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10/27(水)、シネ・ウインドで「リル・バック ストリートから世界へ」を観てきました。
アメリカのメンフィスという地域で生まれた「メンフィス・ジューキン」と呼ばれるストリートダンスの文化を追ったドキュメンタリー。
後半はそこで育ったリル・バックがバレエ団に入団して成長し、やがて世界的なダンサーとして活躍していく姿を追っていきます。
不良文化のイメージが強いストリートダンスですが、そもそもメンフィスはギャングが貧困層を支配しているような犯罪多発地域で、子供達はギャングになるしか道がないと言われた時代もあったらしい。
でも、そんな地域で生まれた子供達がダンスに夢中になることで、ギャングになることを防いでいるんだ、という話には感動させられました。
金と暴力だけが力を持つ現実は、本当に地獄だと思いますが、人間に大切なのはそれだけじゃない、文化もちゃんと大切なんだ、と思いました。
そして、地獄のような現実から人を救う力が、文化にはちゃんとあること、だから文化を守らないと人間は生きていけないんだなということを、強く実感しました。
そんなメンフィスで生まれ、ストリートダンスで育ったリル・バックは、奨学金を得てバレエ団に入団し修行することで成長していくわけですが、当時の映像の中でリル・バックが本当に幸せそうに踊る姿が心に残りました。
その笑顔を見ながら、貧困で犯罪多発地域で生まれたリル・バックがダンスと出会えて良かった、理解ある両親や素晴らしいバレエの先生と出会えて、本当に良かったなあ…と心から思いました。
思うにリル・バックは、ストリートダンスで表現欲求の初期衝動や純粋に心から楽しむ気持ちを学び、バレエの学校でダンスの基礎を学んだのではないでしょうか。
まずは初心者の時に心から楽しむ気持ちを学び、それから基礎も大切に学ぶ、それはダンスに限らずあらゆる物事で大切なものだと思いました。
その後、リル・バックは世界的チェロ奏者のヨーヨー・マに高く評価されて共演し、それがきっかけで世界的に注目され、やがて世界中の大きなホールなどでダンサーとして活躍するほどに成長していきます。
サブカルチャー、アングラカルチャーのストリートダンスと、ハイカルチャーなバレエダンスの世界を、自在に繋ぐリル・バックのダンスは、彼の人生そのもののようでカッコいい。
今では、リル・バックは地元メンフィスの子供達にダンスを教える先生もやっていて、すごく教えるのも上手くて愛されているらしいですね。
子供達がギャングになるしか生きる道がなかったようなメンフィスで、ダンスという道を切り拓いたリル・バックって本当にすごい希望だよなと、本当に感動しました。