5/22(水)、イオンシネマ新潟西で「ちいさな独裁者」を観てきました。
新潟市内ではイオンシネマ新潟西だけで上映していたようです。
予告編はこんな感じです。
舞台は、第二次世界大戦の終戦直前のドイツ、ナチスの脱走兵の主人公が、たまたま拾った軍服を着て将校になりすまし、徐々に残虐になっていく、というショッキングな映画でした。
ナチス映画はたくさんありますが、この映画は色んな意味で、今までのナチス映画とは違う、新たな視点からナチスを描いていると思いました。
ナチスの登場する多くの映画は、わりと悪役、敵キャラとしてナチスを描きがちだと思うんですけど、そのナチス側の視点から、しかも脱走兵の視点から描くのは、結構斬新だと思いました。
実際、終戦間際はナチスからの脱走兵が相次ぎ、その結果、脱走兵の民間人への略奪なんかも問題になっていたらしいです。(この映画を観ると分かります。)
極悪な存在として描かれるナチスの兵隊ですが、彼らは彼らで脱走兵が相次ぐくらい地獄のような世界を生きていたというのは、また新たな発見でした。
しかも、脱走兵は脱走兵で、ナチスの兵隊に発見されれば殺されたりする危険もあるわけで、主人公もそのくらい命懸けで逃亡します。
そんな脱走兵の主人公、たまたま事故に遭った車の中にあったナチスの将校の軍服を発見したことで、物語は意外な方向へ動いていきます。
最初はおそるおそる服を着てみた主人公ですが、たまたま出会ったナチスの兵隊から本物の将校だと思われたことをきっかけに、次々と色々な兵隊をだましてナチスの将校に成りすましていきます。
最初は気弱な脱走兵で殺されかけもしていたような主人公が、いざ偽物の権力を身に付けてしまうと、どんどん偉そうな態度になり、行動も横暴に、ついには暴力を発動して、ついには大量殺戮に至ってしまうというシーンは非常にショッキングでした。
戦争映画や暴力映画では、悪役はあくまで悪役として描かれることも多いし、最近では敵にも敵にも正義がある的な描き方をする映画も多いですが、ごくごく普通の人間が権力を手にしてしまったことでバンバン人を殺しまくる極悪人になっていく、という物語はかなりショッキングだったし、斬新だなと思いました。
主人公がもともとは普通の人間なだけに、自分も何かの間違いで身の丈に合わない権力を手にしてしまったら、同じように暴力的になってしまうかも知れないな…という恐怖がありました。
一言で言えば、戦争や権力は人を狂わせるって映画だと思っていて、戦争が人を狂わせる映画だと「野火」なんかを思い出したりしましたが、権力が人を狂わせる映画の中では今まで見た中で一番インパクトがありました。
途中まではすごく戦時中をリアルに描いているのですが、ラストシーンだけは現代の街並みに映画に登場する登場人物たちが現れて人々を襲っていく、というちょっと不思議な内容になっていたのも印象的で、こういう権力の暴走は現代でもあり得ることだというメッセージなのかなと思いました。
とは言え、将校に成りすますなんてそんなにうまくいくわけないよな…さすがに映画のための作り話だよな…と思っていたのですが、なんとこの映画、実話をもとにしているということで、ますます怖いなと思いました。