
僕は原作小説『影が行く』も、1951年の『遊星よりの物体X』も、1982年の本作『遊星からの物体X』もまったく未見で、このタイミングでいきなり観たんですけど、非常に面白かったです。

この映画を一言でまとめるなら、「地獄」ですね。
雪に閉ざされた南極というただでさえ過酷な状況下で、謎の宇宙生物によって人間たちが襲われ、さらにその生物は擬態能力があるので人間たちが疑心暗鬼にもなるという、あらゆる意味で逃げ場も救いもない地獄を描いたSFホラーサスペンスでした。

あまりに地獄なので、どこがどう地獄なのかを書いていこうと思うんですけど、まず舞台が南極の観測基地という時点で、もう地獄の準備が整っていると思うんですよね。
こんな一歩外に出れば極寒の世界で何かが起こったらどこにも逃げ場がないですからね。

映画の序盤、観測基地の中で観測隊員たちがのんびりしているのですが、コンピューターのチェスゲームに負けた人物が怒ってコンピューターを破壊するという衝撃的なシーンがいきなり登場します。
要するに、一見平和に見える基地の中でも、実は観測隊員たちはイライラしているという閉塞感、こんな場所で何かトラブルが起きたら本当にヤバいぞ…という設定を、もうこの時点で描いているのです。

さて、そんな場所でいよいよ恐怖が…と思いきや、すぐには恐怖を起こさずに、そこに至るまでの過程をじわじわと描いて不穏な空気を盛り上げていくあたりも良かったです。
雪原を走る犬を射殺しようと低空飛行で追いかけるヘリ、観測基地に近くに不時着したヘリから出てきた人間が犬を射殺しようとするも撃ち合いになり逆に射殺されてしまう、という、この冒頭の時点で、とにかく不穏だし殺伐としているけれどすべてが謎に包まれているというところから物語は始まります。

そのヘリがノルウェーの観測基地から来たものだと判明し、そこに向った隊員は、そこで不可解な死体を発見し、より事態がミステリアスな方向に深まって行き、恐怖を煽っていきます。
そして、冒頭に登場した犬は観測基地で飼われることになるのですが、この犬がきっかけで、雪に閉ざされた観測基地で隊員たちが次々と宇宙生物に襲われるという、恐怖の物語はどんどん加速していきます。

本当に素晴らしかったのが、あの謎の宇宙生物の醜悪としか言い様のない造形でしたね!
肉体を乗っ取られた犬や人間が見るも醜悪な宇宙生物の姿に変容していくという様は、言葉では言い表せられないほどで、これはもう「是非映画を観て下さい!」としか言えません。

しかも、その造形の醜悪さが映画が終盤に向かうにつれて徐々にパワーアップしていくのも圧巻で、あそこまでの異形の造形をCGもなかった時代に特撮で表現していたのにも、本当に驚かされました。
閉ざされた空間で宇宙生物に次々襲われる人間たちという設定だと、1979年の『エイリアン』にも似ているとは思いましたが、何だかんだカッコよく見えてしまうエイリアンの造形と比べると、この映画の宇宙生物の造形は本当に醜悪としか言いようがなく、視覚的に恐怖が伝わってきました。

また、そういう視覚的な恐怖の他に、この宇宙生物には、人間に擬態するという能力があるために、途中から一体誰が本物の人間で誰が宇宙生物の擬態なのか分からなくなり、すべての登場人物たちが疑心暗鬼になるという、心理的な恐怖も本当に素晴らしかったです。
しかもそれが逃げ場のない空間で起こるために、登場人物たちの精神がどんどん崩壊していき、最終的に殺し合いにまで発展していくのも、もう地獄としか言いようがありませんでした。

その結果、宇宙生物によって殺される以外にも、人間同士の殺し合いで次々と人間が死んでいくというあたりが本当に救いのない地獄で、極限状態に追い込まれた役者さんたちの熱演が本当に迫力がありました。
また細かいところを言うと、宇宙生物を殺すには火炎放射器で焼き殺すしかないために、戦いの度に基地の建物がどんどん破壊されていき、どんどん自分達の居場所がなくなっていくという逃げ場のなさも、本当に地獄だなあと思いました。

結末については書きませんが、巨大な恐怖に直面した時がいかに無力な存在かということを突き付けてくるような映画だったなあと思いました。
まとめると、CGもなかった時代に、特撮による醜悪な異形の造形や、役者さんの熱演、そしてじわじわと恐怖を盛り上げる丁寧な演出によって、ここまでの地獄を描けたことは本当に凄いことだと思うので、観る価値のあった映画だったなあと思いました。
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