⦿廿世紀大発明 寫聲機平圓盤發賣
●曲譜大形 價壹圓七拾五銭以上御五圓迄 ●器械 價参拾六圓以上七拾五圓迄
軍隊用 { 観兵式奏楽、旅順港進軍、扇ノ的、月ト陣、黄海大捷外数十種
傷病兵士慰問用 { 義光武勇錦の旗、七生魂、北白川宮殿下臺灣行、外数十種
学校用 { 教育勅語、君ガ代及天長節、楠公櫻井駅、函根八里外数十種
家庭用 { 子寶、慈善、仙臺萩、金太郎、大江山、桃太郎、兎ト亀外数十種
祝宴用 { 高砂、鶴亀、老松、雛鶴三番叟、八千代獅子、外数十種
練習用 { 謡曲、唱歌、長唄、常磐津、義太夫、清元、草笛外数十種
平圓盤奏曲者
陸軍軍楽隊 寶生九郎 観世清康 杵屋六左衛門 芳村伊十郎 常磐津林中 吉水経和 橘知定 納所辨次郎 合田春悦 竹本相生太夫 清元 彌生太夫 長原 梅園社中 其他諸大家数十名
寫聲機平圓盤は米国の発明に係り紐育コロンビヤ会社は当初より此製作に従事し今日にては専売特許を有する所にして世界中最良無比の名声を博せり同会社は東洋に於ける一手販売を特に本堂に委嘱せられたり
本堂は黽勉励精以て大方諸君の尊意に満つべきを期し敢て ざるを信ずるなり
日本、清国、朝鮮一手販売元 東京市京橋区尾張町二丁目(電話新橋三三三、三一五三) 天賞堂
(出張所所在地) 東京市神田、横浜市、大阪市、広島市、長崎市、名古屋臨時、熊本臨時、小樽臨時
寫聲機平圓盤曲名一覧御希望の方は郵税貮錢封入御申越あれ
⦿無料贈呈(明治卅七年十一月増訂)天賞堂営業一覧(送費四銭)
上の広告文は、明治三十八年三月発行 の『新家庭』 第一巻第四号 の新家庭社 裏表紙にある。
なお、この号には、次の文も掲載されている。
〇寫聲機平圓盤
藤紫白君は、上中の新家庭に向く日用品を紹介してをらるゝが、私は同君の驥尾 しり に附いて、遥然 ずつ と風の変つた、極めて貴族的な、併しながら今後 これから 普及せらるべき家庭品を紹介しましやう。それは近頃貴族社会に持て囃されてゐる新輸入品寫聲機平圓盤であります。是は二十世紀の初頭 はじめ に、蓄音機発明者デインター氏及マクドナルド氏、電気発明者エジソン大博士、電話発明者ベル大博士等協同の上に成功した大発明で、常に娯楽を以て、生活の大要素なりとしてゐる米国の人士をして、驚嘆せしめた精神的慰楽の要具、日本に輸入 はつ つたのは僅に二三年前一一昨年でありますが、従来の不完全な、脆弱な蝋管の蓄音機に比べると、殆ど天地の相違で一度 ひとたび 聲を吹き込むと、むしろ吹きこんだ人間 ひと の聲よりも大きく、爾 さう して朗らかに聲が發 で る、一年位は、完全に、その聲は保つてゐるといふ不思議の発明品であるのです。一度天賞堂江澤氏の手で、我国へ輸入さるゝや、青山御所、高輪御殿、有栖川宮家を初め奉 たてま つり、大名華族の家庭に、逸早く歓迎せられ、今や悪習に充てる富豪の家庭にも迎へらるゝに至つた。加之 しかのみならず 、軍隊用、学校用、宴会用等にも用ゐられて、月一ト月に、彼の絃妓等の勢力を奪ひつゝあるのは、時運の然らしむるとはいへ、寔 まこ とに喜ばしき現象であります。代価大形は七十五圓、中形は四十八圓、小形は三十六圓ださうに聞いて居ります。なほ異日を期して、寫聲機に拘はる種々の逸話を記るして、精神的娯楽の奨励の用に充てようと思ひます。 (塔村)