5/25(月)、シネ・ウインドで「精神0」を観てきました。
予告編はこんな感じです。
想田和弘監督のドキュメンタリーは「観察映画」と呼ばれていて、ナレーションもテロップもなく出来事を淡々と記録する感じなので、観る人を選ぶかも知れないけど、じっくり見ていると色んな発見もあったりして面白いんですよね。
もともと、想田監督が岡山の小さな診療所の精神科医・山本先生を追った「精神」という映画が10年前にあったんだけど、その10年後の現在を追ったドキュメンタリーです。
山本先生は精神科の専門的な話というより、そこを訪れる一人一人に寄り添って話を聞く感じがして、それがすごく良かったです。
山本先生は精神科医というより、時代劇とかに出てくる村人の相談事を何でも聞いてくれる長老みたいな感じだなあと思いました。
訪問する人達も、そもそも何の病気なのかみんなよく分からない人達ばかりだけど、相談乗って欲しくて来てる人が多い感じなんですよね。
でも、自分も精神科のカウンセラーをよく利用するので、そういう気持ちはすごく分かるし、こういう山本先生みたいな人の存在は本当に一番必要だよなと思いました。
で、後半からは山本先生のプライベートな部分を追っていくんだけど、途中から山本先生が診察室から出て、隣にある自宅に移り、奥さんと一緒にお寿司を食べる場面へと続いていきます。
ここの場面、前半の診察の場面からそのまま途切れることなく何気なく登場してくるのですが、ああ、これは山本先生が精神科医を引退した日の出来事なのかと、観ながら気付かされます。
10年前の前作「精神」の時点で、山本先生の奥さんが結構登場していて、そこの場面が本作でも回想シーンのように挿入されていきます。
それを見ると、山本先生をずっと支えていた奥さんの存在の大きさが感じられるし、精神科医を引退した日に二人でお寿司を食べてお酒を飲む姿を見ていると、本当にいい夫婦なんだろうなと思いました。
そして、そんな大事な日に想田監督がカメラで撮影しながら同席してしまっているのもちょっと面白かったです。
見ていると、山本先生が想田監督にもお酒を進めてきたりしていて、撮影しながら山本先生のご夫婦と想田監督の信頼関係が築かれていて、「精神」も「精神0」もその信頼関係の上で成立している映画なんだなと思いました。
そんなわけで、本作は素晴らしい精神科医であった山本先生が、精神科医を引退したあとに見えてくる山本先生本来の人間臭い部分や奥さんとのやり取りにほっこりできる映画でした。
そして、何より山本先生にとって奥さんの存在はすごく大きかったんだなとあらためて感じさせらる映画で、それを非常に象徴的に表現している感動のラストカットまで必見の映画です!