『待つわ』-⑪
月夜の晩、二人はリラの木陰でキスをした。
キッスの余韻に酔いしれたまま、ジーンは勝手口から そっと家に入った。母さんが もう寝ていてくれればいいのだが、と願いながら。
台所のドアを開けると電燈の光で目がくらんだ。目をしばたきながら よく見ると、母さんとお隣のキング夫人がコーヒーを飲んでいた。
⑪「ハロー、ママ;ハロー、キングさん。そんな所で お二人いったい何していらっしゃるの?」
母親は薄い唇を歪めて、鋭い口調で言った「それは私の言いたい台詞よ、お嬢ちゃん。今夜はキングさんと私、たまたま 二人で映画に行ったのよ。一時間ばかり前に戻ってきたのよ」
キングさんは、その太い両足を心地よさそうに開いて、ジーンの母親に目配せしながら言った「ねえ、今日あの娘(こ)たちを見たでしょ!」そしてジーンの方を向いて、「あれは何だったのかしらね、ジェニー、ほんのスプーニング(いちゃいちゃ)なの? いいえ、この頃巷で言うスムーチング(抱擁)だったわ!」(続く)
原文⑪ ”Hello, Mamma; hello, Mrs. King,” she said, "What are you two doing up?"
Her mother's thin lips twitched and she said sharply, "I might say the same to you, miss. It just happens Mrs. King and I went to the show ourselves tonight. We got home near an hour ago."
Mrs. King, her heavy legs spread comfortably apart, said with a wink at Jean's mother, "Oh, you know these kids today!" She turned to Jean, "what was it, Jeannie, a little spooning? Noー smooching they call it today!"
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