るるの日記

なんでも書きます

源氏物語を読む「桐壺」困ったなりゆき、、、

2022-11-10 16:37:17 | 日記
■上達部、上人なども
あいなく
目をそばめつつ
いとまばゆき人の
御おぼえなり

唐土にも、かかる事起こりにこそ
世も乱れあしかりけれて
やうやう
天の下にも
あぢきなう人の
もてなやみぐさになりて
楊貴妃の例も引き出でつべくなりゆくに
いとはしたなきこと多かれど
かたじけなき御心ばへの
たぐひなき頼みにて
まじらひたまふ

父の大納言は亡くなりて
母北の方なむ、
いにしえの人の
よしあるにて
親うち具し
さしあたりて世のおぼえはなやかなる御方々にもいたう劣らず
何事の儀式をも
もてなしたまひけれど
取り立てて
はかばかしき後見し
なければ
事ある時は
なほよりどころなく
心細げなり

※上達部→公卿(三位以上の者)
※上人→殿上人(四位、五位の殿上を許された人と、六位蔵人)
※あいなく→困惑し不快
※目をそばめ→目をそむけ
※北の方→公卿・殿上人などの妻
寝殿造の北の対屋に住んだ
※いにしえの人→昔かたぎ
※よしあるにて→教養が身についた
※後見(うしろみ)し→後ろ楯として支援する者
「し」は強調



■上達部、殿上人なども、
困ったなりゆきだと思うが
正視にたえないほどの
ご寵愛ぶりである
唐土でも、こうしたことがもとになって、世の中が乱れひどいことになったのだと
しだいに世間でも、
おもしろからぬことだと
人々の厄介の種になって
楊貴妃の例まで引合いに出しかねないほどになっていく事態なので、
更衣はまことにいたたたまれない思いのすることだけれども
畏れ多い帝の、御寵愛の
またとないことにおすがりして
宮仕えをしていらっしゃる

更衣の父、大納言は亡くなり
母の北の方というのは
昔かたぎで、
教養が身についた人であったので
両親がそろって、いまのところ華やかな方々にもひけをとらぬように
どのような宮中の儀式をも処してきたけれど
格別にしっかりした後ろ楯はなく
何かあらたまった事がある時には
やはり頼るあてもなく
心細気な様子である