2/4(日)、長野ロキシーで『LOCO DD 日本全国どこでもアイドル』を観て来ました。
これは、3組の地方アイドルを主演にした映画を、それぞれ3人の異なった監督が撮影するという企画です。
オトメ☆コーポレーション×田中要次「Last DAYS~君といた場所~」、FantaRhyme(ファンタライム)×大工原正樹「ファンタスティック ライムズ!」、3776(井出ちよの)×島田元「富士消失」の3部作です。
ひとまず予告編はこんな感じです。
個人的に僕は、長野のオトメ☆コーポレーションの映画を田中要次さんが監督として撮影するという話が非常に気になっていたのですが、新潟では上映していなかったので、はるばる長野ロキシーまで行って来ました!
オトメ☆コーポレーションと田中要次さんの故郷の長野県ということで、長野ロキシーでは元オトメ☆コーポレーションの久保田光さんのトークショーを開催したりと盛り上げていたようです。(僕はタイミングが合わずに行けませんでしたが)
長野ロキシーの壁に貼られていたポスター。
特典のポストカードとオトメ☆コーポレーションのブロマイドももらいました!
と言う訳で、感想を書いていこうと思います!
オトメ☆コーポレーション×田中要次
「Last DAYS~君といた場所~」
2016年に惜しまれながら解散してしまった長野県のご当地アイドル、オトメ☆コーポレーション。
映画は、その解散ライブの実際の映像から始まります。
すると舞台は変わって、オトメ☆コーポレーションの楽屋の様子が登場…
…と思ったら、それはドキュメンタリーではなくドラマパートであり、オトメ☆コーポレーションの4人が登場する「世にも奇妙な物語」のような不思議な物語が展開していきます。
そんなドラマの合間に時々映像が切り替わり、監督の田中要次さんが今度はオトメ☆コーポレーションのリーダー、久保田光さんを車の助手席に乗せてドライブしながら、インタビューをしている映像が何度か登場します。
どうやらこのインタビュー映像は、オトメ☆コーポレーションの解散後に撮影されたもののようです。
その後、ドラマパートは突然終了し、メイキング映像へ…そこに田中要次さんのモノローグが流れるのですが、このドラマパートはオトメ☆コーポレーションの解散前に撮られるはずだったけれど、解散が決まり途中で撮影が中止になってしまったものである(という設定)ことが語られます。
もちろん、このドラマパートの内容はフィクションであり、と言うか、そもそもこのドラマが撮影されていたことそのものが嘘であると思うですが、「本当は撮られるはずだったけれど完成しなかった映画」が描かれることによって、惜しまれながら解散していったオトメ☆コーポレーションの切なさが引き立っていたなあと思いました。
その後は、田中要次さんが久保田光さんと街を歩きながらインタビューする映像と、実際の解散ライブの映像が交互に登場し、その中で、オトメ☆コーポレーションは2016年の全国ツアーで観客動員数1000人を達成できなければ解散を宣言し、その目標に届かなかったことで解散したという過去が語られていきます。
そんな切なさとは対照的に、実際の解散ライブの盛り上がりや(ステージだけでなくて客席のファン(通称「株主」)の盛り上がりも映していることがライブの熱気を伝えていました)、楽屋での楽しそうなやり取りなどが映されることによって、より解散の切なさが際立っていたとも思ったし、同時に、たとえそれが一時的なものであってもステージと客席で感動を共有できるアイドルは素晴らしいものなんだな、という気持ちになり、アイドル好きとして感動せずにはいられませんでした。
ライブ映像が終わると、田中要次さんのモノローグの「16年活動してきた人気アイドルグループが解散した。(おそらくSMAPのこと)しかしその陰に、輝いては消えて行くたくさんの星たちがある」という言葉がとても切なく響きました。
しかし、最後に解散したオトメ☆コーポレーションの4人それぞれのその後もざっくり説明されており、解散していくアイドルのその後の幸せを祈る気持ちが込められていたと思いました。
と言う訳で、短い中にアイドルの輝きと熱狂と、解散していくことの切なさと、幸せを祈る気持ちという、アイドルファンなら誰もが感じたことがあるであろう気持ちがぎっしり詰まった映画だったなあと思いました。
オトメ☆コーポレーションのアイドルとして、そして人間としての魅力、そしてそんな彼女たちに対する田中要次さんの優しさを感じられる映画でした。
FantaRhyme(ファンタライム)×大工原正樹
「ファンタスティック ライムズ!」
福岡県のFantaRhyme(ファンタライム)という、ヒップホップの要素などを楽曲やダンスにも取り入れて活動する、Ayu、Sayaの二人組ダンスボーカルユニットの映画です。
映画の冒頭、FantaRhymeが実際に行っているどこかのインストアライブと、その後の物販でのファンの方たちと交流をしている映像から始まります。
その後はずっとドラマパートが続き、Ayu、Sayaがアルバイトしている(という設定の)小さなレストランを、Sayaさんのお兄さんが訪れ金を貸してくれと言い怒ったSayaさんは店を飛び出す、という物語が展開していきます。
この、Sayaさんのお兄さんというのが、役者を目指しながらもまったく真面目に働かずにお酒を飲んでばかりというとてもダメ人間として描かれています。
その後、公演を歩くSayaさんのもとに、今度はFantaRhymeの面倒臭いファンが訪れるという、またしてもダメな男に絡まれるSayaさん!
すると、その面倒臭いファンはFantaRhymeの振り付けにダメ出しをし始めるのですが、そんな気まずい会話の中で今度は逆にSayaさんがそのファンにダンスを教えるというシュールな展開に!
一方、レストランではAyuさんがSayaさんのお兄さんと話しているのですが、夢を語ってばかりで何もせず、妹のアイドルの活動をバカにする彼に対し、怒ったAyuさんが自分たちのアイドルとての覚悟の気持ちを熱く語るというシーンがあるのですが、ここでのAyuさんの熱演、そして言葉の一つ一つが胸に刺さる、この「LOCO DD」という映画全体で見ても個人的に最も感動するシーンになっていました。
そしてその頃、Sayaさんが面倒臭いファンにダンスを教えるという不思議なシーンの方では、ファンが実際にダンスを踊ってみることによって、結果的にアイドルの大変さを思い知るというシーンによって、全体的に「ダメな男がアイドルの凄さを実感させられる」という映画になっていたなあと思います。
そして最後には二人が合流し、二人がそれぞれ作詞作曲した曲を歌ってみる、という展開を迎えるのですが(実際、本人たちが作詞作曲などもしているそうです)、ここで二人が歌った曲が本当に素敵な曲で、FantaRhymeという二人の絆がこの一曲に詰まっているように思いました。
こうして、ストレートに感動できる映画になっていたのですが、最後のエンドロールに流れるメイキング映像が流れるのですが、そこで、面倒臭いファン役の松下仁さんが撮影でFantaRhymeの2人と最初に対面した時、実は彼はその前にライブにこっそり行っていたことを告白する(しかもその様子が冒頭のドキュメンタリーパートにちゃんと映っている!)という仕掛けがあり、これには思わず笑いました!
3776(井出ちよの)×島田元
「富士消失」
静岡県の富士山ご当地アイドルの3776の井出ちよのさんの主演映画で、映画の前半はひたすら井出ちよのさんへのインタビュー映像が続きます。
時折、プロデューサーのマネージャーであり作曲もしている石田彰さんも登場し、石田彰さんと井出ちよのさんの信頼関係も感じさせる、非常にほっこりするインタビュー映像です。
その後、ライブ会場へ移動中の車内でのインタビューなどを経て、実際のライブ映像が流れるのですが、井出ちよのさんがライブ中にお茶を飲みに一度舞台袖にはけると(ライブの定番ネタらしいです)…なんと突然不思議な世界へと迷い込んでしまったではないか!
井出ちよのさんが迷い込んでしまったのは、なんと3776のシンボルである富士山の消失した世界…するとそこで彼女の前に次々と現れる妖しい男達!
果たして彼女は富士山を取り戻し、元の世界に帰ることが出来るのか!?
そんなドラマパートが、唐突に始まるので、正直映画を観ていてかなりびっくりしました!
しかもそのドラマパートが、完全に低予算自主映画感が全開で、なんじゃこりゃ!とかなりツッコミを入れてしまったのですが、そんな変な世界に翻弄されながらも真面目に物語を演じ切る井出ちよのさんはとても可愛いのである!(ネイティブアメリカンの衣装に、突然ガンアクションまで披露!)
この普通の映画なら低予算とバカにされてもおかしくない映像を魅力的に見せてしまうのは、アイドル映画だからこそ出来ることなんじゃないかと思いましたし、と言うかそもそも、そんな冷静に見たらツッコミどころ満載のパフォーマンスを全力ですることでそこでしか生まれない魅力を発揮してしまうことって、まさにアイドルという存在そのものじゃないだろうか?なんて気持ちにもなりました。
色々あってドラマパートが終了すると、井出ちよのさんは無事に現実のステージに戻ってきて、最後にライブを披露して映画も終了します。
もしかしたらこの映画は、アイドルの表と裏の姿を描いた映画だったのかも知れないなあ、などと思いました。
と言うのも、ファンにとって見ることの出来るアイドルとはあくまでステージの上の姿だけであり、その裏では一体何が起こっているのかは分からない、想像することしか出来ないものですよね。
そんなアイドルの裏の姿を、ドキュメンタリーで迫ったり、思いっきりファンタジーなドラマで「結局アイドルの裏の姿は空想の世界だよ」と伝えている映画だったのかも知れないなあ…などと思いました。
と言う訳で、「Last DAYS~君といた場所~」「ファンタスティック ライムズ!」「富士消失」3作品とも、ドキュメンタリーとフィクションの融合によって、それぞれ異なった方法でアイドルというものの魅力を表現している、すごく面白い作品でした!
もしかしたら、この「ドキュメンタリーとフィクションの融合」こそ、アイドルというものの根本なのかも知れないなあ…などと思ったりもしました。
そんな、色んな想像力も膨らむ『LOCO DD 日本全国どこでもアイドル』すごく面白い映画でした!
はるばる長野まで観に行けて良かった!