コラム(366):自民党を再生させた総裁選
今回の自民党総裁選ほど政治に無関心な人まで引き付けたものはありませんでした。勝者の行方がメディアも含めて誰にもわからなかったこともその要因の一つでしたが、各候補者が、国家の行く末、コロナ禍、中国の覇権主義、気候変動等の重要かつ喫緊の課題にどう対処していくのか、そこに国民が強い関心を寄せていたからだと思います。
自民党の多様性
今回の総裁選を特徴づけたのは、権力争奪戦である総裁選に加えて候補者間の政策提言が活発に行われたことです。日頃から候補者が考えている内容が明らかになるにつれ、国家と国民の命をこの人に託せるのか否か、党員にしか投票資格がないにも関わらず、総裁選を一層盛り上げることにつながりました。その裏返しとして、自民党以外の政党は世論の関心外に置かれてしまいました。
しかも、政策提言における候補者間の考え方の大きな違いは、自民党という政党が多様性のある政策のデパートであるということを国民に印象づけました。実際、右派の高市氏から左派の野田氏。既存の自民党路線の岸田氏から改革派の河野氏まで、候補者の考え方には差異が大きすぎました。
それにも関わらず自民党が一つの政党を構成する理由は、さまざまな考えをもつ人たちが緩やかに結びつくことの方がメリットは大きいと体験的にわかっているからです。
際立っていた高市氏
政策提言で最も際立っていたのが高市早苗氏でした。高市氏が日本の国家の未来展望を明らかにしたことで、他候補も付け焼刃であっても未来の方向性を示さざるを得なくなりました。これが結果的に、国民にも国家の行く末を考えさせるように導くことにつながりました。
さらに高市氏は、自らの支持者に「誹謗中傷や恫喝や脅迫によって確保される支持などいりません」と語りかけ、党内に亀裂を生むような感情のエスカレート化を防ぎました。アメリカの大統領予備選に見られる党内の誹謗中傷合戦が党内に癒しがたい分裂を生み出していますが、これを未然に回避させたことは大いに評価すべきです。圧倒的な善意が悪しき想念を破砕した好例です。
しかも、この高市発言、国内世論にも大きな影響を与えました。立憲民主党、共産党などが自民党の批判を繰り返しても世論は彼らに同調しませんでした。過去のことばかりこだわって非難や誹謗中傷を繰り返すメディアや立憲民主党などの野党と自民党の違いが明確にわかったからです。したがって、今回の総裁選の敗者は、メディアや立憲民主党・共産党ではないかと言えるように感じます。
現下の国際情勢を見据えるとベストの自民党総裁は高市氏だったのですが、自民党は岸田氏を選出しました。これは極めて自民党らしい選択だったとも言えます。なぜなら、多様性のある自民党においては、中国が脅威であると考える人もいれば、中国との関係で利益を上げている人もいて、極めて妥協的な選ばれ方になったからです。
しかし、高市氏の考え方が総裁選に大きく影響したように、また新たな政調会長としての高市氏のリードによって、自民党の中国政策は予想以上に厳しいものとなりそうです。事実、高市氏は第一回目の投票で、議員票は岸田氏の146票につぐ114票を獲得しており、これは議員の30%を占めています。その分、宏池会の流れをくむ岸田氏に親近感を抱いていた中国にとって残念な結果になりうる可能性があります。
菅総理は身を捨てて自民党を再生し、日本を救った
選挙結果を受けて、メディアの一部には、国会の総裁選の激戦模様から自民党が分裂するのではないかとの推測をするところがありますが、個人で離党するもの以外、自民党は一つのままです。なぜなら、自民党に在籍しないと国会議員としての仕事、すなわちそれが国事奔走であろうとも、あるいは私的に利権活動に励むもうとも、自民党の看板は必要だからです
しかも、現下の日本は安全保障政策や国防強化、様々な利害関係においても中国問題が介在し、その中心にはいつも自民党が存在します。したがって、仮に、中国という国家が存在しなくなれば、中国に激しく反発する自民党、中国との利権関係にある自民党の双方が存在価値を失いますが、それまでは自民党は自民党のままです。
今回の総裁選挙で自民党は再生に成功し、日本の未来に明るい展望をもたらしたと言えると思いますが、この流れをつくったのはひとえに菅総理に負うところが大きいと思います。菅総理の捨て身の生き方で自民党は救われたのです。
なぜなら、内閣支持率というメディアが操作した数字で貶められていた菅総理がフルスペックの総裁選を実現させたことで、自民党に新たな息吹を吹き込ませ党内を活性化させたからです。これにより候補者間の政策論争を巻き起こり、日本の望ましい将来展望までも可視化するところまで導きました。
その意味で、菅総理は、総裁選を実施することで自民党を再生させただけではなく、日本と国民のいのちを守り抜いた人物として高く評価すべきと考えます。
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