阿部ブログ

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清水建設本社ビルが凄い ~ CASBEE Sランク、LEEDゴールド認証~

2014年03月02日 | 雑感
清水建設本社ビルは都市再生特別地区制度を適用し、創業の地 である京橋(京橋二丁目 16地区計画)に建設した最新鋭のオフィスビル。都市再生特別地区のテーマは「地球環境・地域環境への貢献」で、環境型オフィスの創造を目指し、空調や照明などの様々な分野で、時代の先端を行く特徴ある技術を新たに開発し建設された。清水建設の持てる技術を結集して「カーボンハーフ」、即ち建設後の運用時におけるCO2 排出量を50%以下に削減し、国内最高クラスのビジネスビルを実現することを目指した。その結果、清水建設新本社ビルは、地球環境とBCPの両面を包含した「ecoBCP」ビルを実現した新機能のオフィスビルとして2012年に完成した。

清水建設株式会社本社ビルの仕様は以下の通り。
■建物概要:
 所 在 地 東京都中央区京橋2丁目
 建 築 主 清水建設㈱
 設計監理 清水建設㈱一級建築士事務所
 施  工 清水建設㈱
 主要構造 鉄筋コンクリート(免震構造)
 階  数 地下3階,地上22階,塔屋1階
 敷地面積 約3,000㎡
 建築面積 約2,200㎡
 延床面積 約51,800㎡
 工  期 2009年4月~2012年5月
 CASBEE Sランク(BEE 値 9.7 点)
 LEED  Gold認証(44点/69点)

1.概要
地球温暖化防止としてCO2排出量削減が求められている昨今、ZEB(ゼロ・カーボンビル)化をめざした環境配慮型の建築への取り組みが普及してきている。清水建設では、新本社ビル建設にあたり「未来志向の超環境型オフィス」の創造をめざし,建築,空調,照明などの様々な技術の分野で,時代の先端を行く特徴ある技術を新たにし実用化しています。これらの環境技術を駆使し、運用用の工夫による改善をはかることにより,建物の運用フェーズにおけるCO2排出量を大幅に削減し,首都圏の超高層建物としては国内最高クラスの環境対応オフィスビルとして高い完成度を有するに至っている。

2.CO2排出量削減への取り組み
新本社ビルの設計段階においてCO2排出量を50%削減,所謂「カーボンハーフ」を実現する建築・設備計画の作り込みを実施。清水建設技術研究所で開発された先進的開発技術と省エネ技術を組み合わせることにより,東京に所在するビル平均値に対し約50%の削減が可能なように計画されている。
このCO2排出量50%削減を確実なものとするため、ビル運用の改善と自然エネルギー利用の拡大を進め、建物使用開始初年度(2012年)には約62%削減を行う。実績ベースで62.6%を達成済み。また、継続的にファインチューニングを励行・継続する事で、2015年には約70%削減を目標としている。残る30%については自社内で導出したCO2排出権を割り当てることでZEBを実現する。

3.ハイブリット外装システム
高層オフィスビルにおいては、外乱を少なくし,内部熱負荷を小さくする放射空調システムが重要。新本社ビルで採用された清水建設開発のハイブリット外装システムは,ペリメータ負荷を約50%削減が可能な優れものである。特に清水建設新本社ビルをユニークな存在にしている大きな特徴の一つが、ガラス窓(約2,000㎡)に薄膜と多結晶の2タイプの太陽光パネル962枚を埋め込んで自家発電を行っている点。この発電でビル内の昼間のLED照明を賄えるという。外部から電力供給が途絶えても、太陽光で蓄電された内部電力を消費する非常事態対応機能が備わる事となった。ビル壁面に太陽光パネルが施工 された高層ビルとしては、横浜ダイヤビルに続いて国内2番目。

太陽光パネルの薄膜型は、シースルーであることから事務室の窓に設置した。もう1つの多結晶型は、発電効率は高いが外部は見えなく事から共用部の窓に設置し使い分けでいる。それと、あくまで参考情報ながら、ビル壁面を活用した太陽光発電については、投資回収には正直ベースで10年以上掛かるようだ。太陽光パネルの単価が下がらないと普及は難しいと言うが、電力供給が停止するなどBCPを考えた効果を勘案すると、ある種の保険的機能も有すると事から、単純なコスト計算以外の効用がある事は歴然としている。

さて本題の「ハイブリッド外装システム」は、太陽光発電パネルや耐震パネル、ガラスを組み込んだ「プレキャスト鉄筋コンクリート」の外装パネル。形状が異なる36種類の外装パネルを組み合わせている。外装パネルの数量は基準階1フロアあたり58体、ビル全体では1,426体で、標準的な外装パネル1体あたりの大きさは幅3.2m、高さ4.2m、厚さ0.9m、重量14t。フレーム部分は、建物外周部に位置する柱・梁を細分化し、それ自体が構造体として機能するよう工夫されている。

今回の自社ビル建設に当たって初めて採用された技術もある。それが高耐火・高強度のAFR(Advanced Fire Resistant)コンクリートにひび割れ抑制性能を付加した「低収縮・高耐火・高強度コンクリート」。このコンクリートは、2階~17階までのPCフレームに使用され4,300㎥使用された。コンクリートは打設後収縮する性質があり、何らかの原因で均一に収縮しない場合、ひび割れが発生し美観や漏水抵抗性を損なうおそれがある。コンクリートの自己収縮や乾燥収縮の要因の一つは、骨材自体の収縮だが、この収縮防止には、殆ど収縮しない石灰石の使用が最も効果的であることが知られている。しかし、石灰石は一般に耐火性が低く、火災時、石灰石自体の強度が低下し、コンクリー トの爆裂(表層の剥離・飛散)を誘発する怖れがある。特にコンクリートの強度が高くなるほど、石灰石の有無にかかわらず、爆裂現象が顕著になることから、設計基準強度で60N/mm2を超える高強度コンクリートの骨材には、砂岩や安山岩が採用されてきた経緯がある。

清水建設の新本社ビル建設において採用するPCフレームについて、高強度コンクリートを用いる低中層階用のフレームのコーナー部に、予めひび割れの発生が予想されていた。このひび割れ防止には石灰石の採用が望ましかったことから、高耐火・高強度コンクリートとして技術研究所で開発したAFRコンクリートの製造技術を適用し、「低収縮・高耐火・高強度コンクリート」の開発に取り組む事とした。
AFRコンクリートは、合成繊維を混入した高強度コンクリート。合成繊維は火災時の熱で溶融・消失してコンクリートに微細な空洞をつくり、この空洞が表層の熱膨張力や内部で膨張した気体の圧力を 緩和する役割を果たし、表層の剥離・飛散を防止する。越中島にある技術研究所では、在来とAFRの製造方法(合成繊維を0.11%混入)で1体ずつ、新本社の低層階用フレームと同じ設計基準強度80N/mm2の柱の試験体を製造し、載荷加熱する実験を実施。在来の試験体は125分で破壊が確認されたが、AFRは所定の耐火性能を1時間上回る4時間耐火試験をクリア。
新規に開発され自社ビルに採用されたハイブリッド外装システムは、今後様々なオフィスビルに採用され、清水建設の収益向上に貢献するだろう。

4.空調システム
空調方式は,放射空調によるタスク&アンビエント方式を採用。タスク&アンビエントとは、空調システムと照明システムを一体として考える設計思想で、アンビエントは室内全体、タスクは個別の空調・照明という位置づけである。 オフィス環境の重要な要素である、温度、湿度、気流を個別選択的に制御し、快適性と省エネルギーを両立させる事を目的としている。この空調システムにより快適なオフィス環境を創り出し知的生産性の向上を目指すもの。
アンビエント役の空調システムは、天井パネル内部に設置したパイプの中に冷温水を流すことにより室温を調整する方式を採用。不快な気流がなく、室内の温度差も殆ど生じない。湿度については空調機により除湿・加湿を行い室内潜熱の処理を行う。空調機からの空気は床下に供給され、パーソナル吹出口から供給される。パーソナル床吹出口からの空気は在席者の好みに合わせて気流の調整が可能。省エネの為、地域冷暖房から発生する廃熱を利用することで、従来の空調システムに比べて30%のエネルギー削減に貢献している。

4-1空調システムの特徴
放射空調システムは,天井パネル内部に設置したパイプの中に冷温水を流し,天井パネルの表面を冷やしたり温めたりすることで,室温を調整する仕組み。省エネルギー性や快適性(室内上下温度差が少ない。不快な気流を感じさせない。静かである。)という点から最近注目を集めている空調技術。放射空調システムは、一般的な空調システムと違い,冷房時に室内温度より冷たい天井面が露出しているため,天井面の結露を防止する湿度の調整が別途必要となる。その湿度調整と省エネルギー化を実現したのが、バイブリッド型放射パネルである。

4-2ハイブリット型放射パネル
夏の日射による熱負荷の影響が大きいペリメータ用に,独自形状のアルミフィンを使用した天井パネルを開発し採用。このパネルは冷房時に自然対流を促進させ,放射と対流を組み合わせたハイブリット型空調システムを実現し,夏期の窓際の熱負荷にも対応した効率の良いペリメータ天井放射パネルとなっている。

4-3デシカント空調機
冷房時の快適性向上と結露防止をはかるための湿度コントロール用に採用した空調システムが「デシカント空調システム」で、少ないエネルギーで除湿が可能な空調の方式で、後から出てくるデシカントロータと言う高分子物質を使う事からデシカントの名前が冠されている。一般的な空調システムの除湿の方法は,冷たい水を供給して空気を露点温度以下まで下げて除湿し,その空気を(エネルギーをかけて)再加熱し適温となった空気を室内に供給するが、デシカント空調は,高分子吸着剤(デシカントロータ)を用いて外気を室内に取り入れる際に除湿をやってしまう。デシカントロータに溜まった水分は、加熱することで,水分を蒸発させ放出する。この加熱の際には、省エネを徹底する為、排熱温水を利用する。前述の通り30%のエネルギー削減を実現している。

4-4都市排熱利用
清水建設は、本社ビル建設地域冷暖施設の排熱を有効利用したシステムを採用。新本社ビルの運用設計では、天井放射パネルに供給する冷水が20℃前後であることから、京橋1・2丁目地区の地域冷暖房プラントより熱供給を受けている他の需要家で利用された戻り水を自社の放射パネルに供給し,温度差をさらに大きく吸収させた後、再度地域冷暖房施設に戻す工夫をしている。
前述の通りデシカント空調の再生用温水も,地域冷暖房の冷凍機排熱を利用しているが、地域冷暖房施設を組み合わせた都市排熱の利用を拡大する事で,地域冷暖房施設の稼働率向上により京橋地域全体のCO2排出量削減とヒートアイランドの防止の両方を可能とする事が出来る。因みに通常運転では、地域冷暖房施設の冷水温度差は8℃差で循環させ、前ページにある通り冷凍機からの排熱は冷却塔から大気に放出する。

5.タスクア&アンビエント照明システム
照明システムもタスク&アビエント方式(Task Specific and Ambient Radiative System)を採用している。この照明システムの特徴は、昼光利用を組み合わせた点にある。照度センサによりアンビエント照明は設定照度(300lx)になるよう調光制御され、昼間においては太陽の光量効果により,窓側はアンビエント照明とタスク照明を消灯しても作業負担とならない必要照度を確保可能。オフィス中心部に位置するコア部分においては、太陽光の光量が少ないため、アンビエント照明とタスク照明の両方の点灯が必要。コアと窓側の中間部分においては、太陽光利用とアンビエント照明の調光制御&とタスク照明の併用となる。また,人感センサにより不在時には自動消灯する制御をおこなって万全を期している。照明器具についてはアンビエント,タスクともに高価であるが省エネ効果も大きいLED照明を採用し、省エネルギーと長寿命化の両立を図っている。

更に太陽光の利用効率を上げる為,ブラインドには「グラデーションブラインド」を採用。このブラインドはスラットの角度を少しずつ変化させて,太陽光を天井面に反射させ,間接光として取り込むことができる優れもの。LEDと同様に少々値が張るが省エネには変えられない。しかも太陽の位置に合せてスラットは時間ごとに自動的に最適な角度に制御される為、人間が介する事無く自然光を効率良く室内に取り込む事が出来る。ただ、夏場など日射量が強烈な場合には、ビル全体のエネルギーを勘案してブラインドを自動でクローズし、空調負荷の低減をはかる。反対に曇りの場合はブラインドが自動でオープンし,太陽光を全面的に取り入れ、かつ眺望を良くする心理的効果も考慮して最適制御される。

6.マイクログリッド
新本社ビル建設に際し、清水建設では前述の通り再生可能エネルギーである太陽光発電の採用に踏み切っているが、この不安定電源を有効に活用する技術としてマイクログリッドシステムを併せて導入している。つまりビル壁面における太陽光発電と蓄電池を組み合わせて、商用電力との併用を行う電力システムである。
既に様々語られている天候に左右される太陽光発電の出力変動については、この変動を常時監視し,蓄電池の放電と充電を秒単位で制御することで常に安定した電力を供給し確保し、かつ夏場や冬場における商用電力のピークカットを行う事が最近のトレンド。大規模災害発生時や通常の停電時には電力変換装置にて蓄電池と太陽光発電の自立運転に切り替えることにより,非常用発電機が稼働するまでの時間を無瞬断で電力を継続供給できる機能を備え,企業活動の基幹である情報システムなどの安全性を確保する事が出来る。

以上、総合的な取り組みを行った結果、新本社ビルの総合エネルギー効率1.39で日本最高達成。全国平均は0.823である。

7.ZEBを極める
清水建設が目指すZEBを実現し、かつパーフェクトを目指す為に重要な4つの領域があると言う。
 ①デザイン・エンジニアリング・マネジメント(設計時の工夫)
 ②ファシリティ・マネジメント(使い方の工夫)
 ③プロパティ・マネジメント(運用の工夫)
 ④ エネルギーサービス・マネジメント(新エネルギー利用と全体最適化)の4領域。
特により完璧なZEBを追及する対象領域は、ファシリティ・マネジメントとプロパティ・マネジメントである。ファシリティ・マネジメントの努力ポイントは、グリーンIT技術としてPC節電制御とエコプリントの導入。PC節電制御はビル管理系ネットワークとオフィス・コンピュータ・ネットワークを統合するシステム統合技術を全面的に採用し使い倒す事で、個々のPCの電源のON/OFFや操作/無操作時間、CPU稼働率、ビル全体のエネルギーのデマンド量に応じてモニタ電源のOFFやPC待機状態への移行を制御し,無駄なPC消費電力を大幅に削減する必要がある。
またプロパティ・マネジメントの領域では、様々なデバイス/機器の運転時間や設定を最適化することにより削減を図る努力と仕組みが欠かせない。所謂BEMS。現在のBEMSを更にインテイリジェント化したBEMSは、マイクログリッドやデマンド制御に負荷予測制御を組み合わて,エネルギー・サプライサイドと設備機器類のデマンドサイドを,ビル内部、特に室内環境を維持しながらバランス良く制御するシステムであるが、社会的にも早期の実現と実装が期待される所。

清水建設は、進化したBEMSの技術を追加実装することで,CO2排出量の更なる削減を実現する事が目標で、最終的には2015年までにZEBを実現する事。ZEBの実現を目指して、2015年までに設備機器のファインチューニングを実施し、省電力型のPCに全面的に更新する計画だ。これを実行すると2015年時点では70%の削減を実現するが、残りの30%については、前ページにあるCDMを活用してCO2排出権を割り当てることでオフセットする。これらの施策と改善により清水建設本社ビルはZEB化を実現する!

8.eco BCP
東日本大震災以降のオフィスビル建設の最大眼目は、「確実な節電」と「快適な省エネ」の2つに加えて、清水建設の様な大規模のオフィスビルは「防災拠点」として機能する事が社会的な要請となっている。
既に述べたように清水建設では、単に電力ピークである夏や冬に対応した確実な節電、だけでなく、震災直後に発生した電力供給逼迫状況にも対応するための「エネルギー自立性確保」を当初から目標として掲げており、本社ビルの設計にあたっては、自社ビルだけではなく、京橋地区のBCP対策も十分に考慮して行って自立型超環境・防災オフィスを実現している。

9.更なる革新を目指して
清水建設のZEB実現を目指した取り組みは、単なるCSRや社会貢献活動を超えて,地球規模の気候変動に対応する貴重な取り組みであり、世界に波及する貢献である。この世界に波及する大いなる貢献と新本社ビルで働く人達への配慮は忘れていない。むしろ人間中心である。オフィスビルが本質的に具備すべき機能は,そこで働く人間の知的生産活動における快適性や機能性を提供する事であり、可能であれば新しいワークプレイスを提供する事である。既に多言の通り、清水建設の新本社ビルは、働く人の視点に立ったワークプレイスを、最先端の環境技術により,快適性と省エネの両立を実現している。その結果として環境性能評価であるCASBEEにおいては,Sランク,BEE値=9.7という最高の評価を受けている事からも明らかである。
また清水建設は、世界的な建物環境性能評価指標であるLEED新築版 (LEED New Construction)の「ゴールド認証」も取得している。日本国内のオフィスビルとしては、初めてのLEED認証であり、しかもゴールドの取得である。
このような鋭く環境を意識したオフィスビルは当然の事ながらコストは掛かるものの、快適オフィス環境とBCP対策を兼ね備えたオフィスビルは、今後着実に普及していくだろう。そのトップランナーが清水建設の新本社ビルである。

10.最後に
清水建設本社ビルのような究極の省エネビルを実現するには、コストの制約もさることながら、新本社ビル建設に際しては、国や東京都に対して数々の特例措置を申請し、それが承認されて初めて実現にこぎ着けた設備・機能が多い。例えば、環境性能に配慮したものや公共貢献が認められる場合には、容積率の割り増しを認める「総合設計制度」などだが、今後同様のオフィスビル建設に当たっては、以下のような規制緩和や優遇措置が必要であるとの指摘がなされている。

 ・法的制約による融通配管・配線の埋設設置基準の緩和(現行:道路法32条,36条)
 ・供給エネルギーの多様化・供給条件の緩和(熱供給事業法17条)
 ・熱電一体供給の許可
 ・未利用エネルギー活用時に複数の諸官庁・関連機関を横ざしするしくみが必要(河川法24条他、海岸法7条他、港湾法37条)
 ・優遇措置の新設

また追加的な規制緩和と優遇措置については以下の通り。
・熱・電力の融通 自家用コジェネの敷地間熱融通
 ・個別受電建物間電力融通(系統、自営線)
 ・エリア内の融通建物群の電力共同契約
 ・ピークカットへのインセンティブ付与 
 ・BCP機能へのインセンティブ付与
 ・「分散型エネルギー、エリア的BEMS新設への優遇措置
 ・地役負担へのインセンティブ

今回の新本社ビルと京橋二丁目16地区の開発に伴い、企画・構想段階での課題、またそれ以降の事業化に際しての課題について、以下の項目が示されている。

(1)企画・構想段階での課題
・施設単体を設計する段階で、面的エネルギー利用に向けた合意形成を図ることが難しい。
(ある範囲での合意形成が無いと面的エネルギー事業の事業判断ができない) 
・面的利用によるエネルギーの高効率化を進めるためにも、病院、ホテル等熱需要が大きい施設の構想段階から、地区全体の熱エネルギー需給の方針を検討し、合意形成を進めることが必要。
・市街地整備と一体となったシステムの検討・導入が有効
(2)事業化促進に向けた課題
・熱源設備、熱導管等の大規模な初期投資コスト
・コージェネレーションシステム等の導入によるコストアップ
・都市・まちづくりにおけるエネルギー面的利用(融通)の検討/接続の義務化
・需要家の脱落リスクが小さいことが安定的資金調達のカギ
・低炭素化やBCPを向上による地域の取組みがもたらすNEBが、当該地域で還元、再配分される仕組み・税制度が必要
・海外では公設民営の形態が存在(パリ市、コペンハーゲン市等)

以上、列挙された項目を見るにつけ、建設業界も大変な所だな~と言う事を誰しも感ずるだろう。防災都市や環境都市などと冠しても、社会の理想を現実の都市として開発を進める事には大きな落差がある。特に、日本の土地制度においては、私的所有権が極めて強く、この所有権が都市開発を阻害する一つの要因であり、土地制度の抜本的見直しが必要である事を明記して最後としたい。

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