産総研が、土壌中のセシウムを除去する技術を開発した。
このセシウム除去技術は、平成22年度科学技術戦略推進費「放射性物質による環境影響への対策基盤の確立」プロジェクト(概算予算4.9億円)で開発されたもので、低濃度の酸と顔料の一種であるプルシアンブルーを利用して土壌中の放射性セシウムを除去するのも。
※放射性セシウムには、半減期2年のセシウム134と半減期30年のセシウム137があるが、この両放射性物質の土壌からの除去を実現する。
今回開発したセシウム除去技術によると放射性廃棄物の量をもとの土壌の150分の1に減らせる見込み。従来手法よりも扱いやすく低コスト化が期待できる。高レベルに汚染されている福島県などでの除染に役立てたい。また農地だけでなく、手つかずの山林などにも適用可能で、現状では樹皮に付着したセシウムの除去に関する相談などが来ている。
土壌中に存在する放射性セシウムの除去技術には従来より「土壌剥離」と「土壌洗浄→年度粒子分離」などの手法があるが、「土壌剥離」については、福島の警戒区域、計画的避難区域、避難準備区域、併せて26,000haの農地が存在し、単純計算で1,800トンの廃棄土壌が発生するので非現実的。また「土壌洗浄→年度粒子分離」についても膨大な汚染排水と残土が分離発生する為、現実的でなく、両手法の共通欠点である大量の放射性廃棄物の減量処理が必須である。
既存の手法である土壌剥離の場合のコストは住友信託銀行のレポートにより試算すると26,000ha、剥離土壌5センチとすると3,000億円から6,000億円のコストがかかる。今回開発したセシウム除去技術だと土壌洗浄と吸着材であるプルシアンブルーの費用を合わせ、かつ除染する土地の選択を適切に行うと仮定すると500億円から1,000億円程度に圧縮可能。
土壌中のセシウムは特に粘土粒子にくっついているので、まず薄い硝酸か硫酸を土壌に通して粘土から水溶液中に抽出する。この薄い硝酸を使った場合は200度、45分でほぼ100%のセシウム抽出が可能。さらに水溶液中のセシウムイオンをプルシアンブルーの微粒子に吸着させると、微粒子の量は汚染土壌の150分の1で済み、放射性廃棄物の減量化を実現できる。
今回の産総研の実験では非放射性のセシウムを使っているが、放射性セシウムでも同様の結果が得られる。従来のセシウム抽出法は高濃度の酸を使うので取り扱いが難しく、コストもかかり、かつ農地の土壌を傷める難点もあったが、今回のプルシアンブルーを用いた除去技術は酸の濃度が従来の12分の1と薄く利用しやすい。
このセシウム除去技術の核となるプルシアンブルー(Prussian Blue)は、関東化学において1日当たり1トン程度の生産が可能で、かつ1kg当たり1,000円程度と安価、かつナノ粒子状にする手間は少々かかるが、生産自体も容易。プルシアンブルーは、セシウム・イオンを吸着するのに最適の大きさの空孔を有し、海水からの抽出も可能である。このプルシアンブルーは、既にチェルノブイリ事故時に家畜への投与を行い、内部被爆を低減する効果があることが実証されている。
プルシアンブルーは、フェロシアン化第2鉄(C18Fe7N18)に属し、鉄イオン(Fe)を銅イオン(Cu)に置換すると電気化学的反応によりセシウムを取り出すことも出来る物質である。プルシアンブルーは一般的には青色顔料として使われているが、消化管に吸収されないコロイド状の物質の為、人間が経口しても大丈夫で、仮に経口した場合でも吸収されず、排泄される。また日本でも、平成22年10月27日に厚生労働省から内部被爆用の薬剤として承認(承認番号:22200AMX00966000)されている。ただしセシウムの内部被爆事例がない為、投与した場合には厚生労働省への臨床報告が必要と言う承認条件が付されている。
従来の手法と比較して低濃度の酸と市販の圧力容器を使用して土壌から抽出したセシウムイオンはほぼ100%、プルシアンブルーで回収する事ができ、かつ大きな課題となっていた放射性廃棄物を1/150に減量する目途がたった事で、具体的な福島での汚染フィールドでの除染が行える状態になっており、連携できる企業などとの連携を模索したい意向が示されている。
今後は、更なる改良を重ね連続処理による効率化を目指し研究開発を進める予定。
このセシウム除去技術は、福島以外でも様々な企業が汚泥、焼却灰などの汚染物質の除染に活用出来、また放射性廃棄物の減量処理が可能となるので、当該技術を使えるフィールドを探している。ただ最大の課題は除染後の、結構高いレベルの放射性セシウム廃棄物の保管貯蔵施設が存在しない事である。
今回の福島第一原発事故による放射能汚染は、実質的にセシウム134と137の除去対策で大丈夫と判断している。世間ではストロンチウム90の問題が取り上げられているが、あるプラント会社の原子力・環境部門の人間に聞いてもそもそもストロンチウムは検出されておらず、この会社で問題にしているのはセシウムのみ。
参考情報として、福島第1原発1~3号機から放出されたセシウム137は1万5000テラベクレル(テラは1兆)で、福島原発事故で外部環境に出たセシウムは広島原爆にして168.5個分。
ちなみにヨウ素131は、福島原発で16万テラベクレル。広島原爆換算で6万3000テラベクレル。
ストロンチウム90は、福島原発で140テラベクレル。広島原爆換算で58テラベクレル。
(ヨウ素131の半減期は約8日。ストロンチウム90は約29年。)
※プルシアンブルーは、濃青色の顔料で「紺青」。
皇居の大手門を入ると宮内庁三の丸尚蔵館がある。この尚蔵館に伊藤若冲の『動植綵絵』30幅が所蔵されている。
この若冲の『動植綵絵』は、皇居の売店で30枚の絵はがきで入手可能で1200円だったと思うが、
プルシアンブルーを我が国で最初に使用したのは、この『動植綵絵』の中の「群漁図(鯛)」にあるルリハタを描くのに若冲が用いたのが嚆矢。
ちなみに「群魚図(鯛)」をみるとルリハタは、右上に見える。
このセシウム除去技術は、平成22年度科学技術戦略推進費「放射性物質による環境影響への対策基盤の確立」プロジェクト(概算予算4.9億円)で開発されたもので、低濃度の酸と顔料の一種であるプルシアンブルーを利用して土壌中の放射性セシウムを除去するのも。
※放射性セシウムには、半減期2年のセシウム134と半減期30年のセシウム137があるが、この両放射性物質の土壌からの除去を実現する。
今回開発したセシウム除去技術によると放射性廃棄物の量をもとの土壌の150分の1に減らせる見込み。従来手法よりも扱いやすく低コスト化が期待できる。高レベルに汚染されている福島県などでの除染に役立てたい。また農地だけでなく、手つかずの山林などにも適用可能で、現状では樹皮に付着したセシウムの除去に関する相談などが来ている。
土壌中に存在する放射性セシウムの除去技術には従来より「土壌剥離」と「土壌洗浄→年度粒子分離」などの手法があるが、「土壌剥離」については、福島の警戒区域、計画的避難区域、避難準備区域、併せて26,000haの農地が存在し、単純計算で1,800トンの廃棄土壌が発生するので非現実的。また「土壌洗浄→年度粒子分離」についても膨大な汚染排水と残土が分離発生する為、現実的でなく、両手法の共通欠点である大量の放射性廃棄物の減量処理が必須である。
既存の手法である土壌剥離の場合のコストは住友信託銀行のレポートにより試算すると26,000ha、剥離土壌5センチとすると3,000億円から6,000億円のコストがかかる。今回開発したセシウム除去技術だと土壌洗浄と吸着材であるプルシアンブルーの費用を合わせ、かつ除染する土地の選択を適切に行うと仮定すると500億円から1,000億円程度に圧縮可能。
土壌中のセシウムは特に粘土粒子にくっついているので、まず薄い硝酸か硫酸を土壌に通して粘土から水溶液中に抽出する。この薄い硝酸を使った場合は200度、45分でほぼ100%のセシウム抽出が可能。さらに水溶液中のセシウムイオンをプルシアンブルーの微粒子に吸着させると、微粒子の量は汚染土壌の150分の1で済み、放射性廃棄物の減量化を実現できる。
今回の産総研の実験では非放射性のセシウムを使っているが、放射性セシウムでも同様の結果が得られる。従来のセシウム抽出法は高濃度の酸を使うので取り扱いが難しく、コストもかかり、かつ農地の土壌を傷める難点もあったが、今回のプルシアンブルーを用いた除去技術は酸の濃度が従来の12分の1と薄く利用しやすい。
このセシウム除去技術の核となるプルシアンブルー(Prussian Blue)は、関東化学において1日当たり1トン程度の生産が可能で、かつ1kg当たり1,000円程度と安価、かつナノ粒子状にする手間は少々かかるが、生産自体も容易。プルシアンブルーは、セシウム・イオンを吸着するのに最適の大きさの空孔を有し、海水からの抽出も可能である。このプルシアンブルーは、既にチェルノブイリ事故時に家畜への投与を行い、内部被爆を低減する効果があることが実証されている。
プルシアンブルーは、フェロシアン化第2鉄(C18Fe7N18)に属し、鉄イオン(Fe)を銅イオン(Cu)に置換すると電気化学的反応によりセシウムを取り出すことも出来る物質である。プルシアンブルーは一般的には青色顔料として使われているが、消化管に吸収されないコロイド状の物質の為、人間が経口しても大丈夫で、仮に経口した場合でも吸収されず、排泄される。また日本でも、平成22年10月27日に厚生労働省から内部被爆用の薬剤として承認(承認番号:22200AMX00966000)されている。ただしセシウムの内部被爆事例がない為、投与した場合には厚生労働省への臨床報告が必要と言う承認条件が付されている。
従来の手法と比較して低濃度の酸と市販の圧力容器を使用して土壌から抽出したセシウムイオンはほぼ100%、プルシアンブルーで回収する事ができ、かつ大きな課題となっていた放射性廃棄物を1/150に減量する目途がたった事で、具体的な福島での汚染フィールドでの除染が行える状態になっており、連携できる企業などとの連携を模索したい意向が示されている。
今後は、更なる改良を重ね連続処理による効率化を目指し研究開発を進める予定。
このセシウム除去技術は、福島以外でも様々な企業が汚泥、焼却灰などの汚染物質の除染に活用出来、また放射性廃棄物の減量処理が可能となるので、当該技術を使えるフィールドを探している。ただ最大の課題は除染後の、結構高いレベルの放射性セシウム廃棄物の保管貯蔵施設が存在しない事である。
今回の福島第一原発事故による放射能汚染は、実質的にセシウム134と137の除去対策で大丈夫と判断している。世間ではストロンチウム90の問題が取り上げられているが、あるプラント会社の原子力・環境部門の人間に聞いてもそもそもストロンチウムは検出されておらず、この会社で問題にしているのはセシウムのみ。
参考情報として、福島第1原発1~3号機から放出されたセシウム137は1万5000テラベクレル(テラは1兆)で、福島原発事故で外部環境に出たセシウムは広島原爆にして168.5個分。
ちなみにヨウ素131は、福島原発で16万テラベクレル。広島原爆換算で6万3000テラベクレル。
ストロンチウム90は、福島原発で140テラベクレル。広島原爆換算で58テラベクレル。
(ヨウ素131の半減期は約8日。ストロンチウム90は約29年。)
※プルシアンブルーは、濃青色の顔料で「紺青」。
皇居の大手門を入ると宮内庁三の丸尚蔵館がある。この尚蔵館に伊藤若冲の『動植綵絵』30幅が所蔵されている。
この若冲の『動植綵絵』は、皇居の売店で30枚の絵はがきで入手可能で1200円だったと思うが、
プルシアンブルーを我が国で最初に使用したのは、この『動植綵絵』の中の「群漁図(鯛)」にあるルリハタを描くのに若冲が用いたのが嚆矢。
ちなみに「群魚図(鯛)」をみるとルリハタは、右上に見える。