阿部ブログ

日々思うこと

米海軍大学のトシ・ヨシハラ教授&ホームズ教授の 『太平洋の赤い星』 が出版された

2014年02月12日 | 雑感
中国共産党軍の海洋戦略が米国防戦略に与える影響について分析した『Red Star over the Pacific: China's Rise and the Challenge to U.S. Maritime Strategy』の翻訳本が、やっと出版された。2010年に米国で出版され評判になった本だが『太平洋の赤い星~中国の台頭と海洋覇権への野望~』と言う書名で、税込み2520円。しかし、なんでこんなに翻訳が遅れるのだろうか? 中国脅威論を煽る向きが多い中、冷静に分析されたこの本なんかは、いち早く防衛研究所あたりで翻訳されてしかるべき。何やってるのでしょうか? 仮訳でいいから、さっとHP上に掲載するのですよ。

しかし、マハンに学びアウフヘーベンする中国共産軍の海軍戦略は、どこかゴルシコフの臭いがする。ゴルシコフの『ソ連海軍戦略』(原書房、1978年)の228ページには「ソビエトの軍事力は海軍も含めて、ソ連邦の政治の道具の一つである」と。中国共産党の海軍も同じ共産党の道具の一つに過ぎない。ソビエトは、外洋を求めて大西洋と太平洋、それに地中海やらに出て戦力が二分、三分されたが、中国の場合は、太平洋だけでOK。それにA2/AD戦略は、現状では素晴らしい戦略だと思う。自衛隊も見習うべきことは正直あると思う。だが、多分に海上自衛隊は、現代版・尖閣沖艦隊決戦を夢見ているのだろう。艦隊決戦も結構だが、くれぐれも間抜けな日本海軍の敵前反転の真似だけは止めてくれ。それと法律はどうでもいいから、相手より早く引き金を引け。船と部下の命を失ってみろ容赦しないぞ。
まあ、冗談はさておきヨシハラ教授の本は、1980年代に読んだノーマン・ポルマーのソ連海軍もの、『ソ連海軍事典』(1988年)を思い出させる。陸軍国が海洋進出すると、このような分析本が出るのは、昔もそうだった~と思うのは、自分だけじゃないだろう。中国も北朝鮮と同じ先軍政治化しているので早晩『中国共産党海軍事典』が出版されるだろう(笑)

さて、ヨシハラ教授の「Resident Power: The Case for An Enhanced US Military Presence in Australia」は優れた論文だ。確かに日本に駐留する海軍と空軍部隊は、中国の第一撃に晒される事とになる可能性大だから、オーストラリアを基盤とするべきとの指摘は、その通りだと思う。対日戦の反攻もオーストラリア起点だった。このヨシハラ教授の論文を見ると、冷戦時代とは違い、沖縄はかなり軍事的には不利だ。空軍戦力は第一列島線から遠ざけるのが良策。嘉手納基地はいの一番にやられる。この点、海兵隊は半端だ。フィリピンあたりに居るのが良いかもしれないが・・・米本土には第三海兵のいる場所はないし。んー、財政危機で解隊か? 海兵隊は、ペリリューで日本陸軍に潰された第一海兵と第二海兵で十分と言う議論も十分に成立可能だろう。でも沖縄から米軍がいなくなったら、どうやって食っていくのだろう~中国が沖縄を独立に導くか。

何れにせよ、国土強靱化ならぬ中国のミサイル先制一撃に耐えうる国土防衛インフラの強靱化が必要だと改めて認識することができた良書だ。一読をお奨めする。
最後に『太平洋の赤い星』にあるヨシハラ教授ホームズ教授が両名とも准教授と紹介されているが、これは2010年当時の肩書きで、現在は二人とも教授だ。

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