るるの日記

なんでも書きます

もののあはれ・源氏物語「平安時代と現在のメンヘラかまってちゃん気質は等しかった」

2022-11-20 15:44:39 | 日記
左馬頭
「今はただ品にもよらじ
容貌をばさらにも言わじ
いと口惜しく、ねちけがましき、
おぼえだになくは
ただひとへにものまめやかに
静かなる心のおもむきならむよるべをぞ、つひの頼みどころには、思ひおくべかりける

あまりのゆえよし心ばせうち添へたらむをば、よろこびに思ひ
すこし後れたる方あらむをも
あながちに求め加へじ

うしろやすくのどけきところだに強くは、うはべの情はおのづからもてつけつべきわざをや

艶にもの恥して、恨み言ふべきことをも、見知らぬさまに忍びて、
上はつれなくみさをづくり
心ひとつに思ひあまる時は
言はん方なくすごき言の葉
あはれなる歌を詠みおき
しのばるべき形見をとどめて
深き山里、世離れたる海づらなどに
這ひ隠れぬるおりかし」

★うしろやすく
今見えない将来が安心
夫として妻の言動にいちいち気をつかわずにすむ

★のどけきところ
嫉妬しない

★艶に
恋愛的気分

★みさをづくり
ある気持ちを固く守り変えない

★すごき言の葉
深刻な恨み言

★しのばるべき形見をとどめて
男から思い出してもらえそうな形見の品を残す
わざとらしく嫌味な所業

「今はもう、家柄にもよらない
容貌のことはまして言わない
まったく情けないと思うほど
ひねくれた感じさえなければ
ただ一途に真面目で、落ち着いた性格の女こそ、生涯の頼みどころと考えておくのがよいですね

それ以上の優れた資質や気立ての良さが加わっているならば、それを喜びと思い、すこし不十分なところがあっても、むやみに要求を加えますまい

素行に不安がなく、嫉妬しない性質さえ確かならば、表面的な風情は自然と徐々に身につきますからね

ところが
なかには、何かにつけて気分をそぐように恋愛気分を恥ずかしがったり、恨み言を言ってもよい場面でも知らぬふりで我慢して、何気ない風によそおい、いよいよ自分の胸一つに収めきれなくなると、言いようのない深刻な恨み言や、哀れな歌を詠んで残しておき、思い出してもらえそうな形見の品を残して、深い山里や辺鄙な海辺など、人目につかぬよう身を隠してしまう女がいます

つづく


もののあはれ・源氏物語「出来上がった女がいいか?型の出来ていない女がいいか?結論出ず」

2022-11-20 14:56:52 | 日記
左馬頭
「事が中に、なのめなるまじき人の
後見の方は、もののあはれ知りすぐし、はかなきついでの情あり、
おかしきにすすめる方なくてもよかるべしと見えたるに、

またまめまめしき筋を立てて、
耳はさみがちに
美相なき家刀自の、ひとへにうちとけたる後見ばかりをして、
朝夕の出で入りにつけても、おほやけわたくしの人のたたずまひ、よきあしきことの、目にも耳にもとまるありさまを、うとき人にわざとうちまねばんやは、近くて見ん人の聞きわき思ひ知るべからむに、語りもあせばやと、うちも笑まれ、涙もさしぐみ、もしは、あやなきおほやけ腹立たしく、心ひとつに思ひあまることなど多かるを、何にかは、聞かせむと思へば、うち背かれて、人知れぬ思ひ出笑ひもせられ、あはれとも、うちひとりごたるるに、何ごとぞなど、
あはつかにさし仰ぎいたらむは、いかが口惜しからぬ

ただひたぶるに児めきて柔かならむ人を、とかくひきつくろひては、
などか見ざらん
こころもとなくとも、直しどころある心地すべし。げに、さし向ひて見むほどは、さても、らうたき方に罪ゆるし見るべきを、立ち離れて
さるべきことも言ひやり、おりふしにし出でむわざの、あだ事にもまめ事にも、わが心と思ひ得ることなく、深きいたりなからむは、いと口惜しく、頼もしげなき咎やなほ苦しからむ

常はすこしそばそばしく、心づきなき人の、おりふしにつけて出でばえするやうもありかし」
など、隈なきもの言ひも、定めかねて、いたくうち嘆く

★もののあはれ知りすぐし
必要以上に情趣を解することを見せようとして

★はかなきついでの情あり
何かといえばすぐ歌を詠むこと

★耳さはみがちにし
頭髪が頭にかかるのを嫌って、両耳にはさんで後ろへやり、耳が露出した姿
家事にいそしみなりふりかまわぬ姿

★美相なき家刀自(とうじ)
美を問題にしない主婦

★朝夕の出で入り
朝の出勤、夕の帰宅

★見る
夫婦として暮らす

★うちも笑まれ
思い出し笑い

★あやなき
道理に合わずむやみやたら

★おほやけ腹立たしく
直接自分に利害関係がないのに腹立たしい

★何にかは、聞かせむと
どうして聞かせることがあろうか

★うち背かれて
つい、背かれて

★人知れぬ思ひ
口に出しても人に言うわけにはいかない思い

★ただひたぶるに児めきて、柔かならむ人
まだ型のできていない女

★さても
そのままでも

★あだ事にもまめ事にも
たわいもない慰め事、娯楽・趣味方面のこと

★そばそばしく
そば→角
することに角があって親しみにくい

★出でばえ
人前に出て見映えがする

■左馬頭
「主婦の仕事の中の、何よりも大切な夫の世話は、必要以上に情趣を解することを見せようとして、ちょっとしたことで歌を詠むなど風情をきかすような、趣味方面に力を入れることは、なくてもよいと思いますが

かといってまた、実直一点張り方針で、美しさのかけらもない世話女房型で、ただひたすら見映え抜きの世話ばかりして、

夫は朝夕の出勤、退勤についてや、公私のそれぞれの人の振舞や、
良しにつけ、悪しきにつけ見たり聞いたりする有様を、親しくもない他人にわざわざ話して聞かせることはできないから、そばにいる妻がそれを聞いて理解してくれる人なら、話してみたいと思いながら、、
結局、一人思いだし笑いをしたり、涙ぐんだり、もしくは自分には関係ないことに義憤をおぼえたりと、自分一人では思案に余ることが多いのですが、
妻に聞かせたところで何になろうかと、ついそっぽを向いて
口に出して人に言えないことを思い出して、思いだし笑いがうかんだり、『ああ~』などと、独り言も出るものですから、そのとき妻が『何事ですの?』などと私を見上げている、、それを残念だと思わずにいられますか?

ただもう一途に子供っぽく、素直な女であったら、そういう人を何かと足らぬ所を補って、妻とすることでもいい
頼りなくても、仕込みがいがあるという気持ちがするでしょうなあ

確かに差し向かいで近くにいる間は、頼りないままでも、かわいらしいということに免じて見ていられるでしょうが、そばについていない場合は必要なことを言っておいたり、何かの折々に出ていって尻拭いしたり、趣味的なとや、実用的なこと、どちらであっても一人で判断を下すことができず、行き届いた思慮がないのは、まことに情けなく、頼りないという欠点がやはり困りものになるなあ

普段は少しつんとしていて
気にくわない女が、何かの折に
やることが意外に見映えがする
ということめあるし、、」

などと、世の隅々まで知る論客も、結論を出せずに、大きいため息をついている


もののあはれ・源氏物語「女らしい女は情愛にこだわりすぎ、機嫌をとるとたちまち色めかしくなる」

2022-11-20 13:18:26 | 日記
■(左馬頭)されど、なにか、世のありさまを見たまへ集むるままに、心におよばず、いとゆかしきこともなしや
君達の上なき御選びには、まして、
いかばかりの人かはたぐひたまはん

容貌きたなげなく
若やかなるほどの
おのがじしは
塵もつかじと身をもてなし
文を書けど
おほどかに言選りをし
墨つきのほのかに
こころもとなく思はせつつ
またさやかにも見てしがなと
すべなく待たせ
わづかなる声聞くばかり言ひ寄れど
息の下にひき入れ
言ずくななるが
いとよくもて隠すなりけり
なよびかに女しと見れば
あまり情にひきこめられて
とりなせば、あだめく
これをはじめの難とすべし

★塵もつかじと
ちょっとしたケチもつけられない

★おほどかに言選りをし
詳しく具体的に書かず心中を明らかにしない。気取った書き方

★墨つきほのかに
微妙に断続する筆跡

★すべなく待たせ
待たされる人が、どうしようもなく苦しいと感じるほど待たせる

★息の下に
か細い声

★女し
女らしい

★情にひきこめられて
愛情の有無にこだわりすぎて

★とりなせば
機嫌をとり、調子を合わせる

★難
「右の難は殊によくあるもの故に
女はまずこれをつつしむべきことぞ」(玉の小櫛より)

■左馬頭「しかしどうですかなあ
夫婦仲の実態をいろいろ見るにつれて、及びもつかぬほどいいだろうなあと思われるものはありませんね
若様たちの最上の方をというお選びには、どれほどの女性がお似合いでしょう

顔は美しく
若々しく
おのおのの女性が
ケチをつけられぬよう
普段から振舞に気をつけ
手紙を書くにも
おっとりした言葉を選び
墨色もほんのりと
心中のはっきり書かず相手に気をもませ、今度こそはっきりした返事がほしいと、たまらなくなるほど待たせ
やっと一言二言声を聞けるまでに言い寄ってみても、かぼそい声を途中でのんで、言葉少ななのが
たいへん上手に難を隠す
もの柔らかで、いかにも女らしいと思う女は、とかく情愛というものにこだわりすぎますし、機嫌をとると、たちまち色めかしくなる
これをまず女の難といいます


もののあはれ・源氏物語「浮気女は簡単に選べるが、妻一人選びは困難」

2022-11-20 12:34:49 | 日記
さまざまの人の上どもを
語りあはせつつ

左馬頭
「おほかたの世につけてみるには咎なきも、わがものとうち頼むべきを選らんに、多かる中にもえなん思ひ定むまじかりける

男の朝廷(おほやけ)に仕うまつり、はかはがしき世のかためとなるべきも、まことの器ものとなるべきを取り出ださむにはかたかるべしかし
されど、かしこしとても、
一人二人世の中をまつりごちしるべきならねば、上は下に助けられ
下は上になびきて
事ひろきにゆづらふらん

狭き家の内のあるじとすべき人ひとりを思ひめぐらすに、足らはであしかるべき大事どもなむかたがた多かる
とあればかかり、あふさきるさにて、なのめにさてもありぬべき人の少なきを、すきずきしき心のすさびにて、人のありさまをあまた見合はせむの好みならねど、ひとへに思ひ定むべきよるべとすばかりに
同じくはわが力いりをし
直しひきつくろふべきところなく
心にかなふやうにもやと
選りそめつる人の定まりがたきなるべし
かならずしもわが思ふにかなはねど、見そめつる契りばかりを捨てがたく思ひとまる人はものまめやかなりと見え、さてたもたるる女のためも、心にくく推しはからるるなり」

★わがものとうち頼むべきを
生涯のわが妻と頼んでしかるべき女性

★世のかため
国家の柱石
国の中をしっかり守っていく人

★まつりごちしるべき
政治をし統治する

★ゆづらふらん
融通したり分担して都合していくのだろう

★狭き家の内あるじ
一家の主婦
狭き→私事

★とあればかかり、あふさきるさにて、
一方がよければ他方が悪く、事がうまくかみあわない状態

★なのめにさてもありぬべき人
不十分ながらそのままでもよさそうな人

★すさびにて
心の進むままに事を行う

★力入り
努力

■さまざまの人のことについて
次々と話し合っているうちに
左馬頭
「通りいっぺんの女性関係としてつきあっている分には欠点がない人でも、いざ、わが妻として頼りにできる人を選ぼうとする場合になると
たくたんの女の中でも、なかなかこの人と決めかねるものです

男が、朝廷に仕えて、世の柱石となるような人材を選ぶ場合も、まことの大器をもつ人材を取り出すのは難しい
しかし、いくら賢くても、一人や二人で世の中を治めてゆけるものではなく、上の者は下の者に助けられ
下の者は上の者に服従して、多方面の仕事であるため、お互い融通をつけあっていくだろう

ところが、狭い家庭内の主婦一人をについて考えてみると、不十分では困る大事な資格がいろんな面で多く必要だし、
こちらが良ければあちらが立たずで、事がうまくかみあわない状態も多く、不十分ながらもそのまま、なんとかやっていけそうな人は少ないものです

浮気心にまかせて、女の有様をあれこれ見比べようというような面白半分からではなく、
一人の生涯の女を決めるだけのために、同じように女の有様をあれこれ見比べることに努力して、直したり手をかけたりするような欠点がない女を、自分が一目で気に入ることにならぬものかと、選びはじめるが、なかなか決まらぬものです

必ずしも自分の希望どおりの女ではなかったが、夫婦となった因縁だけを捨てかねて、別れずにいる男は、誠実に見え、捨てられないでいる女も奥ゆかしい人柄だろうと推測されるものです」





もののあはれ・源氏物語「想定外の誘惑」

2022-11-20 11:00:31 | 日記
■左馬頭
「もとの品、時世のおぼえうち合ひやむごとなきあたりの
内々のもてなしけはひ後れたらむは
さらにも言はず
何をしてかく生ひ出でけむと
言ふかひなくおぼゆべし

うち合ひてすぐれたらむもことわり
これこそはさるべきこととおぼえて
めづらかなることと心も驚くまじ

なにがしか及ぶべきほどならねば
上が上はうちおきはべりぬ

さて世にありと、人に知られず
さびしくあはれたらむ葎の門に
思ひの外にらうたげならん人の
閉じられたらんこそ
限りなくめづらしくはおぼえめ
いかで、はたかかりけむと
思ふより違へることなん
あやしく心とまるわざなる

父の年老いものむつかしげにふとりすぎ、兄の顔にくげに、思ひやりことなることなき閨の内に
いといたく思ひあがり
はかなくし出でたることわざも
ゆえなからず見えたらむ
片かどにても、いかが思ひの外に
おかしからざらむ

すぐれて疵なき方の選びにこそ及ばざらめ、さる方にて捨てがたきものをば」

とて、式部を見やれば、わが妹どものよろしき聞こえあるを思ひてのたまふにやとや心得らむ、ものも言はず

「いでや、上の品と思ふにだにかたげなる世を」と君は思すべし

白き御衣どものなよよかなるに
直衣ばかりをしどけなく着なしたまひて、紐などもうち捨てて、添ひ臥したまへる
御灯影いとめでたく、女にて見たてまつらまほし
この御ためには上が上を選り出でても、なほあくまじく見えたまふ

★なにがしが及ぶべきほどならば
わたしごとき者

★上が上はうちおきはべりぬ
上が上は→上流貴族
を前にして、上流の中の者が、上流の女性に対する意見をのべることをはばかった

★思ひやり
よそのことを想像する

★閨
女性の寝室
父や兄の容姿から想像すると、美しい女のいるはずのない部屋

★はかなくし出でたる
(とくに価値のある芸事でもなく)いつのまにか身に付いた程度の

★ことわざ
芸事

★さる方にて
それなりの女として

★ものも言はず
(ここで式部があいづちを打つことは、自ら愚かしさを認めることになるから)返事をしない
よくある一こま

★いでや
「さあ、どうだろう」と疑念をあらわす

★上の品と思ふにだにかたげなる世を
光源氏が妻の葵の上を思い出している

★白き御衣
下着、何枚も重ね着する

★直衣ばかりを
袴をつけないでいること

★添い臥す
よりそって横になる

★女にて見たて
光源氏を女性にして
光源氏は女性的な美しさであり、それは当時のイケメンである

■左馬頭
「もともとの家柄と、世間の信望が一致している高貴な家柄の女性なのに、家庭内での振舞や感じが劣っているような女は、今さら言うまでもないんですが、『どうしてこんなふうに育ったのか』と、口にするほどのとりえもないほどに、まったくガッカリさせられます

家柄や信望にふさわしく、人柄がすぐれているのは当然のことで、そうなるのが当たり前で、珍しいことだと驚くこともありません
、、、
私のような者が、そうゆう上の上の上流の女性に対して意見を述べることは、もうこれでやめておきます

さて、上流暮らしていると、
誰にも知られず、葎の茂る寂しい荒れ崩れた家の中に、思いの外にかわいい女が引き籠っているというのを知ったときには、それこそとても珍しく感じるでしょう
「どうしてまたこうゆうことになったのだろうか」と
想定外の出来事に人は、不思議なほど惹き付けられるのです

父親は老人で、ぶざまに太りすぎ
兄は憎たらしい顔つきをしていて
そのような父と兄の容姿から想像すると、美しい娘がいるはずのない女の部屋に、とても美しく、高い気品を持つ女がいて、その女が特別価値のある芸事でなく、いつの間にか身につけた程度の芸事であっても、その芸事は由緒があるようにみえる
こういう場合、それがほんのわずかな才能であっても、予想外に興味を感じてしまいます

ずばぬけていて、欠点のない女を選ぶのには及ばないかもしれませんが、それはそれなりの女として、捨てがたいものですよ」

と言って、式部丞の方に目をやると、式部丞は「左馬頭は、私の妹たちがかなり評判いいのを思って、それで左馬頭はこのように言うのだ」と受けとめたのか、ものも言わない

光源氏は妻の葵の上を思いだしながら「さあ、どうだろう。上の品と思われる人々さえ、すばらしい女は、なかなかいない世の中なのに、、」と考えていた

光源氏は、白い下着の直衣だけを重ね着し、袴ははかず、紐も結ばないままで、物に寄りかかっている。
その灯影の姿は本当に素晴らしく、女にして拝見したいものだ。
だから、この方のために上の上の女を選び出しても、なお満足ということはないように見える
光源氏の容貌に並ぶ女はいそうにないから、、、