向かい風にも、険しい山道にも、力強い走りはぶれなかった。トップと1分49秒差の2位でたすきを受けた日体大の服部は、5区14キロ過ぎで前を行く東洋大をとらえ、17キロ手前で並走していた早大を突き放した。「攻めていけば『抜ける』と自信を持っていた。つらかったけど楽しめた」。最後は両手を突き上げてゴール。3年ながらエースで主将が同大を26年ぶりの往路優勝へと導いた。
チームは一からのスタートだった。昨年は19位でシード落ち。ゴール地点の大手町で主将に指名された。「どんな状況でも仕事をするのが主将。他の選手よりも優れていた」と別府監督。一昨年の12月、父の重夫さん(当時50)を病気で亡くした。翌日には黙々と練習し、1区で区間2位の走りをみせた。精神力の強さを買われての抜擢(ばつてき)だった。
3年での主将に「戸惑いもあった。『1番速くなければいけない』と空回りした」。昨年5月の関東学生対校選手権の1万メートルでは重圧に押しつぶされ、17位と惨敗。落ち込むエースを本田ら同期が支えた。最初は不満を漏らした4年生も「お前についていく」と受け入れてくれた。チームはまとまり始め、予選会をトップ通過。この日は強風で苦しむ選手が多い中、ベストの走りでつないだ。主将の精神力はチームに浸透していた。
父と交わした「区間賞を獲る」という約束も果たした。「良かった。往路も楽しんで満喫してもらいたい」。主将として貫禄も出てきた。(神田さやか)