友達の”合コン”話 その１０

一度は行ってみたいと思っていた『合コン』、そして、そこで知り合った男性お二人とラウンドまでしてしまった、ティーチングプロのＳさん。
一夜限りのかりそめのＯＬのつもりだったのに…一度ついてしまった”嘘”は取り消せないと、ラウンド中も、自分の”正体”がばれぬようにと、気をつけまくっていたようだ。

そして…。
「私は、本当のＯＬじゃないの。ヒールはいてスーツ着て、書類を片手に、オフィス街を闊歩しているんじゃなくて、本当の私は、いつも運動靴はいて汗まみれになっても良いようなウエア着て、大股で歩き、そして、身体の捻転運動ばかりしているの。パソコンや電話に囲まれて、室内のオフィスでテキパキと仕事をこなしているんじゃなくて、雨にも風にも、夏の暑さにも、冬の寒さにも負けず、来る日も来る日も、鉄のカタマリ振ってるわ。だから、ほら、こんなに腕も太くなっちゃった。」
「言いたくないの。ばらしたくないの。だって、この男性お二人は、てっきり私を本当のＯＬだと思って、ゴルフに誘ってくれたのかもしれないのだから…」
「私が、女の子らしく、かわい子ぶりっ子のゴルファーでいれるのも、あと少し。また、明日になれば、男物のＳシャフトのドライバーが、スチールシャフトのアイアンが、ソールの磨り減ったサンドウエッジが、私を待っているのだわ。」

ラウンドも終盤に近づくにつれ、Ｓさん曰く、「時計が夜中の１２時を指すのを気にする、シンデレラのような気分」になったのだとか。
（仮の姿で、一日だけ、夢見心地…と言うのだけ似てるけど、あなたが、シンデレラねぇ？！子供の童話の夢が崩れそうや。そんなこと言ったら、寝てる子もビックリして、飛び起きる！！）
「もしも、この男性のうちのお一人が、私を探して、友達の会社を訪ねてくれても、私はいない…。私は、マボロシのＯＬ。」
（ガラスの靴の代わりになるもの、見つけなきゃ…？！）

本当のＯＬの友達につきっきりのそれなりさんと、自分のボールを探して、コースをジグザグに歩く、あっちこっちさんを目で追いながら、Ｓさん自身は、一人で、こんな妄想にふけりながら、後半の残りのホールを楽しんだのだとか…。
（現実は、厳しい…？あなたの王子様は、何処へ行ってしまったのでしょう？？）

後半のラウンド、上がってみれば、それなりさん５５。Ｓさん４８。
ゴルフをはじめて３年の女の子に負けて、それなりさんの男のプライドまるつぶれ？
そして、それなりさんに「真剣にまわったら上手いじゃないですか～！」と言われたらしい。
「真剣に…？」
どうやら、それなりさん、後半の途中から口数が少なくなったＳさんを見ていて、「真剣にまわっている」と思ったらしい。
口数が少なくなったのは、妄想にふけっていたからなんだろうけど…。
また、ボールを一緒に探してあげた、あっちこっちさんには、「ご迷惑をおかけしました」と、恐縮されてしまったのだとか。

…ここまで、随分話を引っ張って来た『友達の”合コン”話』。
次回は、いよいよ最終回です。