阿部ブログ

日々思うこと

ウクライナ情勢について ~経済的北進論~

2014年03月23日 | 雑感
結局、米国は何も出来ないだろうし、そもそも対処する気がないと思う。
確かに米上院軍事委員会 (Senate Armed Services Committee) では、黒海にイージス艦、ポーランドにF-22部隊を展開して圧力をかけるべきとの意見もある。また天然ガスをロシアに変わってEUに供給すべしとの主張もある。しかし本格的な戦闘部隊を展開する事はないし、天然ガス供給など無理。ウクライナは日本と同じ半独立国で、地政学的にロシアに帰属する地域。つまりこれはロシアの内政問題。つまり内戦せずに穏便にすませよ、と言う事だ。
ウクライナの地図を見ればわかること。モスクワ公国の前にキエフ大公国あり。それに独ソ戦でも両軍が枢要な戦闘を繰り広げた地域でもある。ハリコフなど4度にわたる攻防戦が行われた。ハリコフ攻防戦については、ソ連共産党中央委員会附属マルクス=レーニン主義研究所の『第二次世界大戦史』に詳しい。

ウクライナ首相 Arseniy Yatsenyukは、国内向けにNATOに加盟する計画は無いと説明している。当然だ。ロシア軍が侵攻してくるから。ウクライナは1997年にNATOとパートナーシップ協定に調印しているが、財政が厳しいEU諸国は軍事介入してまでウクライナを取り込もうとはしないし出来ない。ウクライナの外相 Andriy Deshchytsyaは、ロシア軍がウクライナ国境地帯に展開するという挑発的は極めて遺憾とし、現在の状況はグルジアと似ていると発言。財政破綻寸前にも関わらず、対ロシア戦を見据えた6億ドルの緊急支出を決め、軍を動員。
ロシアは、NATO抑止と対ウクライナ戦に備えてベラルーシのBobruisk空軍基地(Mogilyov)に、Su-27×6機、Beriev A-50×1機、輸送機×3機を展開。そうこうしているうちに国連ではロシアが拒否権を発動、中国は棄権。

ロシアは、ウクライナ国境地帯で、自動車化狙撃師団(言い方が古いか?)、機甲・砲兵など諸兵種連合(これも古い)による統合演習を実施。空挺部隊も登場。ウクライナの地勢を観ると、気象条件によるが空挺部隊の出番もありそう。3月16日、クリミアで投票が行われ、当然ながらロシア併合を決めた。ロシアは3月21日、クリミアのロシア加盟条約を批准し、クリミア共和国と連邦市セヴァストーポリが編入。クリミアは、ロシアのクリミア連邦区となり、首都はシンフェロポリとなった。同時にウクライナ海軍の資産もロシア連邦資産とされた。これを、象徴する出来事があった。それはウクライナ海軍唯一の潜水艦だったB-435「ザポリージャ」が、ロシア黒海艦隊に編入されたこと。ザポリージャの艦長は、ロシアへの帰順については個人判断に任せたようだ。殆どの艦員はの残り、艦長は艦を去った。
ザポリージャは、ロシア黒海艦隊の第247独立潜水艦大隊に所属することとなる。しかし元々ソビエト海軍のフォックストロット級潜水艦U-01だったのだから、元の鞘に納まっただけの話。因みに黒海艦隊の潜水艦は、キロ級潜水艦B-871「アルローサ」とタンゴ級潜水艦B-380、それと充電ステーションPZS-50で、オンボロ艦隊だ。フォックストロット級U-01なんて1970年就航じゃなかったか?

歳のせいか余談が長い。
クリミア情勢に鑑みて、EUがロシアとウクライナ21名に対して渡航禁止にした。米国も3月17日、ロシアとウクライナの政界関係者11名の資産凍結と渡航禁止を発表した。軍事関係では、フランスがロシア海軍軍向けMistral級揚陸艦×2隻のキャンセルを検討中している。まあ、何れも制裁の意味が無い制裁で形式的な対応。ロシアがうまく対処するのを見ているだけ。
日本としては、粛々とロシアと北朝鮮との平和条約締結と経済協定締結に向け諸般手抜かり無く準備対処することが大切。それと台湾との国交を再度正常化する戦略的布石が欠かせない。台湾の先にはフィリピンとベトナムが控えている。しかしながら、ロシアとの経済交流を厚く太くする事が重要で、今こそ経済北進論と唱えたい。軍事的には北進するべきだった。南進した事で、アホで間抜けな日本海軍が戦争を主導する事になってしまった。

現在の中東からのシーレーンは長期的に見て維持不可能だ。米海軍は大戦前のフィリピン=ハワイの線に早晩下がるだろう。米国のオフショア戦略は正しい。さて日本はどうするのか? やはりユーラシア大陸の勢力が太平洋進出を阻止する為に、大陸国家と同盟する戦略だろう。シベリアは第二の満州だ。人口減少が止まらないシベリア。しかしフロンティアの地。そのシベリアを基盤としてエネルギー安全保障を確実ならしめること。21世紀ならでは。日露同盟と日英同盟で中国の北進を阻止しよう。中国の西太平洋進出は中米同盟でどうなるか分からない~残念ながら。