テキスト主体

懐中電灯と双眼鏡と写真機を
テキスト主体で語ろうとする
(当然、その他についても、語ったりする)

ウィンターズ・テイル

2011-12-19 23:59:06 | 本、小説、漫画、動画、映画、音楽等
古い、調べてみたら、1983年のハヤカワFT(ファンタジー)文庫での発刊です。
19世紀から20世紀にかけてのニューヨークが舞台のお話しで、主人公(?)のピーター・レイク、ヒロインのベヴァリーの恋愛は、読後20年以上経ったいまでも、壊すことが出来ないきれいな形のまま、記憶に残っています。

ことさらに、ベヴァリーが死んでしまった後のピーター・レイクの深い喪失感は例えようもなく厳しく突き刺さり、今でも活字の並びで憶えているそのいくつかのセンテンスは、半ば肉体的に胸のあたりをキュっとさせる、印象的なモノです。

長らく絶版のままなのですが、私の持っていたのは、表紙が取れボロボロだったので、この間、古本で購入、加えて作者のマーク・ヘルプリンの短編が載ったアンソロジーをいくつか買いました。

この本は好きな人にはたまらなく好きで仕方が無くなるお話しらしく、映画脚本家のアキヴァ・ゴールズマンが初監督作品として映画化を目論んでいるようで、小説で本当に好きな作品は映画化して欲しくない主義の私ですが、このウィンターズテイルに関しては、知名度のあまりの低さ、絶版のままでなく、なんとか復刊して読まれるようになって欲しいという思いから、願わくば原作のイメージを壊さずに映画化して欲しいと思っています。

私の読書歴のなかでは「ジェニーの肖像」(ネイサン)の切なさや、「利腕」(フランシス)の読了感を併せ持ち、登場する白馬アサンソーは「まえがみ太郎」に登場する神馬ツバメトビ(声・池田昌子)を彷彿とさせ、主人公ピーター・レイクの”タグボートめ!”という科白は、どことなくカフカちっくであり、加えて、ニューヨークのバッテリーパークに、こよなく憧れをいだかせる、そんな小説です。

現代アメリカの文壇の力を私に思い知らせたきっかけの本の一つでもあります。