夢が有るから…

「ゴルフ、辞めようかと思ったこと有りますよ」
と私が言うと、
「えぇ～？コーチでも辞めたくなったこと有るんですか？」
と、驚いたような表情をされることが有る。
「有りますよ。何度も…。もう、クラブをその辺のどぶ川に捨てて帰ろうかと、本気で思ったことも有ります」
「でも、辞めなかったんですよね？どうして辞めなかったんですか？」
「う～ん？？？いつの間にか、また練習場に足が向いていたんですよね。それとやはりゴルフ仲間がいたことでしょうか？
誘ってくれるから、行こうな？と思う。行けば、また、ひとつかふたつ良いことや嬉しいことに遭遇できて…」
なんて、レッスンを受講中の方々と私の会話。

クラブをはじめて握ったのは、１９歳の頃。
あまり気が進まなかったけれど、何故かソフトボールをしていたからと言う理由だけで、練習場に連れて行かれた。
最初は、空振りばかり。
「何で止まっているボールを打つのが、こんなに難しいのだろう？」と思った。
あまりに当たらないので、「フン！ゴルフになんて足を踏み入れるものか！」なんて悪態をつきたくなった。

それから、これまで…。
思い返してみれば、辞めようと思ったことは、何度も有った。
でも、辞めなかったのは、レベルの差こそあれ、いつも「ここまで練習して来たんだから、もう少し頑張ってみよう」と思ったから。

プロになりたいなどと、最初は全く思っていなかった。
でも、ゴルフに対する“夢”がいつも有った。
「（アイアンで）番手ごとの飛距離をきっちり出せるようになりたい」
「ドライバーで、まっすぐなショットを打ちたい」
「スイングを綺麗にしたい」
「ダイナミックなゴルフをすると言われたい」
「８番アイアン以下のクラブでなら、いつもグリーンに乗せられるようになりたい」
などなど…。

先日、念願かなって、コースデビューを果たされた５０歳代の女性。
この方は、人に薦められて、ゴルフをしてみようと思ったものの、あまり面白さを見出せず、「レッスンの有る前日の夜になると苦痛になるくらいなんです」と正直におっしゃっていた。
私も、それは困ったものだと思い、なるべく早くコースデビューをしてもらえるように…と思っていた。
同じクラスの方が、その方のコースデビューを心配して、付き合って下さると言う。
当日一緒だった、他一名の男性の方も、コースデビューと知り、上手く当たれば、“ナイス”と大きな声で励ましたり、拍手をして下さったりする。
ラウンドも後半になって来て、「疲れていらっしゃらないかな？」と、チラッとその方の表情を見ると、口元に笑みを浮かべて、嬉しそうな、楽しそうな表情をなさっていた。
私も、その表情を見て、「良かったなぁ～」って、嬉しかった。
同伴プレーヤーにも恵まれて、その方のコースデビューは、とても楽しいものになったようだった。
レッスン日の前日の夜には、レッスンに行くのを苦痛に感じても、「コースに出て、楽しめるようになれたら良いな」と言う、その方なりの夢を諦めなかったから、夢が叶った。

ゴルフは毎日やっても、どれだけやっても、“飽きない”スポーツだと思う。
その昔、イギリスの貴族達の間で、ゴルフが盛んだったのは、毎日やっても、飽きなかったからだとか…。
飽きないのは、なかなか思うように行かないからで…今度こそと何度でもチャレンジしたくなる。
それが、ゴルフ…だと思う。
だから、ラウンドに行って、思うように上手く行かず、悔しくて、もう辞めてしまおうかと思うくらいのことは、ゴルファーなら誰でも有る…と思う。
でも、“辞められない”のが、ゴルフかな？
辞めきれないなら、また、辞めたくないなら…。
自分なりの手の届く夢を、何か持つことではないかなと、私の経験上、そう思う。
「７番アイアンでなら、スイートスポットをはずさず打てるようになりたい」
「左への体重移動をスムーズにして、綺麗なフィニッシュの形を作りたい」
「ランニングアプローチを磨きたい」
手が届きそうも無い夢を持つのは、本当に単なる夢だけど、手の届きそうな夢を持つこと。
手の届きそうな夢を叶えることを積み重ねることによって、夢の階段を上がって行く。

どんなに小さな些細な夢でも、叶えば嬉しいし、それを叶えようと頑張って行くことで、ゴルフに面白みを見出せる。

「ゴルフが好き」
「何故？」と、人に尋ねられたら「夢を追えるから…」な～んて…。
本当に口に出さなくても、心の中でそう思っている人が多いと良いな。