国際エネルギー機関(IEA)によれば2009年時点で中国はアメリカを抜き、世界最大のエネルギー消費国となったと発表している。
中国のGDPは世界の10%程度であるが、エネルギー消費量は20%以上を占めている。特に石炭を燃料とする産業プラントなどから排出される汚染大気の排出量は世界一で、二酸化炭素など温室効果ガスの排出に関しても世界の25%を占める状況となっている。
これは、エネルギーを多く消費する製造業による需要が増加していること、またエネルギー利用効率が低いことなどが主な理由として挙げられる。
例えば中国の石炭火力発電所の発電効率は36%、先進国の水準より4%下回る、また鉄鋼生産のエネルギー効率は、先進国の1.3倍以上、自動車の燃費は1.5倍悪い。これは日本の8倍、欧米先進国の4倍、世界の平均の3倍と言う世界最悪なエネルギーの使い方をしている。
日本人の健康にとって最大の脅威が、中国から流れてくる硫酸塩エアロゾルである。
これは、中国国内の工場で、中国産の石炭(硫黄分などの有害物質が多い)を燃焼させることで、二酸化硫黄が発生する事に由来し、最悪なのは、中国の工場やボイラーなどでは脱硫せずに空気中に垂れ流ししており、実態としては中国の硫酸塩エアロゾルの発生量は、火山灰よりも多いとの試算もある程で、1990年代以降世界の工場と化した中国で発生する硫酸塩エアロゾルは膨大でこれが雨に落とされないまま偏西風に乗ると、風下の日本に大量に流入している事実はあまり報道されず、問題視されていない。
硫酸塩エアロゾルは、後頭神経痛を起こしたり、頭痛やめまいなどの症状が出るケースもあり、また神経痛、アレルギーなどの症状が出て、しかも花粉症を悪化させると言われている。
また硝酸塩エアロゾルの霧雨は最悪で、硫酸ミストになり、これは酸性雨であり、この雨が緑豊かな日本の森林を著しく荒廃浸食する主要な原因の一つ。
それと硫酸塩エアロゾルの最大の問題は浮遊粒子状物質(SPM)の生成に関わっている事。つまり揮発性有機化合物(VOC)と窒素酸化物(NOx)の混合系に紫外線があたると光化学オキシダント(主成分、オゾン)が発生するが、揮発性有機化合物と窒素酸化物と、硫酸塩エアロゾルが空気中で混じり合う事で、浮遊粒子状物質が生成されのだ。
ここであまり聞き慣れない揮発性有機化合物という言葉がでているが、これはトルエン、ベンゼン、フロン類、ジクロロメタン、ホルムアルデヒドなどで構成される有機化合物で約100種類以上あると言われ、これら有機物には発がん性物質が含まれ、特にホルムアルデヒドは、シックハウス症候群や化学物質過敏症の原因であり、人体に極めて有害な物質である。
揮発性有機化合物と窒素酸化物、それと硫酸塩エアロゾルから生成される浮遊粒子状物質が引き起こす健康被害が重大であることは、議論の余地がない。
安価な石炭エネルギーに大きく依存する中国経済は、発電用石炭を輸送する為に、鉄道の半分はこれらの輸送に携わっているとも言われ、中国国内の物流の大きな足かせともなっているが、問題解決には長い長い時間がかかるだろう。
抜本的解決はほど遠い事は認識できるが、少なくともこのような有害物質が中国から偏西風に乗って日本国内に流入している事実は広く知らしめ、必要に応じて警戒警報など適切な情報提供の仕組みが必要である。