友人に誘われて、京都近代美術館で開かれている「上村松園展」に行ってきた。
まとまった形で松園の作品を見るのは初めて。
入ってすぐに、代表作の「序の舞」が掲げられている。
気品と、静けさに加えて、内面的な強さが感じられる。思っていた以上に、名作だ。目の前の能舞台で、本当に舞を見ているような存在感だ。
父親を早くに亡くして、母親一人に育てられた松園。シングルマザーで、今よりははるかに男社会であったろう日本画壇において、自分の理想とする日本画を生涯、追求し続けた松園。
年代によって、女性の内面の描き方が進化しているのが分かるような展示の仕方がしてあって、とても興味深かった。
若いときには、六条の御息所を描いた「焔」や、恋に狂った女を描いた「花がたみ」のような、女の情念をストレートに出したような作品が好きだった。
今回は、「序の舞」に見られるように、女性の喜怒哀楽はすべて中に秘められているような、松園60代以降の作品に心ひかれた。
中に秘められているというより、喜怒哀楽が昇華されて、むしろ解放感さえ感じられる。
松園は、自分の絵を見たときに、見た人の邪念が払われるような絵が描きたい、と言っていたそうだ。
今日、松園の作品に接して、体も心も軽く、すがすがしい気持ちになった。
本当に美しいものに触れると、人は、邪念が無くなる。