北京軍事パレードから見えてくるもの【前編】[HRPニュースファイル1514]
http://hrp-newsfile.jp/2015/2438/
◆「平和」の陰に隠された「歴史戦」の刃
これまでの軍事パレードは、10月1日の国慶節といわれる毛沢東により建国が宣言されたという日に行われていましたが、戦後70周年の今年は、「対日戦勝記念日」である9月3日に、抗日戦争ならびに世界反ファシズム戦争の勝利をテーマにパレードが行われました。
中国外交部によれば、この軍事パレードで中国が発しているメッセージは平和であり、中国は世界平和と地域の安定を維持するために自らの貢献を果たすことを伝えたものとされています。これは表向きの目的でしょう。
また、特定の国、特に日本や日本人を対象としたものではないとのことですが、我々日本人や大東亜戦争での日本軍の功績を知っている国々が釈然としないのは当然です。
確かにパレードに参加した最新兵器は、対日本が主でないようですが、抗日戦勝利を記念する軍事パレードの基にある歴史認識は、当時の日本人と日本の歴史、戦後の日本の歩みを悪の権化とし、中国共産党の正当性を主張するものです。
また近年の日本政府が「右傾化」していると反日教育に加え、日本に対しより一層の反省とお詫びを求めていることからも、パレードの裏の目的は、中国共産党主導による「歴史戦」を優位に進めることであり、その矛先は確実に日本に向いています。
◆軍事パレードは国内に向けたメッセージ
現在進行形で中国共産党による反日歴史教育は行われており、熱心な父兄は、幼い子供に戦時中の惨殺死体の写真を見せて、「鬼子日本人」がやったことだと刷り込んでいるのを今回の視察で目の当たりにしました。
この軍事パレードは、平素より中国国内で行われている反日教育を基礎として、戦後70年という世界共通の節目を利用した人民の愛国心や中国共産党の求心力を高めるための催しものであったと言えます。
このパレードに人民の注目を集めるため、英雄的模範部隊という軍人の中にヒーローをつくって称え、女性儀じょう部隊には現役美人モデルを起用するなど、パレードを何とか活路としたい思惑が伺えました。
中国国内では1日平均500件以上のデモや暴動が起きているとされています。中国経済の低迷も加わり、このあたりに習体制の焦りが伺えます。
◆核ミサイルで米国をけん制
すでに多くの識者が指摘しているとおり、パレードに参加した兵器を見れば、米国を強く意識したものとなっています。
今回初めての試みとして、作戦体系に基づき装備隊列を組みパレードを行いました。国内の暴動鎮圧のための特殊車両から、戦車や各種ミサイル、尖閣諸島占領作戦を想定した海軍の水陸両用車、無人偵察機、最終的にはアメリカ合衆国全土を射程にとらえた核搭載大陸間弾道ミサイルなど、リアルタイムな情報ネットワークを駆使した最先端の組織的かつ広範囲にわたる戦闘ができることをアピールしました。
DF-21D「空母キラー」と言われる対艦弾道ミサイルの初展示により、人民解放軍がかねてより対米作戦として掲げていた、米軍をグアム島より西側に近づけない、いわゆる「A2AD作戦」が完成したことを示し、アメリカの全都市を核の標的にしたことにより、大国になったと自負しているものと思われます。
武力があれば何でもやっていいという「中国ルール」が今後ますます世界で猛威を振るいそうです。
次回は、中国共産党の2枚舌政策から日本がとるべき防衛政策を考えてゆきます。
文/HS政経塾3期卒塾生 幸福実現党・新潟県本部副代表 横井もとゆき