Nくんの切ない思い出の話と、新作書き下ろし短編。
一つ前の記事の続きです。
2/5(日)に友人Nに会った話。
一つ前の記事はこちら↓
「あの娘ぼくが芥川賞とったらどんな顔するだろう。」
これから書く話は、前に俺がNから聞いた話を元に書き下ろした短編を読まないと理解できないと思うので、読んでいない人は是非読んで下さい。
「あの時こうしていれば。あの日に戻れれば。あの頃の僕にはもう戻れないよ。」
読むのが面倒くさいという方は、今すぐ踊れ!!
読みたくなるまで踊れ!!
……
はい、一つ前の記事の、書き下ろし短編「彼女」、読みたくなってきましたか?
読みたくなったら、今すぐ読んで下さい。
……
はい、読みましたか?読みましたね?
それでは、続きをお楽しみ下さい。
…………
熊谷千尋 書き下ろし特別短編
『続・彼女 NEVER SAY GOODBYE』
僕が彼女について誰かに語る時、いつもついてしまう嘘がある。
彼女と最後に話した時のことだ。
その時、彼女とは一年以上も連絡をとっていなかった。
理由は単純、一年前、僕は彼女に振られたのだ。
それ以来、無意味に連絡を取るのはやめようと言い出したのは、僕の方だった。
だからこの時、彼女からの電話には正直動揺した。
そしてその電話の内容は、彼女が付き合っている相手との結婚が決まったということだった。
こんなことを僕が話すと、決まって聞いている人は必ずと言っていいほど、僕が相当ショックを受けたんだじゃないかと言ってくる。
でも僕は、いつもこう言い返す。
「いや、電話が来た時は正直びっくりしたけど、結婚するって聞いた時は思ったより冷静だったね」
すると決まって、話を聞いている人は少し驚いて、さらに聞いてくるのだ。
「えー、じゃあ彼女に何て言ったの?」
「そんなの、普通におめでとうって言ったよ」
そうすると、話を聞いた相手は決まって、「ふうん」などと興味なさそうに言って、それ以上話が続くことはない。
けれど、これは僕の嘘だ。
あの時、僕が彼女に対してかけた言葉は、もっと大人げなく、格好悪いものだった。
結婚が決まったという彼女に対して、僕は冷たく言い放ったのだ。
「もう連絡しなくていいって言ったよね。何でそんなことわざわざ俺に言ってくるの。そんなの俺に言ったってしょうがないじゃん」
すると彼女は「でも、これだけはちゃんと話しておきたいと思ったから」と、気まずそうに言った。
けれどそんな彼女に僕は「分かったよ。それじゃ」とだけ言い捨てて電話を切ってしまった。
それ以来、彼女とは一回も連絡を取っていない。
六年間に及ぶ片想いが成就しなかったことは後悔していない。
けれど、どうして僕はあの時、彼女に素直に「おめでとう」が言えなかったのだろう。
彼女との電話を切った、その三か月後、僕は仕事をやめた。
それから三年が経った。
さすがに今はもう彼女を想うことなんてなくなった。
けれど、あの最後の電話のことだけは、未だに悔やまれてならない。
そんなことを、僕は今日も思い出す。
日本から遠く離れた、ここロサンゼルスの地で。
つづく。
一つ前の記事の続きです。
2/5(日)に友人Nに会った話。
一つ前の記事はこちら↓
「あの娘ぼくが芥川賞とったらどんな顔するだろう。」
これから書く話は、前に俺がNから聞いた話を元に書き下ろした短編を読まないと理解できないと思うので、読んでいない人は是非読んで下さい。
「あの時こうしていれば。あの日に戻れれば。あの頃の僕にはもう戻れないよ。」
読むのが面倒くさいという方は、今すぐ踊れ!!
読みたくなるまで踊れ!!
……
はい、一つ前の記事の、書き下ろし短編「彼女」、読みたくなってきましたか?
読みたくなったら、今すぐ読んで下さい。
……
はい、読みましたか?読みましたね?
それでは、続きをお楽しみ下さい。
…………
熊谷千尋 書き下ろし特別短編
『続・彼女 NEVER SAY GOODBYE』
僕が彼女について誰かに語る時、いつもついてしまう嘘がある。
彼女と最後に話した時のことだ。
その時、彼女とは一年以上も連絡をとっていなかった。
理由は単純、一年前、僕は彼女に振られたのだ。
それ以来、無意味に連絡を取るのはやめようと言い出したのは、僕の方だった。
だからこの時、彼女からの電話には正直動揺した。
そしてその電話の内容は、彼女が付き合っている相手との結婚が決まったということだった。
こんなことを僕が話すと、決まって聞いている人は必ずと言っていいほど、僕が相当ショックを受けたんだじゃないかと言ってくる。
でも僕は、いつもこう言い返す。
「いや、電話が来た時は正直びっくりしたけど、結婚するって聞いた時は思ったより冷静だったね」
すると決まって、話を聞いている人は少し驚いて、さらに聞いてくるのだ。
「えー、じゃあ彼女に何て言ったの?」
「そんなの、普通におめでとうって言ったよ」
そうすると、話を聞いた相手は決まって、「ふうん」などと興味なさそうに言って、それ以上話が続くことはない。
けれど、これは僕の嘘だ。
あの時、僕が彼女に対してかけた言葉は、もっと大人げなく、格好悪いものだった。
結婚が決まったという彼女に対して、僕は冷たく言い放ったのだ。
「もう連絡しなくていいって言ったよね。何でそんなことわざわざ俺に言ってくるの。そんなの俺に言ったってしょうがないじゃん」
すると彼女は「でも、これだけはちゃんと話しておきたいと思ったから」と、気まずそうに言った。
けれどそんな彼女に僕は「分かったよ。それじゃ」とだけ言い捨てて電話を切ってしまった。
それ以来、彼女とは一回も連絡を取っていない。
六年間に及ぶ片想いが成就しなかったことは後悔していない。
けれど、どうして僕はあの時、彼女に素直に「おめでとう」が言えなかったのだろう。
彼女との電話を切った、その三か月後、僕は仕事をやめた。
それから三年が経った。
さすがに今はもう彼女を想うことなんてなくなった。
けれど、あの最後の電話のことだけは、未だに悔やまれてならない。
そんなことを、僕は今日も思い出す。
日本から遠く離れた、ここロサンゼルスの地で。
つづく。
それについてこうして思い返す、ってことはやっぱり未練があるのが伝わってくるし。
本当だよ。後悔ばかりの人生だよ。
失敗はしても後悔の無い人生を送りたいもんだよ。
せめて小説の中でくらいそこらへんスカッと解決させたいぜ。