るるの日記

なんでも書きます

もののあはれ・源氏物語「男の浮気には女が忍従することが、お互いの不幸を救う道」

2022-11-21 09:29:25 | 日記
♦️破局の一因は、女の型どおりの忍従による
女の聡明さは、自然な人間性に、適度な知的規制を加えることにある
同時に男性は必ずしもそういう完璧な女性の愛にこたえるとも限らない
やはり結局は女が忍従することが、お互いの不幸を救う道だという結論になる
左馬頭、中将、光源氏らの男ばかりの議論であるが、左馬頭、中将はむきになり、光源氏は無関心と対照的

左馬頭
「すべて、よろづのこと、なだらかに、
怨ずべきことをば、
見知れるさまにほのめかし
恨むべからむふしをも
憎からずかすめなさば
それにつけて
あはれもまさりぬべし
多くはわが心も
見る人からおさまりもすべし

あまりむげにうちゆるべ、
見放ちたるも、
心やすくらうたきやうなれど、
おのづからかろきかたにぞおぼえはべるかし
繋がぬ舟の浮きたるためしも
げにあやなし。さははべらぬか」

と言へば、中将うなづく
中将
「さし当たりて、おかしともあはれとも心に入らむ人の、頼もしげなき疑ひあらむこそ大事なるべけれ
わが心あやまちなくて、見過ぐさば、さし直してもなどか見ざらむ
とおぼえたれど、それさしもあらじ
ともかくも、違ふべきふしあらむを、のどやかに見しのばむよりほかに、ますことあるまじかりけり」
と言ひて、わが妹の姫君は
この定めにかなひたまへりと思へば
君のうちねぶりて、言葉まぜたまはぬを、さうざうしく心やまし
と思ふ

★わが心
夫の浮気心
文の視点が、男の立場と女の立場とで揺れている

★頼もしげなき疑ひ
男の男女関係について信頼できそうにない疑念

★君のうちねぶりて
光源氏は具合の悪い話題なので寝たふりをしている


■総じて、何事も、穏やかにして
男が自分に恨み言を言いたくなることに気づいているように、態度でほのめかし、
恨むのは当然な点も、嫌みに聞こえない程度に、それとなく言うならば、それによって男の愛情も増すでしょう
たいていの場合、男の浮気心も
妻しだいで収まりもするでしょう

しかし度を越してむやみに寛大に
男を放任しているのも
気楽でかわいい女ですが
自然と扱いやすい女と思われます
『つないでおかない舟が、どう動き出すか、わからないようなものだ』
という例も確かにいけません
そうではございませんか?」
と左馬頭は言うと
中将はうなづく

「『いとおしい』と思って気に入っている男が、女性関係では頼りにならないという疑念があるなら大変な事ですね。
女の心構えが完璧で、男の浮気を知りつつ我慢して過ごせば、そのうちに男は心を改めて接してくれると、思っていたけれど、それは必ずしもそうとは限らないですね
ともかく、仲違いしそうな場合は、それを気長に見ながら我慢する以外によい方法はないですね」

と中将は言って
自分の妹はこの「気長に我慢する」という定めにかなっていると思っていたが、友人であり妹の夫の光源氏が居眠りをして、言葉を挟まないので、じれったく思った





もののあはれ・源氏物語「『浮気はしても大切』という男心を理解すべし」

2022-11-21 08:02:29 | 日記
■また、
なのめにうつろふ方あらむ人を
恨みて、気色ばみ背かん、
はたおこがましかりなん、
心はうつろふ方ありとも、
見そめし心ざし、いとほしく思はば
さる方のよすがに、思ひてもありぬべきに、さやうならむたじろきに
絶えぬべきわざなり

★なのめにうつろふ
ちょっとした浮気

★見そめしき心ざし
結婚当初の夫の気持ち

★さる方のよすがに思ひてあり
情愛を深く感じて結婚したという、深い縁がつながっている夫婦

■また、夫がちょっとし浮気でもしようものなら、それを恨み、むきになって、仲違いするとしたら、それもバカげたことです

男の気持ちが妻からそれて、ほかの女に移ったといっても、男はずっと結婚当初の妻への愛情を大切なものと位置づけていて、深い縁のある妻だと思っているにちがいないのに、そんないざこざが元で、縁が切れてしまうものなのです

もののあはれ・源氏物語「出家を決意するタイプは、独善的で感情的なメンヘラ気質」

2022-11-21 07:34:40 | 日記
♦️ずっと我慢し従い、その果てに出家を決意するタイプの女は、一見同情に値するにみえて、実は、独善的・感情的な愚行である場合が多い

■童にはべりし時、
女房などの物語読みしを聞きて、
いとあはれに、悲しく、心深きことかなと、涙をさへなん落しはべりし

今思ふには、いとかるがるしくことさらびたることなり
心ざし深からん男をおきて
見る目の前につらきことありとも
人の心を見知らぬやうに逃げ隠れて
人をまどはし心を見んとするほどに
永き世のもの思ひになる
いとあぢきなきことなり

人々『心深しや』などとほめたてられて、あはれ進みぬれば
やがて尼になりぬかし
思ひ立つほどはいと心清めるやうにて、世にかへりみすべくも思へらず

人々『いで、あな悲し、かくはた思しなりにけるよ』などやうに、あひ知れる人、来とぶらひ、
ひたすらにうしとも思ひ離れぬ男、聞きつけて涙落せば、使ふ人、古御達など、『君の御心はあはれなりけるものを、あたら御身を』など言ふ

みつから額髪をかきさぐりて
あへなく心細ければ
うちひそみぬかし

忍ぶれど涙こぼれそめぬれば
おりおりごとにえ念じえず
くやしきこと多かめるに
仏もなかなか心ぎたなしと
見たまひつべし
濁りにしめるほどよりも
なま浮かびにては
かへりて悪しき道にも漂ひぬべくぞおぼゆる

絶え宿世浅からで
尼にもなさで尋ね取りたらんも
やがてその思ひ、出でうらめしきふしあらざらんや

あしくもよくも、あひ添ひて
とあらむおりもかからんきざみをも
見過ぐしたらん仲こそ
契り深くあはれならめ
我も人もうしろめたく
心おかれじやは

★心深きことかなと
女が夫のつれなさに耐えていたことに重点をおいて、女に同情したという

★今思ふには、いとかるがるしくことさらびたることなり
今成長した目で思うと、女の行為は軽率でわざとらしい
無意識であろうが、夫の心を傷つけ困らせる身勝手な浅慮として、それを批判的に思うようになった

★目の前につらきことありとも
つらさの原因は相手にあって、つらく感じること
夫の浮気などで苦しむ

★永き世のもの思い
完全に夫婦離別することからのもの思い

★あちきなき
気にくわない

★かへりみすべくも
振り返る

★ひたすらにうしとも思ひ離れぬ男
女の方でも男にまだ未練がある

★古御達
年配の女房たち

★あへなく心細ければ
がっくりした気持ち

★ひそみぬかし
泣き顔になるさま

★なかなか
俗人でいるよりも、尼姿であるだけにかえって

★濁り
現世を五濁悪世(ごじょくあくせ)という

★なま浮かび
中途半端な悟り、形だけの出家

★絶えぬ宿世
男女が結ばれるか否かは前世からの因縁。それはまだ続いている

★尼にもなさで尋ね取りたらん
出家を志ざし、鳴滝へ参籠し、夫兼家によって連れ戻されてからは「雨蛙(尼帰る)とからかわれた、、」という物語を念頭においているが、辛辣な表現だ

★出でうらめしきふし
夫婦の間のしっくりいかぬところ

★我も人もうしろめたく
家出騒ぎなど起こした後の状態

■その女がまだ子供だった頃に
召使の女などが物語を読むのを聞いて、ひどく心を打たれて悲しく思い、「思慮深いことよ」と、物語のなかの、夫に浮気された女に同情し、涙を落としたものでした

今思うとまったく軽薄でわざとらしい。愛情の深い男を置き去りにし、たとえ当面、浮気されて恨めしいことがあるとしても、男の気持ちがわからぬかのように逃げ隠れして、男をうろうろさせ、男の気持ちを試そうとしているうちに、夫婦離別の思いをするのは、じつにつまらないことです

女は、『心深しや』などと、他人からほめたてられ、感情が高ぶり、そのまま尼になってしまうのですよ
思いたった当初は、実に悟りすましたかんじで、俗世を振り返ろうなどとは思ってはいないようでした

『ああ悲しい、そんなにまで決心されたのですね』などと、知り合いの人が来て見舞ったり、(実は女の方もまだ未練のある浮気した)男が、それを聞いて涙を落とすと、女の召使たちは男に
『あの方はあなたに対して情愛深い気持ちでいらっしゃったのに、惜しいことに出家なさいました』などと言う

女は自分で切り落とした後の髪を手でさぐってみて、がっくりし、心細く、ついに泣きべそをかいてしまった
はじめは我慢してはいたけれど、一度涙がこぼれはじめると、今は折々に我慢しきれず後悔することが多いようで、仏も、俗人であるならばまだしも、出家した尼姿であるだけにかえって根性が汚いと御覧になるに違いありません
俗人で濁りに染まっている間よりも、中途半端な悟りでは、かえって悪道にさ迷うに違いありません

切っても切れない宿縁が深く、
尼にならぬうちに探して連れ戻したとしたなら、、その時のことが後まで恨みを残さないものでしょうか?
よくも悪くも連れそって、どんな場合があろうとも、我慢していく夫婦仲こそ宿縁が深く、情も豊かでしょうが、家出騒ぎを起こした後では、自分も相手もしこりが残ってうしろめたく、気がねせずにいられようか

つづく