天安門に掲げられた毛沢東の肖像がスモッグにかすみ、口元から鼻までをマスクで覆う完全防護スタイルの人々が街を歩く-。
中国では今、有害物質を含む濃霧の発生が深刻化している。その正体は、自動車の排ガスなどに含まれる微小粒子状物質「PM2.5」。中国環境保護省は1月29日、この有害物質を含む濃霧が日本の国土の3倍以上に当たる約130万平方キロを包み込んでいると発表。「PM2.5」などによる汚染度合を6段階で判定する「大気汚染指数」が、北京、天津、河北省、山東省の都市部を中心に最悪の「深刻な汚染」を記録し、吉林、遼寧両省など東北地方や河南、湖北、陝西(せんせい)、四川各省などの内陸部でも、2番目に悪い「重度の汚染」となった。
深刻な大気汚染を受け、北京市当局は「外出を控えるなどの自衛」を住民に呼び掛けている。外出しなければならない人にとって今やマスクは必需品で、本格的な防護マスクを着用する実用志向もいれば、洋服とコーディネートしたデザインのものを着用する人も目立つ。
ぜんそくなどの健康被害が懸念されるが、共同通信によると北京の病院は大気汚染を原因とする患者に関する取材を拒否、上部機関から指示があったと明らかにしたという。
北京では1月29日、街全体がかすんで50メートル先も見えにくい状態になった。薄暗いため車両は日中も点灯。視界不良による空港や高速道路の閉鎖が相次いだ。
大気汚染の原因は、暖房のための石炭燃焼や自動車の排ガス、工場から排出される煙などが指摘されている。特に自動車の排ガスとの関係が深いとみられる直径2.5マイクロメートル以下の微小粒子状物質「PM2.5」は、肺がんやぜんそくにつながると懸念されている。
1月29日付の中国紙、中国青年報は全国約7000人を対象に実施した調査結果を掲載、91.4%が「大気汚染が生活に影響を及ぼしている」と回答した。中国青年報は「利益追求を優先する企業が環境対策を怠るケースが依然多く、当局の取り締まりも不十分」と指摘。自家用車の利用を減らすなどの努力も必要と訴えた。
春節(旧正月)を2月9日に控え、大気汚染が深刻化するとして、春節恒例の爆竹や花火の使用を控えるべきだという意見も出ている。