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——自民党の政策パンフレッドに、アベノミクスの実績として「名目GDPが50兆円増えて、過去最高」って書いてあったけど、やっぱりアベノミクスって成功しているんじゃないの?
A: 普通の先進国は、その2倍成長しています。
安部政権が始まってからの5年間で、日本のGDP(国内総生産)は10%増えました。ただ同じ間に、アメリカもイギリスもドイツも20%増えています。中国に至っては、50%も増えています。
(※)各国通貨による名目GDPの、2012年と比べた2017年のGDP増加率。IMFのWorld Economic Outlook Databasesのデータを基に編集部で計算。
そもそも経済は、何もしなくてもある程度成長していくんです。それぞれの企業が、大きくなろうと努力をするからです。
男子中学生が「サプリメントの効果で、身長が1年で5ミリも伸びました。過去最高です」と周りに自慢したって、「他のクラスメイトはみんな1センチ伸びてますよ」という話です。背が伸びたことは評価するけれど、「サプリメントが効いた」とは言えないわけです。
日本が経済成長しているのは、「アベノミクスのお陰」というより、日本人が頑張って働いたからです。むしろ、「消費増税」という"成長抑制剤"を飲んだせいで、周りよりも、成長スピードが遅かった。そのことは、素直に残念だし、もったいないと思います。
——自民党は、「就業者数も185万人増加」とアピールしているけど。
A: 就業者が増えたことも喜ばしいけれど……これ実は、リーマンショック前の水準に戻っただけなんです。
リーマンショック前の2007年に比べると、増えた就業者数は28万人だけです(IMF統計より)。ちなみに28万人というと、今年の夏に富士山に登った人数が28万人らしいですよ。
——富士山……(笑)。アベノミクス、ぜんぜん効いてないじゃん。
A: もちろん、リーマンショック後の回復に一役買った面もありますし、そうはいっても28万人増えているので、「ぜんぜん効いていない」というつもりはないです。
ただ、「185万人増加」という数字は、それを割り引いて見るべきだとは思います。
——自民党の政策パンフレッドに、「正社員有効求人倍率 初の1倍越え」とも書いてあったけど、これはどうなの?
A: 求人が増えている理由は、景気がいいからではなく、「仕事を辞める人が多いから」です。
高齢化による退職者の増加で、この5年間の間に、労働力人口が5%近く減っています。だから企業は焦って求人しているのです。
「正社員有効求人倍率 初の1倍越え」は、安倍首相が「国難」と言っている「少子高齢化」の反映に過ぎないんです。
——「若者の就職内定率も過去最高」だとも書いてあったけど?
A: これも、少子高齢化の影響が大きいです。高齢化で「団塊の世代」が大量に退職する一方、少子化で若者の人数も減っています。企業が、どんどん内定を出したくなるわけです。
それなので、「アベノミクスの業績か」と言われると、やや疑問です。
2013年と比べた内定率の伸びも、「リーマンショックから、回復しただけ」という面が大きいです。自民党がアピールする内定率は97.6%ですが、リーマンショック前は96.9%あったんです。それが経済危機で大きく落ち込んで、回復してきていた。底を打ったのは、アベノミクスが始まる前でした。
——「企業収益が、過去最高で26.5兆円も増えた」っていうのは?
A: 企業の利益(経常利益)が増えたのは、景気がいいからではありません。
というのも、売り上げの方は、ぜんぜん増えていないんです。10年前の2007年に比べると、企業の売上は8%近くも減っています。
利益が増えたのは、「コストが下がった」など、様々な理由が言われています。いずれにせよ、売上が増えたからではありません。
——「家計の可処分所得が2年連続で増加」という数字もアピールされてたけど!?
本当の豊かさを測るために、物価の変動を差し引いた「実質可処分所得」という数値で見ると、1年しか増えていません。それも、0.4%だけ……。
それより、消費増税の直後に4%近く減ってしまっているので、0.4%だけ持ち直しても、家計は苦しいままです。
そもそも、物価の変動を考慮した賃金である「実質賃金」という数字は、下がり続けています。
——怪しいダイエット食品広告の数字には注意が必要だけど、自民党のアピールにも注意が必要だなぁ……。
(西原瑛秀/馬場光太郎)
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