るるの日記

なんでも書きます

もののあはれ・源氏物語「宿命的なつながりには哀愁を感じる」

2022-11-18 06:33:09 | 日記
■源氏の君は、
御あたり去りたまはぬを、
ましてしげく渡らせたまふ御方は
え恥ぢあへたまはず
いづれの御方も我人に劣らむと
思いたるやはる

とりどりにいとめでたけれど
うち大人びたまへるに
いと若う、うつくしげにて
せちに隠れたまへど
おのづから漏り見たてまつる

母・御息所(みやすどころ)も
影だにおぼえたまはぬを
「いとよう似たまへり」と典侍の聞こえけるを、若き御心地に
いとあはれ、と思ひきこえたまひて
常に参らまほしく
なづさひ見たてまつらばや
とおぼえたまふ

★うち大人びたまへるに
どの方も若い盛りを過ぎた年配

★おのづから漏り見たてまつる
自然に藤壺の姿がチラリと見える

★御息所
天皇の寝所に侍る女性

★影だにおぼえたまはぬを
三歳の時に死別したので、源氏は母君の記憶はない

★いとあはれと思ひ
亡き母に生き写しの美しい藤壺に
慕いたいと同時に、宿命的につながりのあるような哀愁的な好意を持つ

★なづなひ見たてまつらば
親密になりたい

■源氏の君は
父帝のそばを離れないので
帝に時々通う方もそうだが、頻繁に通う方は尚更、源氏の君に対し
恥じ隠れとおしきれない、、(男性と対面するときは、女性は恥じて顔を隠すしきたり)
どの方々だって、自分が人より劣っているなんて思っていないからだ

みなそれぞれに綺麗でいたが
みな若い盛りを過ぎている、だが
藤壺は本当に若く、かわいい
藤壺も懸命に隠れようとするが
源氏の君は、自然に藤壺の姿をチラリと見かけることがあった

源氏は、母、御息所(みやすどころ)の事は
影も形も憶えていないが、
「まことによく似ています」
と、典侍が言っていたので
幼い心にも、亡き母に似た人に慕いたいと同時に、宿命的に懐かしく感じて、いつもそばにいて、親密になって姿を見ていたいという気持ちになっていった


もののあはれ・源氏物語「永遠の愛情は無い哀しい人情」

2022-11-18 05:33:44 | 日記
母后
「あな恐ろしや、春宮(とうぐう)の女御のいとさがなくて、桐壺更衣の、あらはに、はかなく、もてなされにし例(ためし)もゆゆしう」
と、思しつつみて、すがすがしうも思し立たざりけるほどに、
后も亡せたまひぬ

心細きさまにて、おはしますに
「ただ、わが女御子たちの同じつらに思ひきこえむ」と
いとねむごろに聞こえさせたまふ

さぶらふ人々、御後見たち、
御兄の兵部卿(ひゃうぶきゅう)の親王など、かく心細くておはしまさむよりは、内裏住みさせたまひて
御心も慰むべくなど思しめしなりて
参らせたてまつりたまへり
藤壺と聞こゆ

げに御容貌ありさま、
あやしきまでぞおぼえたまへる
これは、人の御際まさりて
思ひなしめでたく
人もえおとしめきこえたまはねば
うけばりてあかぬことなし

かれは、人のゆるしきこえざりしに
御心ざし、あやにくなりしぞかし
思しまぎるとはなけれど
おのづから御心うつろひて
こよなう思し慰むやうなるも
あはれなるわざなりけり


★春宮の女御
東宮の母君である女御

★ただ、わが女御子たちの同じつら
「私が親代わりになろう」という表現

★兵部卿
兵部省長官。皇族が任ぜられることが多い。この人は後に登場する「紫の上」の父

★思ひなし(めでたく)
先入観
皇女という藤壺という身分が先入観となり、評価を決定させる

★うけばりてあかぬことなし
今度は帝がどんなに藤壺を寵愛しても、当然のこととして誰もが認めるので、更衣の場合と違って、帝は気がねなく思いのまま振る舞える

★人のゆるし、きこえざりしに
桐壺更衣は、大納言の娘にすぎず、女御をさしおいて、帝の寵愛を独占する資格は認められなかった

★あやにく
不都合
更衣に対する帝の思いは、あってはならない程のものだった

★思しまぎるとはなれど、、あはれなるわざなりけり
藤壺を寵愛するようになると、それだけ桐壺更衣への愛が薄れていく
それが人情の自然な移り変わりだが、、もの哀しいものだ

■母后は、「ああ、恐ろしい、東宮の女御はじつに意地悪で、桐壺更衣が、露骨にものの数ではないように、あしらわれた例もあり不安です」
と、用心して、スッキリ入内させる決心もつかぬうちに、その母后もお亡くなりになった

姫宮が心細い様子でいると、帝は
「ただ、私の娘たちと同じように思いましょう」
と、たいへん親切に姫宮に言われた

姫宮に仕える人々、後見の方々、兄の兵部卿宮なども、こうして心細い有様で過ごすより、宮中で暮らす方が心が晴れると考えて、姫宮を入内させた
姫宮は「藤壺」と申し上げる

なるほど顔立ち、姿が不思議なまで亡き桐壺更衣に似ている
こちらは身分が高く、そう思うからか御立派で、誰も悪く言うことはできないから、帝は、何一つはばかることなく、思いのまま振る舞えた
あの桐壺更衣は、誰もが認めなかったのに帝の寵愛が深かったのである

帝の亡き桐壺更衣に対する気持ちがまぎれ忘れてしまう、、ということは無いにせよ、自然と心が藤壺に移ってゆき、格別に心が慰められるらしい
それもしみじみとした哀しい人情の自然な姿なのだ

もののあはれ・源氏物語「若さと容貌を好む、あはれ」

2022-11-18 04:21:39 | 日記
■年月そへて
御息所(みやすどころ)の御事を
思し忘るるおりなし
慰むやと、さるべき人々参らせたまへど、なずらひに思さるるだに
いとかたき世かなと
うとましうのみよろづに思しなりぬるに、
先帝の四の宮の、御容貌すぐれたまへる聞こえ高くおはします、
母后世になくかしづききこえたまふを、上にさぶらふ典侍(ないしのすけ)は、先帝の御時の人にて
かの宮にも親しう参り馴れたりければ、いはけなくおはしましし時より見たてまつり、今もほの見たてまつりて
典侍「亡せたまひしに御息所の御容貌に似たまへる人を、三代な宮仕に伝はりぬるに、え見たてまつりつけぬを、后の宮の姫宮こそ、いとようおぼえて生ひ出でさせたまへりけれ。ありがたき御容貌人になん」
と奏しけるに、まことにやと御心とまりて、ねむごろに聞こえさせたまひけり

★さるべき人々
帝の夫人として諸条件が揃っている人々

★なずらひ
まったく同等ではない

★うとましう
世が嫌になり、出家したくなるような気持ち

★先帝の四の宮
先の帝の四番目の宮
皇子、皇女にも言う

★母后
四の宮の母、先帝の皇后

★今もほの見たてまつり
この典侍は、何かの折りにチラ見することがあった

★おぼえて生ひ出で
似ているものを見て元のものが思い出す

■年月が経つにつれても
帝は桐壺更衣の御息所の事を忘れることはできなかった
気が紛れることもあろうかと
しかるべき方々を入内させるが
故人桐壺と同列の程度の人はめったにいない世の中なんだと、世が嫌になり出家でもしたくなったところへ、
先帝の四の宮で、器量良しの噂が高い方がいて、その母后も大切に育てているという。その方を知っていた帝に仕えている典侍は、母后の御殿にも親しく伺いしなれていたので
この四の宮が幼少時分から見かけていて、今も時々チラっと見かけることがあった

典侍「亡き桐壺の顔立ちに似ている方を、三代の御代に仕えて参りました間に、見かけることはありませんでしたが、后の宮の姫宮こそは、まことによく桐壺に生き写しの姿に成長なさいました
世にもありがたい器量の方で」
と奏上したので

「本当であろうか」と帝は心惹かれて
ねんごろに入内をさせるよう言われた