るるの日記

なんでも書きます

もののあはれ・源氏物語「指喰い女『男の傲慢さによる詭弁』」

2022-11-24 07:16:11 | 日記
そのかみ思ひはべりしやう、
『かうあながちに、従ひ怖ぢたる人なめり。いかで、懲るばかりのわざして、おどして、この方もすこしよろしくもなり、さがなさもやめむ』

と思ひて、まことにうしなども思ひて、絶えぬべき気色ならば、
かばかり我に従ふ心ならば、
思ひ懲りなむと思ひたまへて、
ことさらに情なくつれなきさまを見せて、例の、腹立ち怨ずるに

『かくおぞましくは、いみじき契り深くとも、絶えてまた見じ
限りと思はば、かくわりなきもの疑ひはせよ
行く先長く見えむと思はば、
つらきことありとも念じて、
なのめに思ひなりて、
かかる心だに失せなば、
いとあはれと、なん思ふべき
人なみなみにもなり、
すこし大人びんに添へても、
また並ぶ人なくあるべき』

やうなど、
かしこく教へたつるかなと思ひたまへて、われたけく言ひそしはべるに、少しうち笑ひて、、

★さがなさ
性質の悪さ
口やかましく嫉妬する癖

★気色
そぶり

★おぞましく
性格が強く激しい、強情、勝ち気

★絶えてまた見じ
もう二度と逢うまい
(男のおもいあがった語調)

★わりなき
道理のない

★見えむ
連れ添ってほしい

★つらきこと
冷たい仕打ち

★思ひなりて
努めて思うようにする

★並ぶ人なくあるべき
正妻

■その当時思ったことは
『この女は、こうしてむやみに私に従順で、びくびくしている女らしい。
何とかして、女が懲りごりするほどの事をして、驚かして、この女の嫉妬心を少しはましになるようにし、悪い性質も無くしてやろう!』
と思って
本当に縁が切れてしまいかねないそぶりを見せれば、これほどまでに私に従順な女なのだから、きっと懲りるだろうと思い、ひどく薄情でつれない様子を見せたところ、女は例によって腹を立てて、嫉妬するので、その時私は

『こんなに気が強くては、たとえ夫婦の縁が深くとも、もうこれからは二度と逢うまい

これきりで別れるつもりなら、こういう滅茶苦茶な邪推もするがいい。
もし。行く末長く連れ添うつもりなら、辛いことがあっても我慢して、いいかげんにあきらめて、
こんな嫉妬心さえ捨ててくれれば、芯から愛しく思うだろう

そうすれば私も人並みに少しは一人前になるだろう、そうなればおまえと肩を並べる女はなくなるというものだ』
などと、我ながらうまく教えてやったもんだと思いながら、しゃべりたてますと、、、
女は薄笑いして、、、

つづく


もののあはれ・源氏物語「指喰い女『努力してもけっして無くならない嫉妬心』」

2022-11-24 06:18:23 | 日記
この女のあるやう、
もとより思ひいたらざるけることにも、いかでこの人のためにはと、なき手を出だし、後れたる筋の心をも、なほ口惜しくは見えじと思ひ励みつつ、とにかくにつけて、ものまめやかに後見、つゆにても心に違ふことはなくもがなと思へりしほどに、すすめる方と思ひしかど、とかくになびきて、なよびゆき、醜き容赦をも、この人に見や疎まれんと、わりなく思ひつくろひ、疎き人に見えば面伏せにや思はんと、憚り恥ぢて、みさをにもてつけて、見馴るるままに、心もけしうはあらずはべりしかど、ただこの憎き方ひとつなん心をさめずはべりし

★なき手を出だし
手→手段
手段がなさそうな時でも工夫して

★見えじ
見られまい

★すすめる方
進む→強い
気の強い方

★みさをにもつけて
志を守ることを自ら努めて

■この女のやり方は、
女が不得意なことにも
なんとかこの男のためにはと
たとえ手段がなさそうでも工夫し
女が向いていないことをも
男から『これはだめだな』と見られないように、努力を重ねた

何かにつけて実直に男の世話をし
ほんのわずかでも男の気持ちにそむくことはないようにしたいと、心がけているうちに、はじめは気の強いタイプだったけれど、何かと従順にもの柔らかになり、醜い容貌も、男に嫌われないように一所懸命に化粧し、人に見られたら、男の恥にならないようにと気がねして、恥ずかしがる、
というふうに男のために女は、このような志を守って、自ら努めていたので、私は連れ添いました
女の気立ては悪くはなかったのですが、ただ、、あの憎らしい癖の一つ『嫉妬』だけはおさまらずにいたのです