コラム(399):ロシアの未来
情報戦に敗北したロシア
圧倒的に優位な軍事力でウクライナに攻め込んだロシアが、祖国防衛に燃えたぎるウクライナの人びとによって進撃を阻まれています。
一方、ロシア国内では西側諸国の経済制裁でプーチン政権に対する不満がくすぶり始めているようです。しかも、情報戦においてもロシアは後れを取っています。
事実、リアルタイムで映像が確認でき、SNSの発達で瞬時に情報が発せられるようになった現代において、ロシアのプロパガンダはその醜悪さを世界に知らしめる結果となっています。例えば、ラブロフ外相の「軍事作戦は非常に正確であり、軍事インフラをピンポイントで攻撃している」との発表は、逆効果でしかありません。
その上、ロシア国内では恐怖の情報統制を行っているのですが、真実を隠そうとすればするほどそのほころびが目立ち始めています。頭の固くなった高齢者は別として若い世代にはロシアの蛮行を批判する動きが見えてきました。
先日、私の大学時代の友人から「ロシア人にウクライナに関する西側情報を送るSquad303の人海プロジェクトから3月11日の段階で700万件にわたる情報がロシアに発信された」との情報が寄せられましたが、ロシアは情報戦でも敗北しつつあるようです。16日、プーチン氏が「くずどもと裏切り者をロシアから一掃する」と警告した発言の裏側に尋常ならざる焦りがあると感じられます。
それでも侵略をやめないプーチン氏の執念
メディア報道では、ロシアとウクライナの停戦交渉が今にもまとまるかのように伝えています。仮に停戦は実現しても、ロシアは伝統的に約束を守らない国ですから実効性は薄いと思った方がいいと思います。
また、実のところプーチン氏は、NATOを旧ソ連時代の「ワルシャワ条約機構の時代にまで戻せ」とまで言い続けて、ライナに攻め込んでいったわけで本音は一歩も引く気がありません。
その恐怖を感じているからこそ、15日には旧ワルシャワ条約機構からNATOに移行したチェコ、ポーランド、スロベニアの各首相がウクライナを訪問しゼレンスキー大統領と会談したのですから、プーチン氏の本気度がいかに凄まじいものであるかわかると思います。
したがって、ロシアがウクライナから撤退するときは、ウクライナの全面敗北か、ウクライナが西側諸国の応援を得てロシア軍を追い戻すか、それともロシア国内の事情、例えば、経済制裁もしくは新型コロナウイルスの感染爆発で戦争継続が困難に陥る場合の三通りしかありません。
しかし、プーチン氏はどのような局面であっても、蠍座特有の執念深さで、旧ソ連の版図を回復するとの思いが強く、今後、中欧はウクライナのような火薬庫になる可能性も考慮に入れておく必要がありそうです。
ロシアの未来
プーチン氏は失脚しそうにないほどの強い運気の持主だそうです。しかも、政敵はことごとく抹殺していますので恐怖の独裁体制が完成しています。したがって、プーチン氏の首に鈴をつける人は誰もいないようです。
ただし、ウクライナへの侵略戦争の行方次第ではプーチン氏の命運は変わると思います。とくに、この戦争が6か月以上の長期に及んだ場合、これはロシアへの中国などの支援があったからこそ可能となるものですが、これがかえって国際社会を二分する戦い(西欧的価値観と非西欧的価値観の衝突)を引き起こしそうです。「文明の衝突」事態です。(当ブログ『避けられない文明の衝突』ご参照)
その中でロシアはどうなるのか。私は、西側諸国の一層厳しい経済制裁でロシア財政は破綻し、国内における新型コロナウイルスの蔓延がプーチン氏の思惑を上回り、戦争の継続は困難になると見ています。場合によってはロシア国内の怨嗟の声によってプーチン政権の存続さえ危ぶまれるのではないか、それでも、プーチン氏が政権の座にしがみつけば、ロシアはシリアのような入り乱れた内戦に移行するのではないか、と推測します。
その結果、ロシアは無秩序になり、ロシアおよび22の共和国からなるロシア連邦は解体する運命になると考えられます。これにより、ユーラシア大陸の広大なる土地をめざして、諸民族、諸国が入り乱れ混沌とした状況が繰り広げられると考えます。そこにはレアメタルとエネルギー資源が多量に埋蔵されているからです。
実際、政治的あるいは軍事的な空白地帯ができれば周辺から他民族が流れ込んでくるのは歴史が物語っています。現在のプーチン政権にあっても、5000km以上にも及ぶ中露国境をまたいで中国人が数多く侵入している事実をみても、ロシアという国家の機能が破綻すれば周辺の国々から大量の越境侵入者がでてくるのは明らかです。そのとき、中国という国が存続しているなら、国策としてエネルギー資源を奪いに大量の中国人を投入することは目に見えています。
そのとき、日本はどうするか。なにより敗戦後に旧ソ連に簒奪され、ロシアが当然の権利として居座っている北方領土に対し、奪還の動きに入るのか、それとも、北方領土に食指を伸ばす中国、韓国、北朝鮮の動きを黙ってみるのか、日本政府はどう判断するのでしょうか。
ただし、この考え方は、今日までの価値観の延長線上でのものです。ロシアの蛮行によって文明の衝突を引き起こし、それが新しい価値観を生み出す力となって、人類の意識を大きく変えるきっかけとなった可能性があります。国家、国土、国民といった国民国家という概念が大きく変わる可能性も感じます。
本ブログのテーマは「すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析すること」にあります。近い将来、価値観が激的に変わることは確実なのですが、その兆候はすでに表れているようです。その事実を今後とも注意深く観察していきたいと思います。
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