■いとこまやかに
ありさま問はせたまふ
あはれなりつること
忍びやかに奏す
御返り御覧ずれば
母君「いともかしこきは、置き所もはべらず。かかる仰せ言につけても、かきくらす乱り心地になん
『あらき風、ふせぎしかげの、枯れしより、
小萩がうへぞ、しづごころなき』」
などやうに
乱りがはしきを
心をさめざりけるほどと
御覧じゆるすべし
★乱りがはしき→若宮のことを案ぜられるとした歌は、父帝の存在を無視した失礼な言い方だから、とり乱しているのだろう、、
■帝はまことに細やかに
更衣の里の様子をお尋ねになる
女官命婦は身に染みて感じた哀愁を
ひそやかに奏上する
母君からのご返書を御覧になると
「まことに畏れ多い言葉は、どういただいたらよろしいものかわかりませぬ。このような仰せ言につけても、心暗くかき乱れる心地でございます、、
『あらき風、、
荒い風を、陰となって防いだ親木が枯れてしまったように、若宮を守っていた更衣が亡くなってからは
残された小萩のような若宮の身の上が案ぜられて、心の静まることがございません』」
などと、取り乱している様子であるのを、心の静まらぬときであるからと、帝は見のがしゆるすであろう