コラム(370): 第49回衆議院議員総選挙
東京都北区の選挙事情
衆議院議員選挙が公示され、465の議席(小選挙区289,比例代表176)をめぐって1051人が立候補しました。単純計算で一つの選挙区に3~4名の立候補者数となりますが、有権者にとっては小選挙区特有の選択肢が少なすぎて、いくら支持する政党といえどもこの候補者には入れたくないという人も出てくると思います。
しかし、それはまだましな方で、私の住む東京都北区(東京第12区)では、前回、政党の候補者は公明党と共産党しかいないという頭を抱える選挙区でした。自民党が公明党に小選挙区当選者を割り振るため自民候補は出さないという取引があったためです。
公明党は、共産党と同じで、人びとを収奪することで成り立っている政党ですから、一般有権者の側からすればこれほど投票の自由を奪った悪質な談合はないと言えます。
今回は、維新から候補者が出ましたので選択肢が一つ増えました。これにより、政党に属さない無党派層がどういう選択をするのか、そして、自民党支持者が取引通り公明党にいれるのか、それとも、維新に投票するのか、その投票行動に興味はつきません。
政党支持者と一般有権者の温度差
さて、今回の衆議院選挙は投票率が前回を下回るのではないかと思います。その理由は安倍元総理の存在が見えないからです。
自民党が政権を奪還した2012年の第46回の総選挙以降、選挙の構造は親安倍か反安倍の激突でした。国際関係の視点でいえば、日本を守っていきたい人たちと中国にシンパシーを感ずる人たちとの思想対決の場が総選挙であったと見ると一番わかりやすいと思います。
野党は安倍元総理を激しく叩くことで反安倍勢力を結集させ反米、反基地、反安保の流れを作ろうとし、自民党は安倍攻撃を結束の力にして反転攻勢をかけました。
事実、国政選挙のたびに、選挙最終日の自民党秋葉原集会では自民党支持者が多数結集し、反安倍陣営の声をかき消していました。野党の激しい安倍攻撃が、「自分」党の寄せ集めである自民党をかくも一致団結するきっかけを与えたと言えますし、両者とも攻撃と反撃の憎しみの連鎖で戦意を高揚させていたわけです。
しかし、実際に、選挙で盛り上がっていたのは各政党支持者とそれを煽るメディアだけでした。選挙戦で激しく繰り広げられた親安倍vs反安倍の戦いに、一般の有権者はさほど深い関心を寄せてはいません。
これは、衆議院選挙の投票率の推移を見るとはっきりとわかります。2012年の第二次安倍政権成立以来、通常、59%以上あった投票率がそれ以降は52~53%で推移しているのです【注1】。要は、1億人余りの有権者の内、6~700万人が投票に行かなくなったことを意味し、政党支持者の内で盛り上がった総選挙も一般有権者の心をとらえることはできなかったことを意味します。
【注1】1996年59.65%、2000年62.49%、2003年59.86%、2005年67.51%、2009年(民主党政権誕生)69.28%、2012年(自民党政権奪還)59.32%、2014年52.66%、2017年53.68%。
明日の日本を見据えたうえで
したがって、今回の選挙では、親安倍vs反安倍の戦いの構図を再現することはできない上に、各党の政策が有権者へのご機嫌取りばかりで心に突き刺さるものが何もない、とくに変えなければならない政治の在り方や行財政の改革問題に何も触れようとしない現状に有権者は失望するのは必然だと思います。これで、何も変わらないなら投票に行く意味がないと思う有権者が増えることだけは推測できます。
仮に、投票率に大きな変動がなければ、通常は組織票のある公明党や共産党が有利にはなりますが、両党ともますます高齢化が進み足腰が弱っています。しかも、コロナ禍ということもあり得意の戸別訪問戦術が使いにくいのでこれがどうでるか。
また、立憲民主党は共産党との選挙協力で運動量が増えると推測されますが、そこで得たものと、共産党と手を組んだことで共産党嫌いの労組の離反による票の喪失、そのプラス・マイナスがどうでるのか。さらに自民党は、野党の激しい攻撃の減退による反撃能力の減退をどう補うのか。
このような状況を見ると、今回の選挙はどこも大きく勝たなければどこも大きく負けない、中途半端な結果になるのではないかと思います。強いて上げれば、96人の候補者を立てた日本維新の会が意外な善戦の可能性くらいしか考えられません。
いつものようにメディアや評論家は面白おかしく選挙予想をすると思いますが、予想をカタカナで書いて反対側から読めば「ウソヨ」になりますから、意図を持ったメディアの誘導にのることなく、誰が将来の日本のために役立つ人物になるのかという視点で選択するほかはないと思います。
各候補者や政党にとって、選挙は生き残りをかけた壮絶な戦いではあるのですが、同時に、有権者にとっても明日の日本をどう築いていくかの生き残りをかけた戦いであるということも考慮しなければならないと思います。
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