阿部ブログ

日々思うこと

ベトナムと南シナ海に進出するインド、そしてロシア

2014年07月27日 | 雑感
中国がインド洋での覇権を目指して「真珠の首飾り」戦略を展開しているが、インドも着実に南シナ海での地歩を固めている。勿論、インドは南シナ海問題の当事国ではないが、インドの対米貿易の40%が南シナ海を経由して米西海岸に至る、所謂インドのシーレーンであるのが理由の一つである。またインド政府が進める「ルック・イースト」政策によりASEAN域内の全ての国と経済的な絆を深め、特にベトナムとは包括的関与政策を戦略的に進めている。

インドとベトナムの本格的な軍事連携は、2000年3月のインド国防相フェルナンデスがベトナムを訪問した際に締結された防衛協力に関する議定書が最初と考えている。この議定書に基づきインドは、ベトナム空軍のMiG-21へバージョンアップされたレーダーや電子システムを供給し、パイロットの訓練をインド国内で実施するなど協力の枠組みが拡大。21世紀に入るや中国の南シナ海でのパトロールが強化され、ベトナムの漁船が沈没させられるなど海事事件が発生するに至って、インド沿岸警備隊とベトナム海上警察は、共同パトロールについて両国は合意。2003年5月には、両国は 包括的な協力枠組みに関する共同宣言を出している。その後、インドとベトナムは、2007年11月戦略的パートナーシップに関する共同宣言を再度出し、同年12月には、早くもインドのAnthony国防大臣とベトナム国防大臣が軍事分野での覚書に調印。この共同宣言後、インドは、ベトナム海軍艦船に対するスペアパーツ(約5000品目)が提供された。このスペアパーツは、退役するインド海軍のペチャ級フリゲートからの部品が転用、提供された。2009年には、ベトナムがロシアから Project63Z Varshavyanka級(Kilo改級)潜水艦を導入することが決まり、HQ 182 Hanoi と命名された最新のベトナム潜水艦の補修・管理についてインドとベトナムは何らかの合意に達していると思われる。

2010年、ハノイで開催された第17回ARF閣僚会合において、インドは南シナ海の諸問題は多国間で行うべきとの立場を示し、インドは、この後、ベトナム海軍の能力を向上に力を尽くす事となる。2011年、中国はインドのベトナムへの軍事支援、特にベトナム海軍への協力に対し、難色を示して見せた。2011年7月22日、ベトナムを親善訪問していたインド海軍の強襲揚陸艦エイラバットが、ニャチャン港からハイフォンに向かう途中、海洋無線で 中国領海に入っているとの警告を受けた。インド海軍は当然これを無視。次いでインド外務省は、南シナ海における海上航行の自由、及び国際法において認められた原則に従った海上通航権について声明を発表している。中国のこの嫌がらせは、多分にベトナム沖での石油・天然ガスのベトナム=インドによる共同資源開発が背景にある。
2011年9月、インドはベトナムと南シナ海での石油・天然ガス開発計画に合意。翌月10月には、インドの国営石油天然ガス会社「Oil and Natural Gas Commission Videsh Limited」(OVL)が、ベトナム国営石油会社「Petro Vietnam」との間で、 石油・天然ガス開発に関する3年間の長期契約に調印。この契約は、ベトナム沖ブロック127、及び128における開発投資を含むもの。2013年11月20日、インドとベトナムは南シナ海での石油・天然ガス開発プロジェクトを拡大することに合意。ベトナムは、インドOVLに対し、南シナ海で新たな開発鉱区を提供。これは中国共産党の感情を逆撫でした。

さて、ロシアの存在もベトナムにとっては大きい。陸海空の装備はロシア製だ。インドも大体にて然り。インドと同様、ロシアも戦略的にベトナムと緊密な関係を構築・維持してきた。ベトナムは中国の隣国だからだ。その中国は1979年にベトナム侵攻。しかし中国共産党軍は負けた。戦績はは散々。そりゃそうだ、米軍との戦闘に従軍して来た古参兵が参戦している。中国共産党軍がベトナム軍に勝てる訳がない。当時のソビエト、今のロシアは、中国の影響力拡大に対し当時から目に見える形で対抗しているのは明らか。ロシアは、対中国包囲網という戦略目標追求のため、ベトナムとの軍事的&政経強化を加速させている。
ベトナムは、前述の通りProject636 Varshavyanka級(Kilo改級)潜水艦の導入している。これは潜水艦6隻で20億ドル取引だ。2013年、HQ 182 Hanoi はカムラン湾に配備された。公試は、2013年1月8日。HQ 182 Hanoi は、オランダの重量物運搬船、MVRolldock Seaによってロシアのサンクトペテルブルグから移送されている。HQ 182の同型艦5隻は、2016年までにベトナム海軍に配備される予定。現在2番艦 HQ-183Ho Chi Minh Cityは,2013年1月17日にロシアでの海上公試を終了。ベトナムに回航され3番艦HQ-184Hai Phongは、2014年末までに回航される。ベトナムが導入するロシアの Project 636 MVarshavyanka級(Kilo改級)潜水艦は、排水量3,100トン、潜航速度20ノット、潜航深度300メートルで、乗員は52人。兵装は、533ミリ魚雷発射管6本、Kalibr 3M54、若しくは3M-54 Klub。キロ級潜水艦は、ベトナム海軍の資産として対潜水艦作戦及び対水上艦攻撃任務を遂行する。平時は、南シナ海を中心とする偵察、哨戒任務に従事する。

南シナ海におけるインド、ロシア両国の戦略的動向を観るにつけ、東シナ海同様、南シナ海が軍事的抗争の場となる事は避けられないだろう。アジアでの戦争の次は、アフリカだ。これまた悩ましい~