あるトッププロのエピソード

ゴルフスイングって、わずかの違いでも、“違う”んだよね…。

って考えた時、ふと思い出したある偉大なるトッププロのエピソード。

人伝てに聞いた話なので、真偽のほどは定かではないが…。

「それって本当かも…」と思えるエピソードなので、書いておきたいと思う。

ある日、そのトッププロの練習中に、雑誌の記者が取材に訪れた。

記者「昨シーズンから、少しスイングを改造なさったんですよね」

トッププロ「（ボールを打ちながら）おぉ、ようやく良い感じになってきたぞ」

記者「どこを、どう変えられたんですか？」

トッププロ「このあたりを、もう少し、こうなるように変えたんだ」

記者「（その説明では分からなかったようで）以前のスイングは、どうだったのか、ちょっとやってみてもらえませんか？」

トッププロ「それは、できない」

記者「そうはおっしゃらずに、雑誌掲載上の都合も有りますし…」

トッププロ「そう言われても、できない」

記者「改造後のスイングだけ見てても、変わった箇所が分からないんで…」

トッププロ「だったら、改造後のスイングだけ載せておけ」

記者「そこを何とか…。改造前と改造後の比較を載せたいので…」

トッププロ「できない」

記者「そんな冷たいことを言わずに…。1回でいいから、やってみてくださいよ。」

トッププロ「バカ野郎！改造前のスイングを1回でもやったら、今のスイングに戻すのに、どれだけの時間がかかると思っているんだ！
おまえは、せっかく何ヶ月もかけて練習して来た俺のスイングを崩すつもりかっ！」
と、断固拒否の姿勢で、しまいには怒鳴ってしまったらしい。

「以前のスイングは、こうでした。でも、今のスイングは、こうです」と説明してあげるのが、親切で丁寧な対応に思えるが、そのトッププロは、それをしなかった。
それより、以前のスイングを1回でもしたら、今のスイングが崩れる。
スイングとは、それくらい微妙で繊細なものなのだと怒鳴りながらも、伝えた。

このエピソード、「本当かもしれない」と思える。
また、そう言ったトッププロの気持ちも分かる。

それくらいスイングって微妙なもの。
トッププロが試合で使えると感じるスイングは、繊細なもの。

このエピソードを聞いたのは、研修生時代だったのだが…。

聞いた時は、「ほぉ～、さすがだな…」と思えた。
そして、いとも簡単に、前はこういう風に振っていたけど…と、以前のスイングをやってしまう自分は、甘いし、まだまだだと思った。

プロは、スイングを修正して行こうとする時は、こんなに真剣。
こんなに真剣にならなきゃ、修正前のスイングは、もう２度としないとの心意気でのぞまなきゃ、おいそれとは変わらない。
…そんなものかもしれないと思う。