るるの日記

なんでも書きます

もののあはれ・源氏物語「『指喰い女』浮気心が冷める理由は、嫉妬されるのが煩わしく、同時に、嫉妬女が気の毒になるから」

2022-11-23 17:15:28 | 日記
■馬頭
「はやう、まだいと『げらふ』にはべりし時、あはれと思う人はべりき。
聞こえさせつるやうに容貌など
いとまほにもはべらざりしかば、
若きほどのすき心には、
この人をとまりにとも思ひとどめはべらず、よるべとは思ひながら、さうざうしくて、とかく紛れはべりしを、もの怨じをいたくしはべりしかば、心づきなく、いとかからで、
おいらかならましこばと思ひつつ、あまりいとゆるしなく疑ひはべりしもうるさくて、かく数ならぬ身を見もはなたで、などかくしも思ふらむと、心苦しきおりおりもはべりて、自然に心をさめらるるやうになんはべりし。」

★げらふ
官位身分の低い者

★まほ
十人並で優れている

★とまり
最後にとどまる所=終生の妻

★よるべ
頼り所、立ち寄る所=妻の一人

★さうざうしくて
寂寂しい

★紛れはべり
人目をごまかして、行動する
女の目をごまかして、他の女の所へ行く

★ましかば
事実に反すること

★見もはなたで
見放す
遠ざけて世話をしないようになる
愛想をつかすに、強い感情の意味の「も」が入った

■馬頭
「ずっと以前、私がまだ官位が低い頃に、愛しく思う女がいました。
先程申し上げたように、容貌などは、特に優れているというほどでもなかったので、若い頃の浮気心では、この人を本妻に決めることもせず、頼りにする妻の一人と思いながらも、ものたりなくて、あれこれとこの女の目をごまかして、遊んでおりますと、女はひどく嫉妬したので、私はそれが気にくわなくて、これほど嫉妬などせず、おおらかでいてくれたならば、と思いつつ、
一方であまりに容赦なく疑われるのが煩わしくて浮気心が冷めたり、また『こんな、数にも入らない卑しい私に、愛想もつかさずに、どうしてこんなふうに思ってくれるのか』と、妻が気の毒になる思いにもなって、自然に浮気心が冷めるような有様でした」




「もののあはれ」と「虚無感」

2022-11-23 07:41:14 | 日記
■「もののあはれ」とは

★目に見て、耳に聞く物事に触発されて生ずる、心深くに染みていた情
日本人の本性として、DNA深くに染みこんでいる無常観的哀愁が在る
無常観的哀愁
人には持つことができない(恋愛的な、男女間の)永遠の愛や、揺らぐことのない絶対者(永遠の美しさ、強さを持つ者)への思慕の感情が本質

★智恵や理性、倫理などからではなく、感情的な情緒・人情によって、物事の本質を把握し、共感する感受性
その能力のある人は、複数の異性を愛し、すべてを幸福にしうる調整力を持つ
なぜなら心や出来事の本質である、「もののあはれ」を知っているから
同時に、我は虚空であることを知っている。心は時々に種々の風情を色どるといえども、その跡は見ることはできない。移り変わる、、と
万物を見ても、その真の姿は虚空
見ている私も虚空、、
だからこそ「もののあはれ」なのだ

■物事そのものに、それぞれ固有の人間に情を起こす性質を持っているが、物事を固定観念で見てしまうと、それに気づかない
物→静止
事→物が動き連なる