♦️破局の一因は、女の型どおりの忍従による
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女の聡明さは、自然な人間性に、適度な知的規制を加えることにある
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同時に男性は必ずしもそういう完璧な女性の愛にこたえるとも限らない
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やはり結局は女が忍従することが、お互いの不幸を救う道だという結論になる
左馬頭、中将、光源氏らの男ばかりの議論であるが、左馬頭、中将はむきになり、光源氏は無関心と対照的
「すべて、よろづのこと、なだらかに、
怨ずべきことをば、
見知れるさまにほのめかし
恨むべからむふしをも
憎からずかすめなさば
それにつけて
あはれもまさりぬべし
多くはわが心も
見る人からおさまりもすべし
あまりむげにうちゆるべ、
見放ちたるも、
心やすくらうたきやうなれど、
おのづからかろきかたにぞおぼえはべるかし
繋がぬ舟の浮きたるためしも
げにあやなし。さははべらぬか」
と言へば、中将うなづく
中将
「さし当たりて、おかしともあはれとも心に入らむ人の、頼もしげなき疑ひあらむこそ大事なるべけれ
わが心あやまちなくて、見過ぐさば、さし直してもなどか見ざらむ
とおぼえたれど、それさしもあらじ
ともかくも、違ふべきふしあらむを、のどやかに見しのばむよりほかに、ますことあるまじかりけり」
と言ひて、わが妹の姫君は
この定めにかなひたまへりと思へば
君のうちねぶりて、言葉まぜたまはぬを、さうざうしく心やまし
と思ふ
★わが心
夫の浮気心
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文の視点が、男の立場と女の立場とで揺れている
★頼もしげなき疑ひ
男の男女関係について信頼できそうにない疑念
★君のうちねぶりて
光源氏は具合の悪い話題なので寝たふりをしている
■総じて、何事も、穏やかにして
男が自分に恨み言を言いたくなることに気づいているように、態度でほのめかし、
恨むのは当然な点も、嫌みに聞こえない程度に、それとなく言うならば、それによって男の愛情も増すでしょう
たいていの場合、男の浮気心も
妻しだいで収まりもするでしょう
しかし度を越してむやみに寛大に
男を放任しているのも
気楽でかわいい女ですが
自然と扱いやすい女と思われます
『つないでおかない舟が、どう動き出すか、わからないようなものだ』
という例も確かにいけません
そうではございませんか?」
と左馬頭は言うと
中将はうなづく
「『いとおしい』と思って気に入っている男が、女性関係では頼りにならないという疑念があるなら大変な事ですね。
女の心構えが完璧で、男の浮気を知りつつ我慢して過ごせば、そのうちに男は心を改めて接してくれると、思っていたけれど、それは必ずしもそうとは限らないですね
ともかく、仲違いしそうな場合は、それを気長に見ながら我慢する以外によい方法はないですね」
と中将は言って
自分の妹はこの「気長に我慢する」という定めにかなっていると思っていたが、友人であり妹の夫の光源氏が居眠りをして、言葉を挟まないので、じれったく思った